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第一章 神子vsさとり(ポーカー編)

 いつもと変わらない幻想郷。しかし、流行はときによって変わるもの、今の幻想郷での流行はギャンブルであった。人妖問わず何をするにも賭けを楽しんでいた。

 そんなある日、豊聡耳神子(とよさとみみのみこ)は人里の様子を見て回っていた。

 豊聡耳神子とは、長き眠りから目覚めた仙人の一種である尸解仙(しかいせん)にして聖人である。目覚めた後、彼女は空間を作り、仙界と呼ばれる世界に道場を建て暮らしている。その道場はとても大きくきらびやかで神霊廟と呼ばれている。また、彼女は元々為政者であり、それの名残か、人里にもちょくちょく現れ、人々の人気を集めたりしている。

 人里はいつも通り賑やかな様子であったが、少しだけ違う点があった。賭け事をして楽しんでいる人が多いということである。その中には、河童達が賭場を開いているところもあり、人里では本格的に賭け事が流行となっているようだ。

(少し見ない間にこのようなことになっていたとは。私も少しやってみようか)

 そんなことを考えていたときであった。

 前方から黒猫がこちらに向かって歩いてきた。そして黒猫は手紙を神子に差し出してきた。神子がそれを受け取ると、黒猫はどこかへと走っていった。

 神子は手紙を読んでみることにした。手紙にはこのようなことが書かれていた。

「地霊殿の主の古明地さとりです。会ってみたいので、是非地霊殿にいらしてください」

 地霊殿の主が私に何の用だろうと、神子は少し不思議に思ったが、丁度時間も空いていたので、地霊殿へと向かうことにした。


 地霊殿とは、地底の旧地獄の都である旧都の中心の灼熱地獄跡の真上に建てられた、(さとり)妖怪である古明地(こめいじ)姉妹の屋敷である。そのため、地霊殿へ向かうには、間欠泉などから地底に入り、旧都を抜け、更に奥深くへと行く必要があった。

 神子は地霊殿に到着し中に入った。地霊殿は西洋風の屋敷であり、中には、様々な動物達がたくさんいた。地霊殿には、主人であるさとりをはじめとし、妹の古明地こいし、後はさとりがペットとして飼っている大勢の動物や妖怪が住んでいるようだ。神子は廊下の先にある部屋の扉を開けた。

 この部屋は書斎のようであり、奥にはピンクの髪の妖怪が机の前の椅子に腰掛けている。その妖怪は神子のほうを見ると微笑んで声をかけてきた。

「ようこそ地霊殿へ。私は地霊殿の主の古明地さとりです」

「私は豊聡耳神子」

 軽く挨拶を交わす二人だが、既に相手の考えていることはお互いにわかっていた。

 古明地さとりは、心を読む程度の能力があり、第三の目を用いることで、相手が今考えていることは全てわかってしまう。それに対して、豊聡耳神子は十の欲の声を同時に聞くことができる。それにより、相手の本質を理解したり、近い未来を予知することができるようで、さとりほどではないが、心を読むに近いことができる。

「ふむ。なるほど、そういことでしたか」

「ええ、あなたとポーカーでもしてみようと思いましてね」

「ポーカーですか、私はかまいませんよ。それで何を賭けるんですか?」

「いえ、私はあなたと純粋に勝負したいと思っているんですよ。何も賭ける必要はありません。それに、既に準備はできています」

 さとりが合図をすると、二人の目の前に人が突然現れた。

「この度、この勝負の立会をさせていただきます、十六夜咲夜と申します」

 十六夜咲夜(いざよいさくや)、彼女は紅魔館の主のメイド長である。彼女には時間を操る程度の能力があり、最近ではそれを活かして公平な立会を務めているそうだ。

「カードの方はこちらのものを使っていただきます」

 咲夜がそう言うと、目の前に二つの椅子と机、さらに机の上に全て表向きで広げられたトランプが現れた。

「カードの確認の方をお願いいたします」

 そう言われて、神子とさとりはカードの確認を行っていたが、神子には一つ気になることがあった。このトランプはAではなく1と表記されていたのだ。

「その程度ならば、問題無いのでは?」

 さとりはすかさずそう尋ねた。

「ええ、問題はありませんね」

 神子とさとりはそれぞれ用意された椅子に机を挟んで向かい合うように座った。

「では、ルールの方はいかがなさいますか?」

 咲夜が二人にそう尋ねた。

「あまり長引いても困る。五回戦程度にしてはどうかな?」

「いいでしょう」

 神子の提案をさとりは受け入れた。お互いのハンドがわかる二人にとって、回数を決めておかなければ、勝負がすぐにつかないということは明白であった。

「では、お互いのチップは5000。ブラインドは……いえ、参加料は一回戦はお互いに100チップ、二回戦は200と100づつ上げていきましょう」

 さとりの提案に対して神子は少し考えていた。

(ルールの時点で何かを仕掛けてきている様子はない。まあ、私たちが普通のルールで対戦するという方が無理があるだろうな)

「いいだろう、そのルールで受けよう」

「そういえば、先攻後攻はどうします?」

「じゃあ私が先行で良い」

 そうして、ルールは以下のように決まった。

 ルールはポーカー(NLH)、勝負は五回戦、参加料は100、200、300と増えていき、先行は豊聡耳神子。五回戦終了時にチップが多い方、又は相手のチップをゼロにした方の勝ちである。

 ルールが決まると二人には100単位のチップが50枚ずつ、計5000のチップが配られた。

 そして、咲夜はカードを混ぜ始めた。

 もうすぐ一回戦が始まる。そんなとき、神子はヘッドホンを耳から外し、首にかけた。彼女のヘッドホンには異常な聴力を抑えるリミッターとしての役割がある。さとりとの一対一の状況では神子にとってそれは必要なかったのだ。

(さて、一戦目。ここがかなり重要なわけだが)

(確かに、ここで勝った方が主導権を握ることができますからね)

 そのように考える神子と、心の中でそれに答えるさとり。そうして、一回戦が始まる。


 


 

 

 

 





 






 

 

 







 



 




 


 

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