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2. 考えるユリアンナ①

(まずはゲームの内容をよく思い出してみよう)


 この世界が舞台の恋愛ゲーム『ドキドキ♡イケメンパーティー!』の内容は至ってシンプルで、主人公の男爵令嬢ミリカ・ローウェン(アプリ上では好きに名前が変更できた)が、名門ゴールドローズ学園に入学して様々なイケメン令息と出会い、恋愛をしながら楽しく学園生活を送るというもの。


 ゲームの始めに誰の攻略ルートを進めるかを選び、その人の攻略を終えるまでは他のルートは選べない。

 ただし主要攻略対象者5名のストーリーをハッピーエンドでクリアすると《逆ハールート》が解放され、全ての攻略対象者を同時に攻略できるモードが選べるようになる。


 ただし《逆ハールート》は学園の3年間で全員の好感度を上げなければならないため、全員を攻略するのはかなり難度が高い。

 イベントをひとつでも落とすと途端に好感度が足りなくなり、攻略が叶わなくなる。

 5人のうち一人でも攻略すればバッドエンドにはならず、2人だけに愛されるエンドや3人だけに愛されるエンドも存在するものの、《イケパー》ユーザー垂涎の逆ハーエンドスチルは全員を攻略しなければ拝めないのである。


 その他、課金すれば少しエッチなストーリーが読めたり、シーズンイベントごとに新たな攻略対象者が登場して新たな《逆ハールート》に挑めたりと、基本無料のスマホアプリにしてはなかなか運営が頑張っており、リリース以来ストアの人気ゲームに常にランクインしていたタイトルだ。


 ゲームの仕様は、会話や状況に合わせて4つの選択肢の中から1つを選び、それより攻略対象者の好感度が上がったり下がったりする。

 最終イベントの卒業パーティーまでに好感度を9割以上まで上げられなければ、バッドエンドでまたストーリーを一からやり直しとなる。


 それだけならば何回かやれば簡単にストーリーをクリアできてしまうが、この《イケパー》の面白いところは、悪役令嬢ユリアンナ・シルベスカの存在である。


 ユリアンナ・シルベスカはそれはそれは傲慢で我儘な令嬢で、その傍若無人な振る舞いに周囲も辟易していたが、なまじ公爵家という高い身分のために誰もユリアンナを咎めることができなかった。

 勉強が大嫌いで成績が悪いにも関わらずユリアンナがゴールドローズ学園に入学できたのは、ひとえに「王子妃が学園に行かないのは外聞が悪い」という理由でシルベスカ公爵が金と権力にものを言わせた結果である。


 ユリアンナは自分がゴールドローズ学園で、まるでアイドルのようにチヤホヤされると思っていた。

 しかし蓋を開けてみれば、実際にチヤホヤされたのはしがない男爵令嬢。

 ユリアンナは第二王子の婚約者だからというだけでなく、ただ単に「ミリカが自分よりチヤホヤされるのが気に食わない」ために、ヒロインにありとあらゆる嫌がらせをする。


 そしてゲームの中では、ヒロインは攻略対象者の好感度を上げるとともに、ユリアンナからの嫌がらせを華麗に立ち向かっていかなければハッピーエンドに辿り着けないというわけである。

 もしユリアンナの嫌がらせに上手く対応できなければどうなるかというと、何故か攻略対象者の好感度がガッツリ減る。

 それはもう、直近2~3時間ほどのプレイ分が無駄になるほどの。

 課金アイテムがあればユリアンナの攻撃を躱しやすくなったりするので、その辺は運営も上手く商売やってるな~と思ったものだけど。


 あの手この手を使ってヒロインに嫌がらせをしたユリアンナはハッピーエンド後にどうなるかというと、端的に言えば断罪される。しかも、どのルートでも。

 断罪の内容はルートによって異なるが、ヒロインが第二王子ルートか逆ハールートを選んだ場合のみ、ギロチンで処刑される。


 ………ふわふわ乙女ゲーにギロチン処刑ってどうなの?って感じだが。

 ヒロインに嫉妬して嫌がらせをするユリアンナだが、第二王子が攻略対象となる場合にだけヒロインを殺害しようとしてしまう。

 おバカなユリアンナだが、流石に婚約者を狙われては自分の立場が危ういと焦ったらしい。


 この国では貴族の殺害、および殺害を企てることは重罪で、公爵令嬢のユリアンナであっても例外ではない。

 そこでユリアンナが品行方正な淑女であれば公爵も必死で助けたかもしれないが、家族からも疎まれていたユリアンナはあっさり見捨てられた。

 そしてその悪行が庶民にも広まっていたため、ユリアンナは王城前の広場で公開処刑されてしまうのである。


 ちなみに他のルートでは、ユリアンナは国外追放となる。

 ヒロインの殺害計画ほどの重罪は犯さないが、卒業パーティーで数々の悪行が暴露され、堪忍袋の尾が切れたシルベスカ公爵によって国外に追いやられることになる。


 すでに家族との関係は支援が見込めないほど悪化している。

 ユリアンナは物憂げな表情で今日16度目の溜息を漏らした。




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