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4/14

4.平均…。


ふふふっ。


これでもしかして、明日からボッチ脱却もありえるんじゃない?

この胸の高鳴りは、きっとそういう期待の表れだろう。

油断するとすぐに顔がニヤけてしまう。


「ただいまー」

自分でもわかるくらい声が弾んでいる。

「おかえり、瑛里。遅かったじゃない!」

「あ、これ選んでたからさ」

誕生日用にラッピングされた袋を見せると、奥から小さな影が飛び出してきた。


「ねーちゃん、おかえり!」

「おぅ、誕生日おめでとう。洸ちゃん!」

そう言ってプレゼントを渡すと、弟は目を輝かせた。

「うぉ、やったー! ありがとう、お姉ちゃん!」

……『大好き!』くらい言ってもいいんだぜ、弟よ。まぁ、いいけど。


「瑛里、何かいいことあった?」

うわ、お母さん鋭い。母親の勘ってやつは恐ろしいな。

「なにもー。着替えてくるね」

「準備手伝ってよ!」

「はーい」


ジャージに着替えてリビングに戻ると、「おぉ〜! サラマンドラ出たー!」と歓喜の叫びが響いた。

どうやらお目当てのレアカードを引いたらしい。

「ねーちゃん、神だよ! ありがとー!」

抱きついてくる弟。カワイイ奴だけど、もう11歳か。こうして懐かれるのも今のうちかな、なんて思いながら頭を撫でてやる。


誕生日は、いつになってもいいものだ。

バースデーソングを歌うのは、メンタルがおじさんの私には少々気恥ずかしいが、ここは恥を捨てて全力で歌ってあげた。これも可愛い弟のためである。


家族団らんの時間がひと段落し、私は父親に報告をすることにした。

「あ、そうだ。お父さん。」

「お、どうした瑛里。」

「去年行った雑誌社のことなんだけど……明日、バイトで行くことにしたよ。」

「そっか。……もし他の事務所とかに声をかけられたら、返事をする前に必ず相談してくれよ。」

「?」

何を心配しているのかと思えば、悪いスカウトに引っかかるのを案じているらしい。

「わかった、気をつけるよ。」

親バカだなぁと思いつつも、大切にされている実感は悪くない。



自室に戻り、お風呂上がりに鏡の前に立つ。

154cm、47kg。平均よりほんの少し小柄な、16歳の女の子。華奢だし、まぁ、お父さんが心配なのもわかる。


突出した特徴はないけれど、全体的にバランスはいい……はずだ。

(……いや、男の視点から言わせてもらえば、この『胸』は完全にボリューム不足…。)

もし藤井くんが、『大きければ大きい方が』とか『デカいのが正義』、『戦いとはサイズだよ』とか言っている男だったら。…。


かくいう俺も、大きい方が好きだったよな…。


今のBランク(カップ?)のスペックじゃ、見向きもされないんじゃないか?


……待て待て、ちょ待てって、なぜアイツが出てくる。


今日ちょっと話しただけのクラスメイトだよ。落ち着くんだ私。



男の時は、日課とまでは言わなくても、溜まったものを出す「習慣」があった。

今の体には必要ないはずで、どうやって良いかも分からないけどね……なぜか今、藤井くんの顔が脳裏をよぎり、そんな事を思う。


ブンブンと首を振って雑念を打ち消す。

男の時だって、別に好きでもない奴が不意に思い浮かぶことなんてあった。深い意味はない、はずだ。


……それなのに。



翌朝、私はなぜかいつもより30分も早く家を出てしまっていた。


これじゃ、まるで。

「……早く学校に行きたいみたいじゃないか…。」

早朝のヒンヤリとした空気が、火照った頬に心地よかった。


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