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16. 攻略は順調のようです

 ゴールドローズ学園に入学してから約半年、ユリアンナは入学前と同じように身体を鍛えながらオズワルドに魔法を習い、市井で暮らす準備を整えていた。


 同時にこの世界のことについても本などで学び、国外追放後は〝冒険者〟として身を立てることに決めた。

 〝冒険者〟とはお金を稼ぐ目的でフリーで活動する魔術師や剣士の総称で、魔獣の討伐や戦争などに、報酬と引き換えに参加することを生業としている。


 それだけ聞くと危険で旨みのない仕事のように思えるが、活動の仕方によってはめちゃくちゃ稼げるのだ。

 そもそもが危険な場所が仕事場なので報酬の相場が高い上に、任務で得た魔獣素材や魔石、薬草などの希少素材を持ち帰って売れば更に稼ぐことができる。


 ソロで活動する者もいれば、複数人でパーティーを組む者たちもいる。

 〝冒険者〟は全て『冒険者ギルド』を通して依頼や報酬の受け渡しを行う。

 しかし有名な冒険者になれば宿屋や商店で特別な待遇が受けられたり、物凄い功績を上げてどこかの国で叙爵されたなんて話もあるほどだ。


 とりあえず数年は冒険者で稼いで、その後は稼いだお金でどこかの土地で悠々自適に暮らそうかな、などとユリアンナは考えている。




 学園に入学してから、ユリアンナは貴族界に広がった噂のために腫れ物に触るような扱いを受けた。

 ユリアンナも他の貴族と親しくしたいなどとは思っておらず、誰も寄ってこないならそれはそれで都合が良いと思っていた。


 前世の琴子の人格が支配している今のユリアンナは、恐ろしくお人好しだ。

 少なくとも、踏切内に取り残された老婆を助けようとするくらいには。

 なので、今のユリアンナと交流すれば噂の悪女と違うということがバレてしまう可能性がある。


 そしてそれは、これからミリカに嫌がらせをしようとするユリアンナにとっては障害になる。

 ヒロインのミリカは善者で、悪役令嬢のユリアンナは徹底的に悪者でなければならない。


 ユリアンナが着々と国を出る準備を進める一方で、ミリカも着々と攻略対象の好感度を上げているようだ。

 ミリカが今のところ狙っている攻略対象者はオズワルドを除く4名。

 つまり、4名の《逆ハールート》を狙っているというわけである。


 なぜ攻略対象者からオズワルドが省かれたかというと、オズワルドとの出会いイベントになぜかオズワルドが現れなかったらしい。

 それからミリカは何度かオズワルドに接触を試みたが、ついぞ交流を持つことは叶わなかったとか。


(それはやはり……私がオズワルドと関わってしまったからよね)


 ユリアンナがオズワルドにゲームの話をしてしまったため、オズワルドは意図的にミリカを避けているのだろう。

 オズワルド自身にその真意を敢えて聞いたことはないが、他の令息も狙っていると分かっている女性と恋愛する気はないということなのかもしれない。


 それは少なからずユリアンナの心にゲームのシナリオを変えてしまった罪悪感として残ったが、当のミリカは案外あっさりしたもので。


「せっかく逆ハー目指すなら全員コンプしたかったのは本音だけど、正直言ってオズワルドはあんま好みじゃないのよね?ほら、私たちって前世日本人じゃない?黒髪黒眼なんて珍しくも何ともないもんね~。せっかく異世界に来たんだから、2次元風イケメンと恋愛したいじゃん!……それに、オズワルドルートってクッソつまんないのよ。基本的に裏庭で2人で話してるだけなんだもん。だから、オズワルドは別に攻略しなくても良いかなって」


 ミリカはユリアンナにそう語った。

 それで、ユリアンナの罪悪感は幾分薄れた。


 というのも、ユリアンナとミリカはこの半年の間で頻繁に交流を持ち、嫌がらせの内容について打ち合わせをしていた。

 その中でお互いの前世の話をしたり、この世界の愚痴を言い合ったりして、むしろちょっと仲良くなっていた。

 ゲームでは敵対関係にあった2人だが、今世では同じ目標に向かって歩む同志なのだ。


 ミリカの前世は琴子と同じく家族に恵まれなかったらしく、今世の幸せを大事にしたいのだという。

 最終的に王子妃になるべく幼い頃から研鑽を積んでおり、実際に学園の試験でも優秀な成績を収めていて、ユリアンナはミリカが王子妃に相応しいことに安堵した。


 もちろん、周囲に2人が仲が良いと思われては計画に支障が出るため、2人が会う時はユリアンナが〝認識阻害〟の魔法をかけている。


「ところで、そろそろユリアンナが嫌がらせを仕掛け出す時期よね。最初の嫌がらせは何だっけ?」


「えーっと……確かミリカのクラスに押しかけて、『わたくしの婚約者とベタベタしないで!』とかって喚き散らすんじゃなかった?」


「あ~、そうだそうだ!それから教科書が破かれて捨てられたり、持ち物が壊されたりするようになるんだっけ」


「でも、普通に考えて公爵令嬢のユリアンナが自分の手で教科書破いたりするのはおかしいよね?……誰か適当な人を脅して手先にするかなぁ」


「それが良いかも。人を使った方が証拠が残るし、断罪の時に役立ちそう」


 こうして、『ユリアンナの嫌がらせ』を実行するために綿密な計画が立てられていった。




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