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25.テッシュ使いすぎ問題。


「スミ入れなんだけど、塗料でやるのは難しいから、ペンでやってみようか?」

藤井くんが、手元を覗き込むようにして優しく教えてくれる。


近すぎる。……なんか、もう名前で呼んでもいい気がするけれど。瑛祐くん、瑛祐、A君……。


うぅ、難しいっ。


(……あ、難しいっていうのは、名前の呼び方じゃなくてスミ入れの話ね!)


「あ、ハミ出ちゃった。」

「大丈夫だよ。綿棒やティッシュで拭けばすぐに取れるし。」

「あ、本当だ。きれいになる。……よし、もう一回やってみるね。」

「おぉ、何回でも大丈夫だよ。」

「あ、ところで藤井くんも失敗したりするの?」

「いや、そんなには失敗しないかな。」

「へぇ……。あ、でも昨日よりティッシュがめっちゃ減ってるけど……。」


……。

……あ。


(これ、思春期の男の子に言っちゃダメなやつだった!!)


元・男だった私には分かる。思春期の男子の部屋でティッシュが激減している理由は、その、一つしかないよね。


案の定、藤井くんの顔が真っ赤になっている。……ついでに私も、自分の失言に顔が熱くなってきた。


男同士の友達だったら、「お前、どんなオカズ使ってんだよ!」なんて盛り上がれたんだろうけど……。無理だよねぇ。


「……っ。いや、あの、違うって! こうやって、塗装をぼかすのに大量に使うんだってば!」

「ん? あ、そ、そうなんだ……えっ、でも、このぼかした塗装、本当にかっこいいね!」

セリフが棒読みになってしまった。


けれど、本当にすごい。影のような線が入るだけで、ただのプラスチックの塊だったザフに「魂」が宿ったように見える。


気付かないフリをして、二人でぎこちなく笑っておくことにした。


(頼りがいがあって、ちょっとカッコよくて、つい忘れそうになるけれど……やっぱり、健全な男の子なんだね。)


……。


まさか、先日の「サービス」が、ティッシュ減らしを加速させる原因になってたりしないよね?

(……いやいや、自意識過剰ってやつだよ。楓さんみたいなボディーならまだしも、私みたいな子供の脚じゃ、ねぇ……?)


なんてハプニングはありつつも、プラモ作りは順調だ。


ボヤッとしたフォルムだった私のザフが、スミ入れによってキリッと引き締まった。男前が上がったなぁ。

あとは最後に、表面をコーティングしたら完成と教えてくれた。


ツヤを出すか、消すか。それを選んでスプレーを吹けば、一旦終わりだという。

(……今度こそ、本当に終わりか。なんだか、すごく楽しかったな)


次の日曜日は、バイトも休みだった。

藤井くんも用事があるらしく、アトリエでの作業もお休み。


久しぶりに家でゆっくりしようと思っていたのだけれど……。


「瑛里、明日バイトないんでしょう?」

土曜日の夜、母さんに声をかけられた。

「うん、久しぶりに予定なしだよ。」

「じゃあさ、洸也を連れて行ってくれない?『Dモンカード』の大会があるらしいんだけど、私ちょっと用事があって。」

「お母さんの用事って何?」

「それは……内緒。女はね、少しくらい謎があったほうがいいのよ!」


……何言ってるんだか。どーせ友達とランチでしょ。


「ねーちゃん、頼むよ! 勝ったら憧れの『Dモンカードマスター・A君』がデッキを診断して、カードをプレゼントしてくれるんだよ。行くしかないじゃん!」

クリクリとした目で弟におねだりされちゃあ、断れない。


「しょうがない。行こうか!」

「やったー! ねーちゃんと行ける!」

素直に喜ぶ弟が微笑ましくて、カワイイ。


チラシを手に取って見てみると、そこにはデカデカとこう書かれていた。

『Dモンカードマスター・A君が降臨。――瞬殺の魔術師が君のデッキを強くする!』


(うわぁ……厨二病全開の響き。……瞬殺の魔術師、ねぇ…。)


どんな「イタい」お兄さんが出てくるのかと思いつつ、私は明日の準備を始めた。


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