4.平均…。
ふふふっ。
これでもしかして、明日からボッチ脱却もありえるんじゃない?
この胸の高鳴りは、きっとそういう期待の表れだろう。
油断するとすぐに顔がニヤけてしまう。
「ただいまー」
自分でもわかるくらい声が弾んでいる。
「おかえり、瑛里。遅かったじゃない!」
「あ、これ選んでたからさ」
誕生日用にラッピングされた袋を見せると、奥から小さな影が飛び出してきた。
「ねーちゃん、おかえり!」
「おぅ、誕生日おめでとう。洸ちゃん!」
そう言ってプレゼントを渡すと、弟は目を輝かせた。
「うぉ、やったー! ありがとう、お姉ちゃん!」
……『大好き!』くらい言ってもいいんだぜ、弟よ。まぁ、いいけど。
「瑛里、何かいいことあった?」
うわ、お母さん鋭い。母親の勘ってやつは恐ろしいな。
「なにもー。着替えてくるね」
「準備手伝ってよ!」
「はーい」
ジャージに着替えてリビングに戻ると、「おぉ〜! サラマンドラ出たー!」と歓喜の叫びが響いた。
どうやらお目当てのレアカードを引いたらしい。
「ねーちゃん、神だよ! ありがとー!」
抱きついてくる弟。カワイイ奴だけど、もう11歳か。こうして懐かれるのも今のうちかな、なんて思いながら頭を撫でてやる。
誕生日は、いつになってもいいものだ。
バースデーソングを歌うのは、メンタルがおじさんの私には少々気恥ずかしいが、ここは恥を捨てて全力で歌ってあげた。これも可愛い弟のためである。
家族団らんの時間がひと段落し、私は父親に報告をすることにした。
「あ、そうだ。お父さん。」
「お、どうした瑛里。」
「去年行った雑誌社のことなんだけど……明日、バイトで行くことにしたよ。」
「そっか。……もし他の事務所とかに声をかけられたら、返事をする前に必ず相談してくれよ。」
「?」
何を心配しているのかと思えば、悪いスカウトに引っかかるのを案じているらしい。
「わかった、気をつけるよ。」
親バカだなぁと思いつつも、大切にされている実感は悪くない。
自室に戻り、お風呂上がりに鏡の前に立つ。
154cm、47kg。平均よりほんの少し小柄な、16歳の女の子。華奢だし、まぁ、お父さんが心配なのもわかる。
突出した特徴はないけれど、全体的にバランスはいい……はずだ。
(……いや、男の視点から言わせてもらえば、この『胸』は完全にボリューム不足…。)
もし藤井くんが、『大きければ大きい方が』とか『デカいのが正義』、『戦いとはサイズだよ』とか言っている男だったら。…。
かくいう俺も、大きい方が好きだったよな…。
今のBランク(カップ?)のスペックじゃ、見向きもされないんじゃないか?
……待て待て、ちょ待てって、なぜアイツが出てくる。
今日ちょっと話しただけのクラスメイトだよ。落ち着くんだ私。
男の時は、日課とまでは言わなくても、溜まったものを出す「習慣」があった。
今の体には必要ないはずで、どうやって良いかも分からないけどね……なぜか今、藤井くんの顔が脳裏をよぎり、そんな事を思う。
ブンブンと首を振って雑念を打ち消す。
男の時だって、別に好きでもない奴が不意に思い浮かぶことなんてあった。深い意味はない、はずだ。
……それなのに。
翌朝、私はなぜかいつもより30分も早く家を出てしまっていた。
これじゃ、まるで。
「……早く学校に行きたいみたいじゃないか…。」
早朝のヒンヤリとした空気が、火照った頬に心地よかった。




