45.これって恋なのよね…?
「よっ、待った?」
瑛祐くんが、少し照れたような笑顔でやって来た。
「ううん、今来たところ。」
なんて、待ち合わせの定番のやり取り。それすら嬉しさ感じる。
遊園地へは、ここからバスに乗って向かう。
「これ、チケット。……電子チケットなんだよ。」
瑛祐くんがスマホの画面を見せてくれた。
「へぇ、今はスマホで完結しちゃうんだね。」
……今はってなんだよ。自分にツッコミを入れる。『前世の俺』今日はお休みしていようね。
「うん、11時に予約してある。ここからバスで十分くらいだから、ちょうどいいかな。」
やって来たバスに乗り込む。
家族連れやカップルに混じって、ガムダン目当てのお一人様の男性客もちらほら。
……かつての俺も、あんな感じだったのかな。
一人でも楽しそうではあるけれど、昔は「リア充爆発しろ!」なんて心の中で毒づいていたものだ。
今の客観的な状況を考えると、私たちこそが爆発すべき側なのかもしれない。なんてね。
運よく二人掛けの席に座れたけれど、車内は少し狭い。
どうしても瑛祐くんの体と接触してしまう。
当たっている場所が妙に熱く感じるのは、きっと気のせいなんかじゃない…。夏の装甲(薄着)は、防御力が低すぎて心許ないよ。
「暑いね。大丈夫?」
瑛祐くんが気遣って、ハンディファンをこちらに向けてくれる。
優しい。……す、き?なのか?
「あ、大丈夫。瑛祐くんこそ。」
お返しに、私も自分のファンを彼の方へ向けた。
ファンの風だけじゃ火照りは冷めないけれど、車内の冷房が効いていて助かった。
リア充爆発しろ、か。言われなくても、私の方が爆発してしまう。
目的地に到着すると、平日にしてはかなりの混雑。やはりガムダンの集客力は凄まじい。
園内マップを確認して、瑛祐くんが前を歩き出す。
「あっちだな。行こう!」
「うん…。」
返事はしたものの、地図が読めなくなっている私は、どっちへ行けばいいのか分からず立ち尽くしてしまった。
すると、瑛祐くんが振り返って私の手を取った。
「あっちだって。遅れるよ」
「あ、」
グイッと手を引かれる。温かい。
「あ、ごめん。急ごうと思って、つい……。」
ハッとした瑛祐くんがパッと手を離そうとする。けれど私は、少しだけ力を込めて、その手を握り返した。
「……いいよ。連れてって。」
「おぅ。……じゃあ、行こう。」
自然と……いや、意識的だったかもしれない。指を絡める「恋人繋ぎ」になる。
瑛祐くんのぎこちなさが、握った手から伝わってくる。解けないように、でも力を入れすぎないようにという彼の戸惑いや喜びが、手から伝わってくる気がする。
大丈夫。力を抜いても、私からは離さないからね。
少しくらい痛くても、汗をかいていても構わない。いや、瑛祐くんの汗なら、むしろご褒美……とまでは言わないけれど、全然不快じゃない。
アトリエの作業で距離が近くなった時、彼の匂いがしても不思議と嫌じゃなかった。以前の俺…私なら、男の汗なんて不快でしかなかったはずなのに。
部活終わりの佐伯くんとすれ違った時は「うっ」と思ったから、やっぱり瑛祐くんは特別なんだ。
「特別なのは福原。」
以前、彼が言ってくれた言葉。私にとっても、彼はもう「特別」なのかもしれない。
だって、手を繋いでいるだけで、こんなにドキドキして嬉しいだもん。
いつもならブレーキをかけてくる「前世の俺」が、今は沈黙している。なんか心地いい。
「……なんか、照れるな。」
瑛祐くんがふと呟く。
「ん? 手、嫌だった?」
「嫌じゃないよ。むしろ、すごく嬉しい。」
「私も。……なんだか嬉しい。」
手を繋ぐのが嬉しいだなんて。
『それはもう、好きってことなんじゃないの?』
頭の中でサクラさんの声がうるさく響く。
「悲しいけど、これって戦争なのよね」
そう言って出撃したパイロットがいたけれど。
「嬉しいけど、これって恋なのよね?」
……マジか。オレ、いや私。これは、やっぱり恋なのか。
もう、『前世のおじさん』、静かにして。今日はお休みだよ。出てこないで。
いつもは冷静にブレーキかけてくるはずの『前世の俺』の調子が、完全におかしい。手を繋いだだけで、心の回転数がオーバーレブしちゃったのか……?
「……着いたよ。」
「おぉ、着たね!あれ凄いね。」
目の前に現れたのは、巨大なアトラクションの建物と、凛々しく立つ等身大のガムダン。
期待しかない。
一旦、恋は休戦協定だよ。……無理かもしれないけれど。
朝、投稿できていなかったので、投稿します。
午後のひととき。こんなラブコメ読んで、まったりするのも悪く無いよね。




