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56. 夢の終わり① 〜ミリカside

 長い夢を見ていた。

 あれは、前世の記憶。

 ああ、私はどうして死ななきゃならなかったの?

 私が不幸になるなんておかしいのに。

 だって私は───〝ヒロイン〟だもの。



 ミリカが目を覚ますと、見慣れぬ寝台の上だった。

 まだ完全に起きない頭で、昨日のことを思い返してみる。


(昨日は………そう、卒業パーティーの次の日)


 卒業パーティーでの断罪劇の後、王宮の一室でユリアンナの処罰が話し合われ、国王が公開処刑を決めた。

 それを見届けて、ミリカは王宮の客室で休ませてもらったのだった。


 次の日、様子を見に来てくれたアレックスにユリアンナと話したいとお願いした。


「お願いします、ユリアンナ様とお話しさせてください」


「ユリアンナと……?しかし、それはミリカ嬢が嫌な思いをするのでは?」


「いえ……ユリアンナ様がどうしてそんなに私を嫌うのか、どうしてそんなことをしてしまったのか、聞いてみたいのです。お願いします、アレックス様」


「それでは、僕が付き添おう」


「……2人きりでお話ししたいのです。アレックス様がいらっしゃると、本音が聞けないかもしれないので」


「………不本意だが……許可しよう。あとで案内させる」


 ミリカはユリアンナが処刑になる前に、どうしても2人で話がしたかった。

 アレックスを上手く言いくるめると、しばらく時間が経ってから、ジャックが迎えにきた。


「ミリカ……ユリアンナ嬢と2人で話すって、本当か?」


「はい、ジャック様。……これは私の中で区切りをつけるために必要なことなんです」


「分かった……だが、何かあればすぐ叫べよ。上で待機しているから」


「ありがとうございます!」


 ジャックと別れ、地下牢へ続く階段を降りる。

 普段公爵邸で豪勢な暮らしを送っているユリアンナが、どれだけ惨めな姿をしているだろうか?

 期待に高鳴る胸を抑えつつ階段をゆっくり降りる。


 遂に地下牢に到着しユリアンナと対面すると、意外にもユリアンナは小綺麗なまま地下牢の床に座っていた。

 もっと騎士に手荒に扱われて薄汚れていると思ったのに。

 しかし、鉄格子の向こうにいるユリアンナを見るのは気分がいい。

 ミリカは上機嫌でユリアンナに声をかけた。


「やっほ~ユリアンナ♪……あら?意外と元気そうね」


 その後、ミリカはユリアンナが公開処刑になったことを告げ、〝お人好し〟のユリアンナを嘲笑った。

 しかしどれだけ罵倒しても、ユリアンナはポッキリ折れずに凛としている。

 そして、言われたくないあの言葉を呟いた。


「………サイコパス」


「……ああ。最初からユリアンナのこと好きになれなかったのは、()()()に似ているからだわ!あの、綺麗事ばかりのつまらない女………!」


 ちょっとばかし美しくて、高潔で、どんな目に遭ってもけして折れない………桃奈が大嫌いな鈴木葵のようだ。

 不運にも前世では決着がつけられなかったが、今世ではミリカの勝ちだ。

 だってユリアンナは惨めにも公開処刑されてしまうのだから。


「あ、そうか!アンタ神様に嫌われてるから、きっと次の人生も碌なもんじゃないよね~!!」


 最後まで徹底的にユリアンナを踏み躙ってやった。

 ミリカの完全勝利だ。


 ………そう思ったのに。


 その後地下牢に姿を現した人たちによって、状況は逆転されてしまった。

 全てを聞かれてしまったのだ。

 必死で取り繕おうとしたが、無駄だった。

 そしてミリカは、貴族牢へと連行されたのだった。


(ああ………ここは貴族牢だったわね)


 寝台の上で体を起こし、室内を見回す。

 牢は牢でも貴族牢だからか、学園寮の私室と変わらないぐらいの内装だ。

 クローゼットを開けると、着替え用のデイドレスがいくつかかかっている。

 一人で着替えができる、地味なものだ。


 ミリカはそのうちの青色のデイドレスを手に取り、着替える。

 着替えが終わるとすぐに食事が運ばれてきて、それを口にする。

 食事が終わるとすることがなくなり、ベッドに寝転んだままぼんやりと今後のことを考える。


「アレックスは結局攻略できなかった……」


 アレックスからは「君を妃にするつもりはない」とはっきり言われている。


「ジャックかサイラスかアーベルの誰かが結婚してくれれば良いけど」


 その3人であれば家柄が申し分ない。

 王子妃になるために必死で勉強したのも無駄にならないだろう。


「最悪、ルキエルに攫ってもらうのもいいかも」


 ルキエルは暗殺者だが、暗殺者はどこでも重宝されるから食い扶持には困らないだろう。

 勉強したことが活かせないのは残念だが、ルキエルに囲われれば何不自由なく暮らして行けるに違いない。


 そんなことをぼんやりと考えていると、貴族牢の扉が開く。

 もうお昼だろうか?

 いつの間にか結構時間が経っていたみたいだ。


 ミリカは再び体を起こし、鉄格子の向こうの入り口を見て、絶句する。

 貴族牢に入ってきたのは、旅人のような外套を着たユリアンナだった。




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