表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/24

15.脚があるんです…。あんなモノは飾りです。


『それはほぼ100%、デートと呼ばれますよ』


私が藤井くんと日曜日にランチと映画を観に行くのはデートなのかどうか。AIのジェミー君に聞いてみたら、即答された。

やっぱりデートなのか。向こうもその気なんだろうか?


念のため詳しく聞くと、「可能性は高いが、無難なコースでありお礼の意味も含まれるため断定はできない」とのこと。……なんじゃそりゃ。そこはズバリ教えてよ。


「それは、100%気があるわよ!」

結局、ついお母さんにも相談してしまった。エスパー母さんの事だから、鋭く勘ぐられちゃうけど。


「……でも、お礼だって言ってたし。映画だって私が興味あるからって……」

「ふーん。でもロボットアニメに興味があるなんて……まぁ、あなたは昔からそうだし、そこは良いのだけど。……それより瑛里。」

「……はい」

風呂上がり、色気の欠片もない中学時代のジャージ姿の私を見て、母が鋭い視線を向ける。

「どの格好で行くつもり? まさか、いつもの『コニワロ』上下で行くつもりじゃないわよね?」

コニワロ。シンプルなデザインのファストファッションだ。メンズを着ても違和感がないので愛用しているのだが、私がそう思っているだけなのだろうか。


「コニワロの何が悪いの?」

「悪くないわよ。でも、もっと……そうね、お母さんがコーディネートしてあげるわ!」

母のセンスに任せると、高確率でロリファッションになる。


幼少期、私が女の子らしい服を悉く拒否し続けたせいで、娘を着飾らせたい母の欲望が変な方向に煮詰まってしまったのだ。今でも放っておくと、フリフリのパジャマを着せられそうになるので油断できない。


「お母さんの趣味は絶対にイヤ!」

そんな格好でクラスの男子と歩くなんて、社会的な死を意味する。

納得しない母に、

「明日、プリズムの人に聞いてみるから」

と約束して、

「まぁ、プロの意見なら…。」

なんとかその場を収めた。



土曜日。

バイトで雑誌『プリズム』のスタジオへ。


そこで「明日、男の子と遊びに行く服」を相談したところ――地獄の着せ替えショーが始まってしまった。撮影も同時にこなすので、本当にしんどい。


「……あの、スカート、短すぎませんか?」

「そうかな? 瑛里ちゃん、脚きれいなんだから武器に使わないと」

「脚、ですか……?」


脚、かぁ。

あの大佐に、技術者が言い放った名セリフが脳裏をよぎる。

――あんなの飾りです。


そうだよ飾りだよ。武器になんてなるかよ、と思う半面、私も元は「見る側」の人間だった。脚というパーツが持つ、飾り以上の価値は嫌というほど理解している。


「とにかく、ズボンか、せめてもう少し長いのが……」

「えー、可愛いのに。私ならキュン死しちゃうわよ。」

相談に乗ってくれているのは、編集部の担当さん。

桜川曜一朗さんという男性だが、心は乙女。すごくお洒落で話しやすく、私を200%増しで可愛くしてくれるプロだ。サクラさんって呼ばれて、皆に親しまれている。


「あ、これくらいでいいです」

「まぁ、可愛いけどね。……それじゃあ、仕留めきれんと思うよ!」

仕留めきれんって。……少佐、武器が違います、とか言えばいいのか?


結局、膝下まであるロング丈のスカートに、白いブラウス。その上にジーンズ調のジャケットを羽織るスタイルに落ち着いた。


鏡を見ると……うん。これならいけるはずだ。

その後、アンケート集計や原稿整理といった編集作業を手伝った。前世で培ったPCスキルは、十六年前より遥かに進化した今の機材でも十分に通用する。


「瑛里ちゃん。今日は助かったわ。この服、撮影で使ったやつだけど、そのまま持って帰っていいわよ」

「えっ、いいんですか? これで母に文句言われずに済みます!」

ほっと胸をなでおろし、自前のジーパンとトレーナーに着替えたら、サクラさんに呼び止められた。


「瑛里ちゃん、いつもそんな格好なの? そりゃお母様も心配するわよ!」

「そ、そんなにダメですか?」

「服自体が悪いわけじゃないの。ほら、そのジャケットを羽織って、髪をこう上げて。靴もこれに履き替えてみて」


……あ、あれ?

いつの間にか、鏡の中に「お洒落女子」がいた。これ、私のジーパンとトレーナーだよね?


「勉強になります! 凄いです……」

「瑛里ちゃんもウチのモデルなんだから、自覚を持ってね。普段着から気をつけるのよ!」

「は、はいぃ……」


「素は良いんだからね。自信持って!」

頑張らないと、だね。


女子高生モデルのハードルは、想像以上に高い。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ