23.武器が違います。
(……ぶ、武器が違います)
スタイル抜群で、歩く姿すら絵になる楓さんを見て、思わず心の中で呟いた。
脚だけなら戦えるか? いや、全体から醸し出される大人の色気に、戦意すら持てない。
私だって、過去の自分意見だけど可愛いと思っているし、胸の装甲は薄いけれど、脚には自信がある。
でも、根本的に何かが違うのだ。私も大人になったら、あんな女性になれるのだろうか。
あのロボットアニメでは、主人公が砂漠で出会った敵の「青い巨星」ことオジサマに憧れを抱き、認められたいと願うシーンがあった。
「いい目をしているな!」ってやつだ。
今の私は、まさにそれ。楓さんという圧倒的な存在に、どこか憧れに近い感情を抱いている。
(よし、シア専ザフが完成したら、次はあのオジサマの機体……『青い巨星のグク』を作ろう。今の私には、あの力強さが必要な気がする)
「ザフとは違うのだよ!」言ってみたいセリフだ。
今の私は雑魚キャラでしか無いけどね。
「着いたわ、ここよ」
「『すし藤』さんか。久しぶりだね」
てっきり駅前の回転寿司にでも行くのかと思いきや、連れてこられたのは普通の住宅に暖簾がかかった、いかにも「通」が通いそうな佇まいのお店だった。
(前世の記憶が警報を鳴らしている。ここ、絶対高い店だ……!)
「いらっしゃい。あ、楓さんと瑛祐君か」
カウンターの向こうで大将が笑う。
「今日は、瑛祐の友達も連れてきたの。とびっきり美味しいのをお願いね」
「おっけー。可愛いお嬢さんもいるし、今日は特別だな」
可愛いって私のことか。……まあ、大人の社交辞令だろう。
「よろしくお願いします」
恐る恐る、楓さんと藤井くんの間に座る。
「瑛里ちゃん、苦手なものはある?」
「あ、大丈夫です」
味覚が女子高生になったせいか、ワサビの効かせすぎは少し苦手だけれど、出されたお寿司はどれも感動するほど美味しかった。
「どう? 瑛里ちゃん」
「……美味しいです。こんなに美味しいお寿司、初めてです」
前世も含めて、これは本気だ。ネタの良さもさることながら、職人の技が光っている。
「良かった。好きなの頼んでもいいよ」
「えっと、ヒラメもコハダもアオリイカも、あとブリじゃ無くてヒラマサかな……全部美味しかったです。それで、あの、卵焼き、もらえますか?」
「「「…………」」」
一瞬、三人が妙な沈黙に包まれた。
(え、卵焼きってこういうお店では頼んじゃいけなかったっけ……?)
「卵焼きな。あるよ、ウチの看板だ。」
大将がニカッと笑った。
「それはそうと、ヒラメとコハダとアオリイカって、よく分かったな! 確かにブリじゃなくて、ヒラマサだ。瑛里ちゃん、いい舌してるね。半端なものは出せないな。」
しまった。前世の知識でつい口走ってしまった。女子高生がコハダやヒラマサを即答するのは、少し渋すぎたかもしれない。
「あ、楓さん。福原の作る卵焼きも、すごく美味いんだよ」
藤井くんがフォローするように口を出す。
「あらそうなの? 私も食べてみたいわ。……でも、瑛里ちゃんとあんなに仲がいいのに、アンタ、まだ名字で呼んでるのね。」
楓さんの鋭いツッコミに、空気が一変した。
「別にいいじゃん。なあ……え、……福原!」
藤井くんが真っ赤になって言い返す。
「呼び方なんて、別にいいけどね!……え、……藤井くん!」
「エリ」と呼べない藤井くん。
「エイスケ」と呼べない私。
……なんだこれ。
これが、いわゆる「青春」というやつなのか。
口の中に広がる卵焼きの甘さが、なんだかいつもより少しだけ、複雑な味がした。
昨日、更新できてなかったです。
なので、今日はお昼に投稿してみます。
平日のお昼下がりに、こんなラブコメ読むのも悪くないよね!
すみません!不定期更新で申し分ないです…。
これからも更新続けますので、よろしくお願いします。




