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3.モデラー?

懐かしいと思って眺めていただけ。

パッケージの迫力に惹かれて、少し中身が気になっただけ。


そんなつもりだったんだけど……。


「え、いや。買うつもりじゃなかったから、いいよ」

思わず遠慮してしまった。でも、これは本心だ。女子高生の私が今さらロボットを買うなんて、ね。


でも、よく見ると前世で作ったものとは構造がまるで違う。これが今の技術かな。

箱には『HG』の文字。……HG? …ハ、ハードゲイ?…。 いや、そんなわけないか。ってか、そんな事考えちゃ、おじさんバレしちゃう。


つい顔が緩んで凝視してしまったせいか、藤井くんは私を「ガムプラ好き」だと思ったらしい。


「これ、転売ヤーの餌食になってなかなか手に入らないからさ。俺はいいから、福原さんが買いなよ」

……いい奴なのか?コイツ。なら余計に、私じゃなく彼が手にするべきだ。


「それじゃあ、なおさら、私じゃなくて藤井くんが買ったほうがいいよ」

すると彼は、隣にあった緑色のノーマルザフを手に取って答えた。

「いや、俺はこっちで問題ないから。……塗ればいいし」

「えっ、塗る?」

思わず声が出た。塗装までするのか。

「でも、ツノみたいなやつもついてないよ?」

「ツノ?あ、指揮官機用アンテナのことかな。それくらいなら大丈夫。自作できるから。」

「じ、自作……? 武器とかバズーカは?」

「元々、マシンガンを改良して装備させるつもりだったから、これで大丈夫。」


……改良? 自作? もしかして、この大人しそうな隣の席の男の子、ガチの上級者なんじゃ……。


「藤井くん、もしかしてプラモ、めちゃくちゃ上手いの?」

「いや、じいちゃんがプロのモデラーだったんだ。俺は、その道具を形見分けしてもらっただけで……」

形見。その言葉が胸に刺さった。

彼は亡くなったおじいさんとの思い出を辿るために、今またプラモを握ろうとしているのだろうか?

(……いいな。羨ましい)

前世の私は、教えてくれる人も、道具を揃える知識も時間もなくて、ただ組み立てるだけで満足していた。改造や塗装なんて夢のまた夢だったな。


でも今、目の前に先生となってくれそうな「上級者」がいる。


「……ねぇ、どうしようか?」

「え?」

「あの……中身を見てみたいし、作り方も教えてほしいんだけど。でも、家には持って帰れなくて」

苦肉の策で、私は提案した。

「私が買うから、藤井くんが預かってくれないかな? その……良かったらなんだけど、作り方教えてもらっても良い?」

自分でも驚くほど図々しい提案だ。でも彼は少し考えた後、柔らかく笑った。

「いいよ。じいちゃんのアトリエがあるから。設備も道具も揃ってるし……これから来る?」

「えっ、アトリエ!? ……あ、でも今日は弟の誕生日だから……Dモンカードを買わなきゃいけなくて。どこに売ってるんだろ?」


それを聞いた藤井くんは、店の中を見渡して「Dモンカードならあっちだよ。付き合うよ」と歩き出した。


「付き合う」ってと、一瞬ドギマギしたが、彼はただの親切心らしい。カード選びに付き合う。だよね。


「今は、このパックが人気なんだ。予算が千円なら、五パックくらい混ぜてあげれば喜ぶと思うよ」

「詳しいんだね。ありがとう」

カードを選ぶ時間は、不思議と楽しかった。

会計を済ませ、私はザフの箱を彼に託した。

「本当にありがとう。これ、よろしくね」

「うん、預かっとくよ。また明日、学校で」


帰り道、一人で揺られる電車。

頬が緩んでいるのが自分でもわかる。何か違う明日になる。そんな気がした。


「女の子らしく」なんて目標はどこへやら。私の心は、新しい趣味と、少しだけ近づけたクラスメイトへの期待で、軽やかに弾んでいた。


読んでくださりありがとうございます。

不定期になりますが、多少ストックもあり更新頑張りますので、よろしくお願いします!

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