機械故に
神子はうなだれるにとりに話しかける。
「私が主に勉強していたのは、将棋の戦法や定跡ではない。仕組みやルールについてだ。その中でも歩や角や飛車などは成るのが当然であり、成らない場合を考慮することはほとんどない。機械が指すのであれば、そこにプログラムミスがある可能性が高いと私はふんだ。もし、君が直々に指していたならば、私は勝てなかっただろうな」
神子はそう言って、席を立った。そして、去り際に一言残していった。
「君達の将棋への誇りは敬意を払うべきものだ。賭けということで、それを踏みにじるような戦い方をたことは謝ろう。良かったら今度は純粋に将棋を指そうじゃないか」
神子はそう言い残して部屋を出た。
さとりは下を向きなが、あることを疑問に感じていた。
(いくら機械が誤作動起こす可能性があるからって、それに賭けられるのか? 事前にそれを知ってない限りはそんなの無理だ。でも、この機械は行われた対局のデータは、終局後には全て保存される。そんなバグが以前に起きていたら私が知らないはずがなにのに)
そこまで考えたときだった。にとりは気がついた。にとりが知る限り唯一機械がデータを保存していない対局があったことを。
にとりは勢いよく顔をあげ、さとりの方をみた。部屋を出ようとしていたさとりは、にとりがこちらを見ていることに気がつくと、にとりの方へと振り返った。振り返ったさとりはただ微笑を浮かべるだけであった。そして、さとりは部屋を出て行った。




