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幕間 ユリアンナとミリカ

※ここからは閑話を4話挟み、物語はクライマックスに進みます。

早く続きを読みたい!という方には申し訳ありませんが、暫しお付き合いくださいませ。

「そっかー。それじゃあ、ユリアンナは前世も今世も家族に恵まれなかったんだね」


 最近王都で人気のカフェのテラス席に、ユリアンナとミリカは向かい合って座っている。

 学園の授業が終わり、計画についての話し合いがてら話題のスイーツを食べに行こうと2人でやってきたのだ。

 もちろん2人が仲が良いと思われてはいけないから、〝認識阻害〟魔法をかけている。


「そう。まあ、前世の経験のおかげで今世で家族に疎まれても何とも思わないのかもしれないけど」


 ユリアンナは自分の台詞が思ったより自虐的に聞こえてしまったことに、ふっと自嘲する。


「そうだよね~。私も前世はあんまり幸せな環境じゃなかったから、今世の幸せな環境を絶対大事にしたいの!」


 ミリカもユリアンナに同調するようにウンウンと頷きながら、このカフェの人気メニューであるカカオを使ったケーキを頬張っている。


「そう言えば、ユリアンナは前世はいくつで死んじゃったの?」


「私は22歳だよ。ミリカは?」


「私は19!あ~、じゃあユリアンナの方がお姉ちゃんじゃん!私、お姉ちゃんいたことないから何か嬉しい」


 ニコリと笑うミリカに、ユリアンナも微笑みを返す。


「私も妹は初めてだわ。でも、妹と同級生ってのも何か可笑しいよね」


「本当に!しかも異世界転生なんてあり得ね~って!」


 ケラケラと笑うミリカは底抜けに明るい。

 きっと前世でも友達がたくさんいたんじゃないかと思うが、ミリカ曰くあまり幸せではなかったらしい。


「それで~?彼氏はいたの?」


「彼氏……だと思ってた人はいたかな」


「何それ?どゆこと?」


「相手が既婚者だったの。私、知らないうちに不倫させられてたみたい」


 ユリアンナがそう言うと、ミリカは悲しげに眉尻を下げる。


「え~……何それ、酷い」


「ほんと、最低な男だった」


「………好きだったの?」


「んー、付き合ってた時はね。今は大嫌いだよ」


 琴子は城之内を確かに愛していたが、不倫だと分かった時点でその愛情は消滅し、残ったのは嫌悪感だけだった。

 何だかしんみりしてしまった雰囲気を立て直すように、ユリアンナは明るい口調で話題を変える。


「ミリカはどうなの?明るいし、モテそうだよね」


 ユリアンナがそう聞くと、ミリカは少し照れたように頰を染める。


「え~?……モテるってほどじゃないけど。あ!でも私、高校で一番カッコいい人と付き合ってたの!サッカー部で、頭も良くて、背が高くてイケメンで!!それで同じ大学行こうねって言って、勉強めっちゃ頑張って、折角同じ大学に入れたのに………」


 そこまで語ってミリカは次第に元気をなくして俯いてしまった。

 明るい未来を失ってしまったことを思い出して辛くなってしまったのだろう。


「……すごいね、ミリカは。努力家なんだね」


 ユリアンナの言葉を聞いて、ミリカは目を潤ませながら顔を上げる。


「ミリカの努力は今世できっと報われるから大丈夫」


「………ユリアンナって、すごく優しいよね。どうして悪役令嬢なんかに転生したんだろ」


「優しい……のかな?」


 ユリアンナは『優しい』という言葉に違和感を抱く。

 本当に優しければ、もっと違う言葉をミリカにかけるのではないか?

 ミリカの境遇に同情し、涙を流すぐらいのことをするのではないか?


(私の場合は『優しい』のではなくて……『無関心』なのだわ)


 人間はどこまで行っても自分の物差しでしか測れない。

 経験のないことは想像することすら難しいのだ。

 だから、人から大切にされた経験が乏しいユリアンナには『優しい』という感覚がよく分からない。


「『優しい』じゃなければ……『お人好し』?とにかく、欲がないよね」


「そう?私は『国外で平民として暮らしたい』っていう自分の欲のことしか考えてないよ」


「本当にそれがユリアンナの望みなの?折角乙女ゲームの世界なんだよ?イケメン揃いなのに、恋愛もしないなんて!」


 確かにユリアンナも前世で《イケパー》をプレイしていたぐらいだから、恋愛には興味がないわけではない。

 しかし城之内の裏切りで深く傷ついた経験から、恋愛とはしばらく遠ざかりたいという気持ちがあった。


 それに何より、この世界はユリアンナを殺す世界なのだ。

 いずれユリアンナを追い詰めていく攻略対象者と恋愛したいなどと思えるはずもない。


「恋愛したくないわけじゃないよ。相手が攻略対象者である必要がないだけ。国外に出たら、相手を探すわ」


 その返答に、ミリカは納得したような、でも納得いかないような表情で「ふ~ん」と答えた。




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