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4. 思いついた作戦

 情報を整理してみると、ユリアンナは既に家族や周囲の人から疎まれていて、他の貴族家からの評判も最悪。

 学園入学までのたった1年でその評価を180度ひっくり返すのはまず無理だろう。


 ならば学園でミリカを虐めなければ良いのではないか?

 評価が変わることはなくても、断罪されることはなくなるかもしれない。


 ………だけど怖いのは。


 もし()()()()()()()()だったら?


 ゲームでは、攻略対象者の好感度を上げるためにユリアンナからの嫌がらせは大きな役割を果たしている。

 ユリアンナイベントは失敗すれば好感度を大きく下げるが、成功すれば大きく好感度が上がるのだ。

 もしヒロインが逆ハー狙いなら3年間で全員の好感度を上げる必要があるため、必ずユリアンナの妨害が必要になる。


 前世で流行った転生ものの小説なんかでは、転生ヒロインが嘘をついたり、自演したりして悪役令嬢を犯人に仕立てるのが常套手段だ。

 小説の中ではそれを逆に利用して悪役令嬢がヒロインにザマァしたりするのだけど、ユリアンナの場合そう簡単にいかないだろうと容易に想像できる。


 なぜならば………ユリアンナの評判が悪すぎるからだ。


 可憐なヒロインが「ユリアンナ様に虐められました」とウルウル瞳で訴えれば、たとえそれが嘘だとしても万人が信じるに違いない。

 味方ゼロのユリアンナがザマァできる可能性は万が一にもない。


 それならば学園に通わないなど陥れられるのを物理的に避ける方法もあるが、それをあの父が許すとは思えない。


(やっぱり断罪は免れないのかしらね)


 断罪は行われる前提で対応を考えた方が良さそうだ。


(ギロチン処刑よりは、国外追放の方が断然マシよね……)


 ユリアンナが断罪されれば、家族が助けてくれることは100%ないだろう。

 ギロチン処刑されればそこで人生は終わりだが、国外追放ならばまだ幸せになれる可能性は残る。

 前世の記憶が蘇った今なら、ユリアンナは一人で市井に放り出されても生活する能力がある。

 家事も仕事も人一倍できる自信がある。


 ゲームのユリアンナは兄と比べられたトラウマで大の勉強嫌いだが、琴子は勉強嫌いではない。

 むしろ高校で学費免除を叶えるために一生懸命勉強して、高校入学後にも高い成績をキープしていた。

 学園に入ったら特に外国語をたくさん勉強して、国外追放になっても困らないように準備しよう。


 そこまで考えて、ふと重要なことに気がつく。

 もしヒロインが第二王子を攻略するルートを選べば、ユリアンナの行先はギロチンである。

 ユリアンナの信頼度がマイナスな以上、ユリアンナの命運はヒロインが握っているというわけだ。


 不明瞭な自分の未来をより確実にするために、ユリアンナは妙案を思い付く。


(………ヒロインと取引できないかしら?)


 もしヒロインが転生者なら、ユリアンナも転生者だと明かせば同情してもらえるかもしれない。

 ヒロインが幸せになるために国外追放はやむを得ないにしても、最悪ギロチンは回避できるようお願いできないだろうか?


 ───むしろ、積極的にヒロインに協力するのはどうだろう?


 いくら攻略のためとはいえ、ヒロインもバレるリスクを抱えながら嘘をつくのは嫌だろう。

 その点、ユリアンナが協力者ならば実際に嫌な思いをすることなく嫌がらせを受けたことになり、攻略対象者の好感度を上げることができる。

 ヒロインにとってはメリットしかないではないか。


 断罪から逃れられそうにないユリアンナにとって、ヒロインに協力する代わりにギロチンは回避してもらう案が一番現実的に思えた。

 そうと決まれば、あとは国外追放された後のことだけを考えれば良い。


 前世の記憶があるため生活には困らないだろうが、ユリアンナには市井に出るにあたって最も心配なことがあった。

 それは、ユリアンナの美貌である。

 ユリアンナはその性格の苛烈さや傲慢さが目立ちすぎて忘れられているが、類稀なる美貌の持ち主なのだ。


 そんなユリアンナが一人で街に出れば、あっという間に攫われて売られて、奴隷にされたり娼婦にされたりするのがオチだろう。

 それを回避するためにはユリアンナ自身に自己防衛する力がなければならない。


 自分を守るためには、単純に考えて剣か魔法の腕を磨く必要がある。

 それから、まともに労働できるだけの体力をつけた方がいいだろう。

 いくら頭には前世の知識があっても、体はカトラリーより重いものを持ったことのない生粋の貴族令嬢なのだから。


 しかし剣にしても魔法にしても、一人で腕を磨くのは不可能に近い。

 誰か協力者が必要だ。


 ………この嫌われ者(ユリアンナ)に協力してくれる人なんているのだろうか?


 ユリアンナはゲームの内容を思い出しながら考えを巡らせた。




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