#095 スロットの真価! アタッカーからヒーラーへ!
合宿もあっという間に4日目です。
今日はみなさんに出店の出しものが決まり、それの素材採取を頼みました。
「昨日の美味しかったやつだよね! 任せて!」
「焼きそば焼きそば~」
「トン汁美味しかったよ。絶対当日も食べに行くからね!」
仲の良い3人であるサチさん、エミさん、ユウカさんが快く引き受けて採取に向かってくれました。
それを筆頭に私たちの料理を食べたいと言ってくれた人たちが予想以上に多かったです。嬉しいです。
「ハンナの料理は美味いからな。みんなの心を掴むのも納得だ」
「もう、今回はみんなで作ったんだよ? アルルちゃんもカイリさんもお料理上手かったんだから」
「いやあ、俺は幸せものだ~」
なんだか会話がかみ合っていないような気がします?
さて、私たちも今日は採取メインです。
でも採取の前にゼフィルス君からこんなお願いがありました。
「ハンナ、ちょっとヒーラーが不足しててな。この時間とこの時間、ボス戦のヒーラー枠として入ってくれないか?」
それはボス戦参加の頼みごとでした。
〈エデン〉はヒーラーが不足しています。
ヒーラー筆頭のラナ殿下が夏休みで帰省している影響ですね。
おかげでヒーラーをできるのがミサトさん、エミさん、そしてゼフィルス君の3人です。
そして私ですが、武器スロットに回復系の〈魔能玉〉を埋め込めば疑似的なヒーラーが出来ます。
実は2日目からちょくちょくボス戦に参加させてもらっていました。
あの〈革命王・ニャキス〉からドロップしました〈令猫の魔道書〉の試し撃ち、しっかりこなしましたよ。
それで、思いました。強いですよこれ。さすがはレアボス〈金箱〉産ドロップです!
ということで、引き受けます。
トン汁や焼きそばに、お肉がいるんです!
「もちろんいいよゼフィルス君。でも豚肉は貰うからね?」
「ボスの豚肉を使った出店とか贅沢すぎる! 普通の豚でよくね?」
「うーん、コスパも考えなくちゃだしね。豚肉も混ぜつつボス肉も少し使おうかなって」
「まあ100%ボス肉料理とか出そうものなら相当高くないと買占めもあるだろうしな」
ここ、〈食ダン〉最下層、そのボスは高級なビーフ、ポーク、チキン類をドロップするのですが、とんでもなく美味なんです。さすがボスですよ。味もボス級です。
ですが、本来ならボスは一戦で終了、ボスと戦ったら転移陣で帰るのがお約束のはずです。
でもゼフィルス君には何度もボスと戦う裏技があるのでボス肉も乱獲できてしまうのです。
つまり、ボス肉というのは本来とても高価なものなのです。
普通は夏祭りの出店に出すようなものではない、ということですね。
でもせっかくなのでちょっぴりだけ入れたいと思っています。
本当にちょびっとだけですよ?
ということで、ボス戦です。
「ブモオオオオ!!」
「プギィィィ!!」
「コケェェェェ!」
「レアボスです!?」
なんと運が良いのか悪いのか。
私のパーティはなんと〈レアボスの笛〉も吹いていないのにレアボスが自然に湧いてしまいました。
ど、どうしましょう!?
「落ち着いてハンナ。ハンナはやらせはしないから」
「シエラさん!」
そう言って前に出るのは〈エデン〉のサブマスターであり、かっこいいシエラさんです。
シエラさんの盾に遮られればどんな攻撃もここまで来ません。
私は安心して魔法を使えます。
私は〈令猫の魔道書〉を取り出し、開きました。
やや大きな本。文芸書サイズより気持ち大きいくらいの本に分厚いカバー。
表紙の中央に水晶のような部分があり、ここに〈魔能玉〉を入れると魔法が使えるようになります。
そして今入っているのは〈豪炎杖〉という中級産の杖を『能玉化』した『豪炎杖魔能玉』です。その威力、まずは身をもって知ってもらいましょう。
「行きます。『フレアバースト』!」
『フレアバースト』は三段階目ツリーの火属性魔法です。本が開いて宙に浮き、ページを相手に向けるようにしてそこから高威力の閃光が発射されました。
「コゲェェェェ!?」
チキンさんに命中しました。中々に大きくHPが削れます。
そういえばここのレアボスは中級下位級のボスだってゼフィルス君が言っていましたね。私でもそこそこ大きくダメージが与えられるようです。
「ブモオオオオ!」
「僕が相手をしましょう。『バトラー・オブ・フィスト』!」
ビーフを相手にしているのは【バトラー】のセレスタンさんです。
ここはゼフィルス君いわく2タンク安定とのことで、セレスタンさんとシエラさんがタンクをしています。
そしてアタッカーは、
「とう! 『ローリングソード』!」
「早く倒れなさい『エレメントジャベリン』!」
「プギィィィ!?」
ルルちゃんとシェリアさんです。
ルルちゃんは1人ポークへと飛び込み、圧倒的回転力のある剣技で攻め立てています。そこに遠距離からシェリアさんが攻撃を加えますが、ルルちゃんのHPが徐々に削れていっています。大変です。
回復に換装しないと。
私は魔能玉を換装、〈豪炎杖魔能玉〉を取り出し、新しく〈快癒のロンド魔能玉〉をセットします。
使えるのは『ハイヒール』『ライトヒールオール』『エリアヒール』という回復魔法が三つも付いた中々の強さを持った中級中位級の杖を『能玉化』したものですね。
「『ハイヒール』!」
「ありがとなのですハンナお姉ちゃん!」
私が回復魔法を飛ばしルルちゃんに着弾させるとその減ったHPが回復します。
これで私はヒーラーになりました。
この〈令猫の魔道書〉のスキル『空きスロット』は〈魔能玉〉をセットすることで、〈魔能玉〉に備わった〈魔法〉を使うことが出来ます。
〈魔能玉〉はドロップした武器を『能玉化』スキルによって作っていて、武器の能力が引き継がれます。
今回使った〈快癒のロンド魔能玉〉は〈快癒のロンド〉という杖で作った〈魔能玉〉ですね。
このスロット付きの武器〈令猫の魔道書〉さえあれば私は、ヒーラーにもアタッカーにも、バッファーにもなれます。
さすがはレアボス〈金箱〉産の激レア武器。強いです!
でもですね、これとってもお高いんですよ。
使うたびにちょっと震えるのは内緒です。
後書き失礼いたします。
本日はここまで。
ハンナちゃんストーリーをお読みくださってありがとうございます。
ハンナちゃんストーリーの今後の更新に関しては本日の活動報告にて記載。




