13.ボッチじゃ無くて、楽しいお昼。
待ちに待ったお昼休みまでもう少し。
どうしようかな。と思ってたらスマホに通知が届く。
『福原さん、昼飯どこで食べるん?』
『えっと、中庭。人がいなくて落ち着けるんだ』
教室棟から少し離れた、付属施設との間にある小さなスペース。私は勝手に「中庭」と呼んでいた。
『あ、でも友達とかと食べるなら、お弁当だけ渡すけど。』
『大丈夫。でも先に行ってて、あとから行く。』
ベンチに座って待っていると、少し遅れて藤井くんがやってきた。
「よっ。待たせた」
「いや、大丈夫。これ」
お弁当を差し出すと、藤井くんの顔がパッと明るくなった。目立つ容姿ではないけれど、素が良いから、笑顔になると「かわいいな」なんて思ってしまう。
「腹減っててさ、楽しみにしてたよ」
藤井くんは蓋を開けるなり、パクパクと食べ始めた。
「どう? 今日は唐揚げ入れてみたんだけど……」
「ん……めっちゃ美味い。ありがとな」
朝と同じく、会話が弾む。
彼がおじいちゃん子だったせいか、私がふと口にする「おじさんっぽい言い回し」も、彼は違和感なく受け入れてくれる。
(……元の人格からすれば、今は孫世代か。孫世代の男の子と話し込んでウキウキしちゃうのは、マズイよなぁ)
なんて、内心では、脳内のおじさんがブレーキをかけてくるけれど。
ボッチだった昨日までとは違い、この時間が、……正直、とっても楽しい。
「そういえば、藤井くんって何かゲームしてるの?」
「えっ。今は特にないかな。」
「あ、そうなんだ。『同盟』とか言ってたから、てっきりゲームのギルドか何かかと。」
「……。いや、同盟ってのは、そんなんじゃなくて……」
「ふーん。何かの遊び?」
「とにかく、あいつらには話したから……。もう大丈夫と思う。」
なんだろう。まぁ、いいか。
私は自分の分の唐揚げを口にする。冷めていてもサクッとした歯応え。我ながら完璧だ。
「唐揚げ、口に合うといいけど。」
「うん。めっちゃ美味い。」
「卵焼きは?」
「めっちゃ美味い。」
「野菜炒めは?」
「めっちゃ美味い。」
「……『む』」
「……え、む? なんだよそれ」
「いや。藤井くんが『めっちゃ美味い』しか言わないから、他には言えないのかなと思って」
顔を見合わせて、二人で笑った。
ーーーーーーーーーー
――いやー。お弁当、マジで最高に美味かった。
卵焼きがなんだか懐かしい味がして、すごく好きだ。
こんなお弁当を毎日食べられたら幸せなんだけどな……。
中庭に来る前、同盟の奴らと話をつけた。
「俺ら同盟の許可なく、話すんじゃねぇ!」
「抜け駆けは許さないって、決めただろ!」
「お前、白川優香推しなんだろ!」
成り行きで話すようになっただけだと説明しても、納得しない。
「とにかく福原とは、そんなんじゃないから安心しろ!」
そう吐き捨てて立ち去ろうとしたら、奴らは「交渉」を求めてきた。
瑛里の好きなタイプや趣味など、情報の提供に協力しろ、と。
「まぁ、それくらいなら……」と言いかけたところで、「よし、交渉成立だ! お前も立派な同盟員だ!」と勝手に話をまとめられた。
「……それは嫌だな。」
同盟員になるのだけは、キッパリお断りしたけれど。
なんか面倒くさいなと思ったんだけど…。
お弁当が美味しくて、彼女との会話が楽しくて、笑顔が眩しくて。
もう、なんでも良くなった。
「明日は、……どうする?」
昼休みが終わる間際、なんか戸惑いながら聞いてきたけど、そんなの1択じゃないか。
「明日もって、いいの?」
「うん。楽しみにしてて」
彼女は弾けるような笑顔を見せてくれた。
同盟には入らない。あいつらが消えてくれればいいのに。
これは一体どういう感情なんだろう。
お礼に、プラモの作り方は、何でも教える。そう決めた。




