28.友達ってやつだよ。
「でもなー。ねーちゃんがA君の彼女なんてなー」
「いや、だから違うってば」
黙れ俗物……。いや、可愛い弟だよ。あと、何か違うか。…。恥をしれ俗物!これだった。
私と同じくシア様を愛した少女のセリフ。ハマーク様は、オトナの女性で少女ではないけど。
「あ、そうか。お父さんには内緒だよな〜!」
「……いや、本当に違うから。」
(話を聞け小僧……!)
「でも、お母さんから聞いてるよ。お姉ちゃんに好きな人できたって。」
くっ、あのエスパー母め。よりによって洸也に言うんじゃねえよ。いや、そもそもお母さんに「好き。」なんて一言も言ってない。……はず。
お母さんは、イベントの合間にランジェリーショップへ行くのを渋った私を動かすために、洸也を味方につけたらしい。「あんたもお姉ちゃんが可愛い方がいいでしょ?」なんて吹き込んで。
洸也にしてみれば、一緒にゲームをしてくれるお姉ちゃんも好きだけど、友達の航介くんのところみたいに「自慢できる、可愛くて綺麗なお姉ちゃん」への憧れもあったみたい。
「でも、残念ながら付き合ってはいないのよ。解って。」
「でも、A君のこと、嫌いじゃないんだろ!」
「……うん。そうだね。嫌いじゃないよ。」
「じゃあ、彼氏にしたらいいじゃん。ねーちゃん美人だし、ゲームできるし。」
…。美人て、可愛がりすぎてシスコンになっちゃったのか…。あとゲームできるってのは、恋愛偏差値に影響しないの。アナタにはポイント高いかもしれないけど…。
「そうだねぇ。まあ、こればかりは私一人じゃどうにもならんしなぁ。藤井くんとは、『友達』ってやつだよ。」
(……私が同級生の男の子と付き合うなんて、あり得ないのよ。中学の時、誰からの告白を断ったと思っているの!)
中学で一番人気だった男の子からの告白を、「え、無理。」の一言で秒殺したんだよ…。
ってか、普通に無理でしょ。男となんて。って思ってた時期もありました。
家に帰ると、すでにお母さんも帰宅していた。
「ただいまー! 準優勝だったよ!」
洸也がお母さんに意気揚々と報告する。
「それでさ、A君って覚えてる?」
「A君? ……あー、洸也が憧れてるカードマスターのお兄さん?」
「そうそう。そのA君って、お姉ちゃんのカレシだったー!」
「はっ、洸也! 違うって言ってるじゃない!」
慌てて否定したけれど、お母さんはもう満面の笑みだ。
「洸也、詳しく。瑛里はお風呂にでも入ってらっしゃい」
「やだっ! この話はおしまい。もう怒るからね!」
ピシャリと終わらせたけれど、二人が目を合わせてニマニマしている。
(……絶対これ、後で有ること無いこと噂するつもりだわ)
今日のお礼だけは、伝えておかないとね。
私はベッドに潜り込み、スマホを手に取った。
『今日は、洸也がありがとうね。すごく喜んでたよ!』
メッセージを送ると、すぐに既読がついた。
『いや、カード自体は店が用意したものだから。……あの推しカードは俺のだけど』
『じゃあ、明日のお弁当は気合入れようかな。お礼に』
『うん。楽しみにしてるよ』
絵文字も何もない、素っ気ない文章。
なのに、スマホを握る手が少し震えて、私はベッドの上で足をバタバタさせてしまった。……自分でも、柄じゃないと思うんだけど。ジッとしてられない。
「……くん。今日は元気そうだね」
あ、いつもの夢だ。
あれ? 「楓さん」……?
いや、違う。いつものように靄がかかっていて、アキラさんの顔は思い出せない。けれど、一瞬だけ楓さんの面影を感じたんだ。
「ん。楓は……だよ。もうすぐ結婚するかもしれない、最近良い人ができたらしい」
夢の中のアキラさんが、少し寂しそうに、でも嬉しそうに呟く。
「それは、おめでとう。でも、複雑ですね?」
「まあ、私には……君がいるからね。あ、そうだ。これ。」
差し出されたのは、シア専ザフ。
そっか、俺が作ってみたいって言ったの、覚えててくれたんだ。
「……君が退院したら、一緒に作ろう!」
「そうですね。楽しみだ。」
ほんのりと暖かい、安心感。一緒にいるだけで感じる幸福感。
……この「敬愛」に近い穏やかな気持ちが「恋」だとするならば。
あの彼に会うたびに、ドキドキして、顔が熱くなって、スマホ一つで舞い上がってしまうこの感情は、一体何なのだろうか。
読んでいただきありがとうございます。
不定期更新で申し分ないのですが、今日も2話投稿してみます。ストックもあるので…。
平日のお昼休みに、こんなラブコメ読むのも悪く無いよね!
よろしくお願いします!




