プロローグ
放課後、学校の帰り道、小雨の中いつものように友人たちと談笑しながら歩いていた。
それでもやっぱり頭からは元彼女のことが離れない。
つい先日振られて傷心中だってのに、もう彼女は成績優秀、運動抜群のどこの恋愛漫画の野郎かもわからないようなクラスメイトにご執心みたいで朝からずっとイチャイチャを見せられて気分が悪い。
「こんな救いようのない俺って、何なんだ…」
絶望に包まれながらそう呟き、雨も止み、友人たちとも別れたためヤケクソでコンビニへ向かうことにした。
気が紛れるかもしれないと思ったのだが、ふとした瞬間にまた考え込んでしまい、
周囲の景色がぼんやりとし始めた、涙はまだ止まらないらしい。
そんな時、突然、トラックのクラクションが響く。
「えっ…?」
次の瞬間、意識が途切れる。何も見えず、何も感じず、ただ暗闇の中に落ちていく感覚だけがあった。
あぁ、死ぬのか。
もっと何かできただろうな。
死ぬ前に戻りたい。
いやまてよ、戻れるならできれば中三、いや小学一年ぐらいまで
人生やりなおしたいな…
気がつくと、俺は白い光に包まれた場所に横たわっていた。
「…知らない天井だ。」
目の前には、長髪の中年男性がいた。
「おっさん…誰?」
「おっさ…私は女神じゃ。」
驚きと混乱が入り混じり、俺はその男の言葉に耳を傾ける。
「お前、運が悪かったな。でも、これからの人生は変えられるぞ」
「ってことは死んだってこと?」
ここに来る前の記憶はトラックが突っ込んできたとこまでしかない。
まぁ、そういうことだろうな。
「まぁ、そうじゃな。にしても呑み込みが早いの。最近人間界のはやりの”いせかいてんせぃ”とやらのおかげかの…」
「てことは、ここが天国ってこと?」
天国と思われるここは、思い描いていた天国よりも殺風景で…
天界も経済難なのかもしれないな…とすこししんみりした気持ちになった。
「天界はこういうもんじゃ、経済難どころか経済すらないわい」
どうやら心が読めるらしい。
しゃべる必要が無くて楽だから頭の中で考えればいい気がしてきた。
殺風景なところを許せるぐらいには良い事だ。
「いやいや…楽しないでよ。」
それでこれからの人生ってどういうことなんです?
「聞いてないし…まぁええわ。これからの人生というのはじゃな」
ごくり
「お前さん、キャンプが好きなんじゃろ?」
いや、大好きっすね。
「キャンプが大好きなんじゃろ?」
はい
「転生させて難なくのんびり暮らせるほどの能力をやるから”きゃんぷめし”を私にお供えしてくれ!」
…???
「昔、この天界に間違いできたものがいての…そいつにきゃんぷめしとやらをごちそうしてもらってから虜になってしまっての…あの”しーふーどがーりっくりぞっと”とやらの味が忘れられなくて、いまだに思い出すわい。あの芳醇な味わいと、香ばしい…」
どうやら本当にキャンプ飯が大好きらしい。
シーフードガーリックリゾット、懐かしいな。
「ということでお前さんには転生してもらう。きゃんぷめしの未来は頼んだぞ」
「わかりました。」
まぁ、キャンプ好きだしいいか。という軽い気持ちでオーケーしてしまった。
”異世界でのんびりキャンプ生活”…か。案外悪くないな
「それじゃあ、お前さんにはこれらの能力をやろう、ひとつめの能力は…」
一通り能力の説明と、必要な”道具”を貰い、俺は第二の人生が始まった。