後日談
にとりと神子の将棋対決が終わって数日後のこと。地霊殿の主である古明地さとりは、いつものように書斎で本を読んでいた。そのとき、扉をノックする音が部屋に響き渡る。すると、扉が開き、豊郷耳神子が書斎へと入ってきた。
「やぁ、さっきまで河童と将棋を指していて来るのが遅れてしまったよ」
さとりは本を閉じ小さくため息をついた。
「お礼の品でもって来てくれたんですか? 河童との勝負であなたが勝てたのも、ほとんど私のおかげなんですからね。わかってます?」
さとりは少し不機嫌そうな様子見せる。
「確かにそうだ。私はほとんど何もしていない。相手の考えを読んで、指すべき手を私に教えてくれていたのも君だし、あの機械のバグを見つけたのも君だ。感謝しているよ。それにしても、まさか君がバグを見つけた痕跡を消すために機械をこわすとはな、ハハハハハハ」
神子は笑いながらそう答える。
「笑い事じゃないですよ。おかげで私は血の気の多い暴力妖怪認定されましたからね。それに加えて、弁償としてその将棋ソフト代を払うだけじゃなく、開発資金の援助までさせられましたし、倍ぐらいにして返してもらわないと割に合わないわ」
さとりがムッとした様子を見せるなか、神子はさとりの方へと近づくと、サイコロを二つ取り出してさとりに見せた。
「一から十二の間で好きな数字を言ってみてくれ」
「……十一」
さとりがそう言うと、神子は二つのサイコロを振った。出ためは六と五。合計すれば十一だ。
「どうだ、すごいだろう?」
「確かにすごいけれで、それがどうしたの?」
さとりは神子の心を読んだ。
「……わかってます? 私まだ結構怒ってるのよ」
「それと同時に、面白そうだと思っているんじゃないかな」
自信満々にそう言う神子に対して、さとりはため息をついた。
「はぁ、またあなたに付き合わされるのね」
さとりはそう答えたが、その様子はどこか少し嬉しそうにも見えた。




