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38.ザクとは違うのだよ。ザクとは?


また、これか…。夢をみている。


前世で、アキラさんに誘われて家に行ったことがあったらしい。……記憶が曖昧で確証はないけれど。


「……君、料理得意だったよね。」

「まあ、男の料理ですよ。」


前世ではこれといった趣味はなかったが、食べ歩きと再現レシピでの料理だけは好きだった。


「はい、どうぞ。」

差し出したのは、だし巻き玉子とハンバーグ。

「おぉ、中にチーズ入ってる?」

「はい。ファミレスで流行ってたんで作ってみたんです。どうですか?」


アキラさんが、パッと花が咲いたような笑顔になる。

「美味しいよ。君と結婚する人は幸せだね。」

「何言ってるんですか。あ、レシピ教えますから、今度はアキラさんが作ってみてくださいね。」


幸せな気持ち。けれど、起きたらアキラさんの顔も声も、砂のように指の間をすり抜けて忘れてしまう。



目が覚めた時、頬に涙が流れていたけれど、夢の話。

だよね。懐かしい気持ちは大切にしたいけど。


少し遅めの朝食をとり、私は瑛祐くんのアトリエへ向かった。


「お、お〜……!」

新しいプラモの箱を開ける瞬間は、いつでも気持ちが跳ね上がる。

ドキドキするのは、隣で瑛祐くんが見守っているからではない。……断じて、ない、よね。

「まさに、青い巨星ですな?」

心を誤魔化すかのように、おじさん将校の口ぶりをしてみた。

「なんだよ、その口調」

「ザフとは違うのだよ、ザフとは!」

「……」

しまった。調子に乗りすぎた。


目の前の少女が急に敵軍将校の真似をし始めたら、男子高校生は、どん引きだよね。すまぬ。


「……。コイツ、……違うぞ。ザフとは。……だったっけ?」

照れながら、瑛祐くんが乗ってくれた。

「そこは照れちゃダメだよ〜!」

二人で顔を見合わせて笑い合う。……楽しい。


シア専ザフとは違い、このグクは青を基調とした色合いで、これはこれで渋くてカッコいい。


「今回は時間かかるかもだけど、切り出したらランナー跡も丁寧に消していこうか。」

瑛祐くんが優しく語りかける。

「はい。師匠、よろしくお願いします。」

一つのパーツを切り離すごとに、丁寧にヤスリをかける。


もどかしいけれど、この「なかなか完成しない感じ」が、今は愛おしい。だって、その分ずっとここに通えるからね。


ふと隣を見ると、瑛祐くんは別のプラモを作っていた。全部のパーツを先に切り出し、効率的にヤスリをかけている。


「なんか、パーツが細いけど……何作ってるの?」

「『バーズアクス』だよ。テレビ放送が始まったから、ショップに展示用を依頼されたんだ」

えー! それってプロじゃん。

「すごい。それって、瑛祐くんの腕が認められたってことだよね。」

「まぁ、でも、じいちゃんのコネだよ。それに俺を『A君』呼ばわりしてくる例のショップだしな……」

「あぁ、あの楽しげな店長さん……。そうだ君、A君だったね!」

「『A君』いうなし。……そうだ。これ一週間で仕上げる代わりに、チケットをもらうことになってるんだ。」

彼が見せてくれたチラシには、期間限定で遊園地にガガムダンのアトラクションができるとあった。


「へぇ〜、面白そう。……楽しんでおいでよ!」

私がそう言うと、瑛祐くんは呆れたように苦笑した。

「『楽しんでおいでよ』って……これ、ペアチケットなんだけど。」

「えー、いいなぁ! 誰と行くの?」

あの万博で大人気だったアトラクション。行きたかったけれど、当時は予約が取れなかったし、大阪は遠い…。


「あのさ。この状況で、瑛里以外と行くなんて、ありえないだろ」

……えっ。

つい、瑛祐くんの手を取って叫んでしまった。

「えっ、私も行っていいの!?」

「……うん。喜んでくれて、嬉しい。」

あ、瑛祐くんが真っ赤になって……って、手。

慌てて手を離す。

「ご、ゴメン……! ちょっと嬉しすぎた。」

「あ、いや、いいけど。…。俺も嬉しいし。」

少し気まずい空気。


(……今、手を繋いでドキドキしてくれたのかな? サービスで畳み掛けようにも、今日はコニワロの、色気も何もない服だし……)


というか、私の方がドキドキしてサービスどころではないけど…。


「あ、お昼ご飯、どうするの?」

「なんか適当に買ってこようと思ってた。」

「良かったら、私が作ろうか?」

「えっ、いいの? じゃあ……奥の部屋にキッチンがあるから」

瑛祐くん、凄く嬉しそう。

よし、がんばろう。


……ついに。アトリエの「奥の部屋」に初潜入です。


平日のお昼ですが、1話投稿します。


お昼ごはん食べながら、こんなラブコメ読むのも、悪く無いよね。

ってな感じで、よろしくお願いします!

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