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16.デート(仮)

「あんなモノは飾りです」

……なんて、物語の終盤で使うべきセリフを、もう既に使い切ってしまっていた。


藤井くんとは、まだ始まってもいないのにね。


とにかく、夢の中の私は足のあるロボットを操縦している。赤いザフのショルダータックルで跳ね飛ばされ、必死にビームを撃っても当たらない。この時、シア様はなんて言うんだっけ……。


「当たらなければどうということはない!」


と思った瞬間、赤いザフが溶け出した。


は、早すぎたんだ。いや、これ別の世界観(巨神)混じってない!?

「薙ぎ払え!」

藤井くんが、やられる!? あ、やられてるのはアキラさん!? 助けないと……!

「……んんっ」



目が覚めた。……夢か。


いきなりデートなんて、意識しすぎたせいだろうか。いや、違う。今日のはデートじゃない。ただの「お礼」を兼ねた映画鑑賞だって。


見知った天井、そして自分の部屋を見渡す。


小さい頃は可愛らしくパステルカラーで統一されていたけれど、居心地が悪くて、お母さんとの仁義なき戦いの末にブラウン基調の落ち着いた色合いに変えさせた。


前世のオカンは煩いだけだと思っていたけれど、今の母とはこの戦いを通じて、なんでも話せる良い関係を築けている気がする。……感謝は、してるんだよ。

前世のオカンにもね。


昨日、サクラさんに選んでもらった服を着て、準備をする。お化粧なんてできないけれどね。


「じゃあ、行ってくるねー」

「瑛里。待ちなさい!」

母に呼び止められ、唇に何かを塗られた。口紅……じゃない、リップグロス?

「ほら、可愛くなった。グッドラックね!」

ウインクしてリップを差し出してくる母。完全に勘違いしているけれど、唇が潤っている自分の顔は、鏡で見ても……うん、悪くない。


駅に着くと、すぐに声がした。

「福原さん!」

振り返ると、そこにはいつもと違って小洒落た格好の藤井くんがいた。ちょっとカッコいいかも…。

「藤井くん……」

あれ。前はさらっと呼び捨てにしてた気がするけど、今日は「さん」付けに戻ってる?


「藤井くん、オシャレさんだったんだね。」

昼食のファストフード店で、ポテトをつまみながら聞いてみた。

「……いや、従兄弟のお兄……いや、オネエさんに無理やり見繕ってもらったんだ。自分じゃ全然わからなくて。」

「そーなんだ。ちょっとカッコいいって思っちゃったよ。」

「そっちこそ。……今日、なんちゅうか、すごく似合ってる。」

「私も、バイト先のオネエさんに選んでもらっただけなんだけどね。」

「なんだ。ちょっと緊張して損したよ。」

「そだね。私も。」

二人で笑い合う。時間が経つのが、驚くほど早い。


そして、映画館に入った。ジュースとかポップコーンとか、率先して準備してくれる。注文する時にどうしてもキョドってしまうコミュ障の私にはありがたい。


初デート(仮)だと内容が入ってこないのが定番だと思っていたが――正直、面白すぎた。


別の世界線で描かれたあの名作。


シア様派の私としては、歴史を改竄してでも彼に活躍してほしい。前半はまさにその通りだったし、後半、主人公が女の子になっても目が離せなかった。

「出よっか」

終わって声をかけられるまで、誰と一緒に来ていたかさえ忘れていた。

私……いや「俺」は、やっぱり筋金入りのガムオタだったんだな。


「スタバでも行く?」

「あ、うん」

コーヒーショップの席に座るなり、藤井くんに「どうだった?」と聞かれ、私のリミッターが外れた。


「まずシアが出撃するシーンから凄くて! あのやらかし伍長がいない代わりにシアがフライングしてるのも役者が違う感じで良かったし、白いロボットが五倍のパワーゲインとか言ってもうドキドキしちゃって! あのプロトタイプに乗ってたの誰!? でも、シア様とは役者が違ったよね!あと、ビックサムが量産化して本当に連邦を倒しちゃうのエモすぎる! でも、ドズリ様が死んじゃってこれからどうなるの!?あ、それと シアの行方不明の続き、テレビでやるんだよね!? 楽しみすぎる! あ、それと主人公の女の子も可愛かったよね!」


一気にまくしたてて、ふと我に返る。


……。


つい、テンションが上がって、小声の高速早口オタクになってしまった。

「……あ、うん。俺は、サーラさんがどこで出てくるか楽しみかな……」

「え、藤井くんサーラさん派なんだ。匂わせあったもんね。でも私はミウイさん派だったかなー。フララちゃんも可愛くて好きだけど……」


最後はもう言葉になっていなかったかもしれないけれど、藤井くんは引かずに、ずっと笑顔で聞いてくれた。


(……やっちゃった。引いたよね。)

不安になった私に、藤井くんは優しく言った。

「いやー。福原が、こんなに楽しんでくれて良かったよ」

「……うん。面白かった。誘ってくれてありがとう。一人じゃ行かなかったな。」


家族の手前、深夜のアニメ放送は追いかけにくいけれど、続きが気になって仕方ない。

「テレビ放送、どうせ深夜だろうから、録画したのを作業場の奥の部屋で一緒に見る?」

「……え、いいの? 楽しみ!」

特に何も考えずに返事をしたけれど。作業場は良いのね、あれは共有スペースだ。

でも「奥の部屋」って、それって……。

なんか、プライベートな場所に呼ばれているような。

……いや、考えすぎだな。うん。


考えすぎ……だよね?


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