表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
116/116

116.活発系美少女とファンタジスタ


「まずは素組みが終わったね」

「うん。やっぱりこの機体、カッコいいよ」


アトリエの作業机には、二体のヤブト・ドーガが並んでいる。


ニュータイプの少女・キュエス専用機と、強化人間の青年・ギュエイ専用機。


より狩人らしい色やデザインをしているギュエイ機のほうが好みだけれど。でも、ピンク主体ながら力強いキュエス機も良い。


でも、これをこのまま出すわけにはいかない。

塗装は、ギュエイ機は瑛祐くんカラーの青で、キュエス機は私のカラーの赤を主体にする予定だ。


けれど、単なる「青い巨星」と「赤い彗星」の共演では、あまりにありがちかなぁ。シア専用機ならザザビー使えってなるし⋯。


「ここから、コンテスト用にできることをやっていくよ」


瑛祐くんが優しく教えてくれるけれど、これは共同製作。私の「色」も出さないとダメだ。


でも、本格的な改造や部品製作は初めて。


一体どう仕上げればいいのか。それこそ瑛祐くんに任せきりでは、一緒に応募する意味がない……。


女子の感性とやらを発揮したいけれど、それが何なのか、今の私にはまだ難しい。


  *


ゴールデンウィークが明け、プラモ作りは完全に行き詰まっていた。


そんな時、美佳――西野美佳さんにサッカー部の応援に誘われた。


活発で元気な美少女。一年の春にボッチだった私にも声をかけてくれていた大恩人。

借りは返す主義だよ。精一杯応援させてもらおう。


美佳はめちゃくちゃ可愛いから、声をかけられるたび「惚れてまうやろ〜」と心の声が煩かったのは、今となってはいい思い出だ。


「優香はラグビー部、ゆかりは剣道部に行っちゃったから。瑛里、ウチの部員のモチベーションを上げて欲しいのよ」


美佳が笑顔で言う。可愛い子に応援されてやる気が出る男心は、元おじさんの私には痛いほど分かるけれど。


「私でいいの? ……美佳がいれば十分じゃない?」

「私はマネージャーだし、タケちゃん(久野くん)がいるからさ。……あ、だから藤井オマケはいらないよ」


彼氏が隣にいると邪魔らしい。まあ、瑛祐くんがいるとイチャつかない自信はないので、仕方ないか。

美佳、可愛い顔してズバッと言うなぁ。


  *


「あの、……応援してます。ガンバってください」

美佳に押し出されるようにして、サッカー部員の円陣に加わった私。


精一杯大きな声を出したつもりだったけれど、絞り出した声は消え入りそうで……。

けれど、北高サッカー部員の反応は予想外だった。


「うぉぉー……! めっちゃ可愛い! やる気出た!」

「氷の令嬢の微笑み……! これだけでフル出場いけます!」

「それを言うなら沈黙の魔女の美声だろ……初めて聞いた。よし、シュート全止めできる気がするぜ!」


氷の令嬢? 沈黙の魔女?

確かにコミュ障の自覚はあるけれど、なんだその二つ名は。

でも、サッカー部のイケメン達にちやほやされて悪い気はしない⋯。


「ありがとね、瑛里」

美佳が、お礼を言ってくれた。

「ううん。でも、こんなんで良かったのかな……」


「おう。みんな福原のファンだからよ。これで戦えるな」

エースの久野くんが不敵に笑う。彼はプロからも注目される逸材だ。


けれどサッカーはチーム戦。強豪校との対戦を前に、部員全員の心に火をつけたかったらしい。

試合が始まると、北高イレブンは別人のような動きを見せた。


「全止め」を宣言した先輩は、至近距離の弾道を何度も弾き出し、「フルで走れる」と言った一年生は、文字通り縦横無尽にピッチを駆け回っている。


後半、疲れが見えた彼らに「……頑張れー!」と声を張ると、魔法にかかったようにまた足が動き出す。


凄い。……みんな、あんなに必死に頑張っている。

私も、煮詰まっているなんて言っている場合じゃない。


そして、真の衝撃はロスタイムに訪れた。

2-2の同点。ボールを持った久野くんがペナルティエリア付近で放ったキックは、ふわりと高く浮き、誰もがミスキックだと思った。


そのままエンドラインを割る……。


そう思った瞬間、ライン際で落ちたボールが、強烈なバックスピンでゴール方向へ跳ね返った。

そこへ飛び込んだのは、久野君の足。ボールがゴールに吸い込まれ、網を揺らす。



「あの場面で、ゴールまでのイメージはできていた。あとはイメージ通りに身体を動かすだけでした」

試合後のインタビューで、久野くんはさらりと言ってのけた。


……凄すぎる。これがファンタジスタか。これからは彼を『北高のロベルト・バッジョ』と呼ぼう。



それにしても、イメージか⋯。

ゴールへの、明確なイメージ。


私も、プラモの「完成形」を、その物語を、もっと鮮明にイメージすることから始めればいいんだ。

設計図や技術の前に、どんな「一瞬」を切り取りたいのか。


それが見えれば、自ずとゴールへの道筋が見えてくるはず。



僕らの世代のファンタジスタは、バッジョだよ。

マラドーナとかジーコとかオランダトリオも凄かったけど、ファンタジスタって言えば彼一択!


マラドーナは別格だったけどね⋯。


エリの推しはピクシーことストイコビッチかな⋯。

カッコいいよね。日本にも来てくれたし。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ