26.いざ、Dモンカードバトルへ、Dモン?いえ私はCモンでした。
「瑛里。ありがとうね、これお駄賃。」
「あ、バイトもしてるし、洸也の応援に行きたいだけだから、いらないよ。」
そう断った私に、お母さんはじっと私の胸のあたりに視線を落とした。
(……ど、どこ見てんのよー。…じゃないんだけど。えっと母娘とはいえ、なんか落ち着かないんだけど。)
「もらっておきなさい! アンタ、今必要なものがあるでしょう?」
「えっ、必要なもの?」
「……高校に入って、バストが大きくなったんじゃない? サイズ、合ってないでしょ。」
……。えっと。デリケートな問題をズケズケと。流石は母としか言いようがない。
先日、楓さんのあの迫力あるスタイルに圧倒されたばかりだったので、自分のは全く全然だなって気にしていなかったけれど。言われてみれば最近、少しだけ「窮屈」な気はしていた。
「えっ? 大丈夫だよ」
「いいから! いつまで私が買ってきたスポブラしてるの。ちゃんと測ってもらって、カワイイのを買いなさい!」
お母さんがここまで言う時は、逆らわないのが一番だ。私は渋々、お札を受け取った。
確かに、ちょっと成長してたから、ちょっと痛かったし、必要かなって思ってたから、仕方ない。
が、か、カワイイのか…。
ちゃんと選んで買わないと、洗濯の時にバレるか。
見せる相手も…。ねぇ。
ふと浮かんできた顔をかき消す。な、何…?
見せないよ…。
「はい……。わかった。」
「とはいえ、さすがに洸也を連れてランジェリーショップには行けないわよね。カードバトルは待ち時間があるから、その隙に行きなさい。洸也には言っておくわ。」
行く店の指定まで、されてしまった。怒られるかもだけど、もうテキトーに買ってしまおうと思ってたのに…。
そんなやり取りが今朝あって、私は今、ショッピングセンターの大会会場にいる。
洸也の付き添い自体はいい。どうせなら頑張ってほしいし、応援もしている。ただ、買い物の予定だけが重くのしかかっている。
正直、自分でも「そろそろかな」とは思っていたのだ。でも、まだそんなに目立たないし、いいかなって……。
会場に着くと、出場登録を済ませる。
「お、洸也君。来たねー!」
「うん。お姉ちゃんのおかげで『サラマンドラ』が出てさ。今年は超攻撃的デッキなんだ!」
受付の男性がこっちを向いたので、私は愛想笑いで会釈を返した。前回ベスト4だった洸也は、運営のショップ店員さんとも顔馴染みらしい。
「ねーちゃん、俺シードだから一時間後なんだ。あっちで友達と練習してるから、買い物してきていいよ!」
……お母さん、ちゃんと手を回してたんだね。流石は私の弟、できる男は姉のケアも完璧だね。
「あ、うん。じゃあ、行ってくるね」
練習場で少年たちと自然に混ざり、カードを並べる洸也を見送る。
(……アイツ、人種が違う。あんなに自然に輪に入れるなんて、私の弟とは思えないほどの陽キャだわ)
その後のランジェリーショップでの出来事は、思い出すだけで顔が熱くなるので割愛したい。ただ、対応してくれた店員さんのプロ意識が凄まじく、恥ずかしがっている暇もなかった。
「ちゃんとしたのを着けないと、形が崩れますよ!」
なんて本気で怒られてしまった。
結局、その場でサイズを測り、買ったばかりの「ちゃんとしたやつ」をそのまま着けて帰ることになった。
あ、サイズは内緒にしたいけど。ザフで言うと、初期型ってやつです。ルーム戦役で活躍したタイプかな。核装備できるやつ。
ザフB型は多分無かったので、成長して少し嬉しい。
そう思い込むことにした。
「着けてきたやつに着替えます」と言ったのに、「せっかくサイズが合ったものを着けたんだから、そのままどうぞ」と、半ば強引に押し切られたのだ。
(まあ、確かにサイズが合っている方が楽だけど。……違和感はまだあるな)
あと、これで「不慮の事態」で誰かに見られるようなことがあっても……。
(……って、不慮の事態ってなんだよ! 見せないからね、絶対!)
脳裏に不意に、またアイツの顔が浮かんで、私は慌てて頭を振った。
…ホントに見せないからね!
買い物袋を下げて会場に戻ると、すでに準決勝が始まろうとしていた。
「お姉ちゃん、遅いよ! もうベスト4だよ。」
「ごめんごめん、で、どうだった?」
洸也は得意げにVサインを作った。
「当然! ねーちゃんにもらったサラマンドラ、マジで強いよ!」
『ベスト4に勝ち残った選手は、ステージに上がってください!』
場内アナウンスに促され、堂々と壇上へ向かう洸也。
その姿を見守っていると、ステージ上でテキパキと机を運んだり、選手に指示を出したりして仕切っている、高校生くらいのスタッフが目に入った。
無駄のない動き。少しだけ見慣れた、あの背中。
……さっき、お店で「見せるわけない」と妄想した時に、不意に思い浮かんだあの顔。
(……え? なんで、藤井くんがここにいるの?)
読んでいただきありがとうございます。
また、評価いただきありがとうございます。
嬉しかったので、朝1話投稿しますっ。
平日の朝から、こんなラブコメ読むのも悪く無いよね。
という訳で、よろしくお願いします。




