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18. ゲーム序盤の大イベント

 教科書が破られ、持ち物が壊され、私物を入れるロッカーが荒らされる。

 次第にミリカへの嫌がらせはエスカレートしていき、ついにアレックスたち攻略対象者の耳に入るほどになった。


 もちろん、その多くがユリアンナの差金である。

 ユリアンナの登場前にミリカに嫌がらせをしていた女子生徒たちに目を付けて、ユリアンナが指図して数々の嫌がらせを実行させた。


 ユリアンナとしては実行役をこの茶番に巻き込むことに多少の罪悪感はあるが、元々ユリアンナがいなくてもミリカに嫌がらせをしていた連中である。

 もし発覚してもユリアンナのせいにできるのだから、単独での犯行よりも罪は軽くなるだろう。


 ミリカへの嫌がらせが露見してから、アレックスたち攻略対象者は以前にも増してミリカを気にかけるようになり、だんだんと仲が深まっていく。


 サイラスはミリカの破られた教科書や汚された制服を見て不憫に思い、学園の事務課に掛け合ってミリカの負担にならないよう無償で新しいものと交換した。

 まだゲームの序盤なので、恐らく好感というよりは同情心の方が強いのだろう。

 いつも冷静なので冷たく見られがちなサイラスだが、実は心根の優しい青年なのだ。


 ジャックは複数の女子生徒に囲まれて叩かれそうになっていたミリカを助けたり、鞄の中身がぶち撒けられていたのを一緒に拾ってあげたりした。

 ジャックの場合は初めからミリカに好感を抱いているため、その眼差しは常に優しく熱を帯びている。

 このまま順調にイベントをこなしていれば、それが愛に変わるのもすぐだろう。

 

 ちなみに、ゲームでは魔法学の実習授業でクラスメイトが事故と見せかけてミリカに攻撃魔法を仕掛け、オズワルドが助けてくれるというイベントがあるのだが、今のミリカはオズワルドを攻略していないのでそのイベントは割愛された。


 そして季節は冬を迎え、アレックスルート序盤のメインイベントである『初冬の大夜会』が近づいてきた。

 このイビアータ王国では、夏季から秋季にかけ領地に戻ったり旅行に行ったりして王都から離れる貴族が多い。

 そして貴族たちが王都に集まりだす冬の入り口の時期、つまり社交シーズンの始まりを告げる風物詩として、王宮主催の大規模な夜会が開催される。

 それが『初冬の大夜会』である。


 王都にタウンハウスを持っている貴族はほとんどが参加するが、中にはこの夜会に出たいがために寄親や親戚を頼ってわざわざ田舎から王都に出てくる地方貴族もいる。

 特に王都の学園に通う貴族子女は婚約者を探したり人脈を作るために必ず参加し、入学したての1年生はこの夜会でデビュタントを行うのが通例だ。


 王宮主催なので王族は全員参加、もちろん第二王子アレックスの婚約者であるユリアンナもアレックスのパートナーとして参加することになる。


 ゲームでは、ヒロインのミリカがこの大夜会でのデビュタントのために田舎の領地から持ってきた一張羅のドレスを、ユリアンナの差金で寮に忍び込んだ女子生徒からズタズタに引き裂かれる。


 いくら嫌がらせをされても決して涙を見せなかったミリカが初めて涙を流したのが、この時である。

 自分が嫌がらせを受けることより、母の想いが詰まったドレスを引き裂かれたことに心を痛めたのだ。


 涙を流すミリカと出くわしたアレックスは、ミリカの話を聞いて憤ると同時に、何とか元気付けてやりたいと思う。

 そして、アレックスはミリカに大夜会用のドレスをプレゼントすることにする。

 アレックスは今まで一度もユリアンナにドレスを贈ったことはなく、女性にドレスを贈るのは初めてのことであった。





 初冬の大夜会当日。

 ユリアンナは公爵邸にて、自分で仕立てたアレックスの瞳と同じ色のマリンブルーのドレスに身を包む。

 学園に登校する時はあまり着飾っていないが、今夜は〝悪役令嬢〟らしく濃い目のメイクにギラギラと高価な宝石をたくさん身に付けた。


 ミリカからの報告によると、ミリカは順調にアレックスのイベントをこなし、アレックスから青いドレスを贈ってもらったらしい。

 〝ヒロイン〟は王子様から贈ってもらったドレスを、〝悪役令嬢〟は自分で用意した王子様色のドレスを来て大夜会に臨むこととなる。




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