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30/80

30.ねるとん紅鯨団といった番組がありました。


ーなんか、話あるらしいから先に行っててくれる?

ー…。わかった。


隣の席なのに、メッセージでのやり取り。

直接話せばいいんだけど、誰かに聞かれるのも嫌だし、何より今の私は、きっとまともに話せる状態じゃない。


どんなに心が揺れても、お腹は空く。

藤井くんはもう、私のお弁当抜きには生きていけない身体になっているはずだしね。


……お弁当の時間と、彼が誰を好きかは関係ない。これはあくまで、プラモ作りのお礼なのだから。



昼休み。私は校舎の裏で、三人の男子に囲まれていた。

「付き合ってください!」

「友達からでも、お願いします!」

「今度、ご飯でも行きましょう!」

三人の男子が、深々と頭を下げて手を差し出している。

(……これ、昔流行った『ねるとん紅鯨団』のやつだよね。)

おっとぉ! ここでエリちゃんを巡って同盟の三人がチェックインだぁ! とんねるずだったか……なんて、脳内の実況で茶化さないとやっていられない。


実際、女の子ってこういう時どう答えればいいの。大変すぎない?


ご飯くらいならいい気もするし、友達も欲しい。けれど、どうしてもアイツの顔が浮かんでしまう。白川さんのことが好きらしい、アイツの顔が。


……やっぱり、他の誰かも、友達も、今は要らない。


「えっと。……ごめんなさい!」

「なんで? 他に好きな人とかいるの?」

「……。」

「いないんなら、デートくらい……とりあえずID交換……」


「ちょっと待ったぁぁ!」


あ、その声は。

でも……タイミング、遅ぉぉい! 「お願いします!」の前に割り込まないと、成立しないでしょ!

…。って、そういう問題じゃないか。


「話は終わっただろ。福原、困ってるし。」

藤井くんが間に入ってきた。けれど、彼が口にしたのは「ちょっと待った、俺も!」ではなかった。


(……やっぱり、白川さん推しだからかな?)


「うん。……ごめんなさい。でも、ありがとうね。」


私が最後通牒を突きつけると、同盟の三人は「くっ……」と呻いて撤退していった。

「じゃあ、これで終わりな! 福原、行こう。昼休み終わっちゃう。」

藤井くんは私からお弁当の袋をひょいと受け取り、もう片方の手で、私の手を握った。そのまま、いつもの中庭のベンチへと引っ張っていく。


自然に、手を繋いだ形。

顔から火を吹きそうになって藤井くんを盗み見ると、彼も耳まで真っ赤になっていた。


「あのさ……手!」

「あ、ごめん! 咄嗟に……嫌だった?」

「嫌じゃ……ないけど。…あの、正直どうしようかと思ってたから、助かったよ。ありがと。」

「……そうか。いや、まあ、それなら良かった。」

何が「良かった」のかは分からないよ。


いつもなら下らない話で盛り上がるのに、二人とも無言でお弁当を広げる。

気合いを入れて作ったチーズインハンバーグは、お弁当だとチーズが固まっていて微妙だった。……こんな日に限って。


無言なのは、美味しくないからかな。いつも楽しみにしてくれているのに。


「ごめんね。」


つい、謝罪が漏れた。

「えっ、何が? アイツらがしつこかったのは、福原のせいじゃないよ!」

「いや、あの、チーズ固まってて、美味しくなかったかなって……。洸也のお礼だから、頑張ったんだけどな…。」

「えっ? ああ、大丈夫! 十全に美味いよ。こんなのレストランでしか食えないって感動してたんだ。……もっとアツアツなら、もっと凄いのか?」

「……うん。アツアツの時は絶品だったんだけど。」

「そうか、食べてみたいな……」

「今度、作ろうか? 楓さんも一緒に。」

「いいのか?」

「お寿司のお礼もしなきゃだしね。」


少しだけ、いつもの空気が戻ってきた気がした。でも、白川さんのことが頭をよぎる。


(……もう二人で会わない、とか言われたら、また泣いちゃうかも。)


「あ、そうだ。これ言わないと。」

藤井くんが真剣な顔で私を見た。

「あのさ、シア専ザフ。もう完成って言っていいと思う。初めてにしては、凄く上手くできた。」

あ、褒めてはくれるけど、やっぱり「完成=終わり」なのかな。


誤解させちゃいけないしね。頑張れ、私の涙腺。まだ泣いちゃダメだ。

「そうだね。おかげさまで、カッコよくできたよ。楽しかった。」

「でさ、昨日ショップの手伝いしてたろ。ご褒美に店長からこれ貰ったんだ。」

見せられたスマホの画面には、MS-07 グクのHGパッケージが。

「あ、グク?青い巨星の…。 しかも限定の、あんまり売ってないやつ?」

最近仕入れた知識が役に立つ。HG、MG、RG、PG……。

(……ハードゲイ、ミドルゲイ、リアルゲイにパーフェクトゲイ……いや、プレミアムゲイか)

下らないことを考えると、涙が引っ込む気がする。


「店長にこれ貰えるって言うから、恥を忍んで手伝ったんだ。だからさ……次は、これ作ろうぜ。また違うテク、教えるから」

A君って言われるの嫌だったのに?やっぱいいヤツだよ。


「ん? プラモ作り、終わりじゃなくて……?」

「あ、もう終わりにしたかったら仕方ないけど。……まだまだ色々教えられるし、続けてくれると、嬉しいんだけど。」

「……っ、いや、私も続けたくて。……うん。嬉しい、かも。」


涙が少し、溢れてきたけれど。


これは、さっきトイレで流した涙とは、全然違う、なんだか暖かい温度だった。

申し訳ございません。

投稿の話数を間違えていまして、修整させていただきました。28話が抜けていて、読み返していると話は繋がるようなのですが、瑛里ちゃんにハマーン様やって欲しくて、どうしても差し込みたくて、ちょっと無理やり修整しました。

ごっちゃになってしまった方、申し訳ございませんでした。


これに懲りず、この話を読み進めていただけますと、幸いに思います。

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