34.応援って…
『高校1年の女です。朝、一緒に学校へ行って、お昼は私の作ったお弁当を一緒に食べて、楽しく会話して、放課後は趣味を楽しみ、休日は2人で映画を見に行ったりする同級生の男の子がいます。私の事は「特別だ」と言ってくれました。この関係は何なんでしょうか?』
検索窓に打ち込んだ問いに対し、AIジェミー君は一瞬で無慈悲な正論を返してきた。
それはもう、客観的に見れば**「付き合いたてのカップル」あるいは「限りなく恋人に近い両想いの関係」**と呼ぶのが一番しっくりきますね!
「マジか。」電車の中で、スマホを握ったまま赤面してしまう。
読み進めると、AIはさらに追い打ちをかけてきた。
もし、さらに彼との距離を縮めたい、あるいは「これって告白待ちなのかな?」と思うことがあれば、いつでも相談してくださいね。応援しています!
(……藤井くん。いえ、瑛祐くんの恋の応援をやめた途端、今度はAIに応援され始めた…。)
まあ、いいけど。応援されても、どうってことないし。当たらなければね…。
次の日。いつものようにお弁当を作って、学校へ行くために電車に乗る。
窓に映る自分の姿を見て、つい前髪に手が伸びた。身だしなみ、変じゃないかな。…。
「大丈夫! 可愛いはずだよ。」
ふと、過去の自分が、今の私を励ましてくれるような気がした。
駅の改札を出れば、瑛祐くんが待っていた。
彼は当たり前のように私のカバンを受け取り、自転車のカゴに入れる。
「おはよう」
「おはよう、瑛里。カバン、貸して。」
「うん、ありがと。……瑛祐くん。」
名前で呼び合う。
たったそれだけのことなのに、口にするたびに熱いものが込み上げる。
(慣れていくのね…。)ってそのうちなるはず。
だって、夢の中でアキラさんを呼ぶときは、こんなにドキドキしないんだから。
(……ていうか、行き帰りとも私が歩くなら、自転車いらなくない? 無かったらもうちょっと密着できるし、手だって繋げたり……。)
……って、何を考えて…って!
まだ初心者の自分には心臓に悪い。今の私には、二人の間に「自転車」という物理的な壁が必要な気がする。
まだ。……今はまだ。
「そういえば、『バーズアクス』のTV放送が始まったな。」
「あ、あの映画の……! 観たいな」
「一緒に観るって約束したもんな。録画してあるよ。瑛里と観ようと思って、俺もまだ観てないんだ。」
律儀なヤツだ。でも、その「約束」という響きが、なんだか心地いい。
「あ、じゃあテスト終わったら観に行くね! でも、気になるだろうから瑛祐くんが先に観ててもいいよ?」
「いや、いいよ。楽しみにしておくから。」
なんだか声のトーンが上がってしまっている気がするけれど、わざとじゃないし、止めようもない。
お弁当を楽しく食べたりして、時間が過ぎる。
今日の最後の授業は、天敵の数学だった。
(うぅ……わからないところが、わからなくなってきた……)
かなり険しい顔をしていたのか、隣の席の瑛祐くんが心配そうに覗き込んできた。
「どうした? 具合悪いのか?」
「あ、大丈夫。ただ、数学が難しくて……。」
「そっか……。」
会話が途切れそうになったその時、前の席の平川ゆかりさんがくるりと振り返った。
「藤井君って、この前の数学、学年1位だったでしょ?」
(学年1位!? スゴ……!エースなのか…。)
「まあ、たまたまだけどね。得意っちゃ得意だけど」
「じゃあさ、勉強会開かない? 瑛里も教えてほしいでしょ?」
ゆかりさん……今、さりげなく私を「瑛里」って呼んだ?
名前で呼び合っていることがバレているのか。顔が熱くなる。
「えっと……でも、瑛す……あ、藤井くんの勉強の邪魔をしたら悪いし」
ちょっとレベルが違いすぎるもんね。
「別にいいけど。……じゃあ、ファミレスでどう?」
瑛祐くんが快諾し、話がまとまりかけた時。
「あ、ごめん。その勉強会、俺も参加していいかな?」
不意に上から声がした。剣道部の佐伯くんだ。
「赤点取ると補習で、インターハイの練習に出られなくなるんだよ」
「藤井君、もう一人いい?」
なぜか、ゆかりさんが確認をとる。
「大丈夫。2人も3人も一緒だし……」
瑛祐くんは優しい。……優しいんだけどね。2人きりじゃなかったんだ。
ホッとするような、残念なような…。
ふと気づくと、ゆかりさんと佐伯くん、お互いを「ゆかり」「亮介」と呼び合っている。
「あ、先に言っておくね。私たち、付き合ってるから。だから大丈夫! 邪魔しないからね」
ウインクを飛ばすゆかりさん。
(……良いんだけど。「邪魔しない」って、一体何お!?)




