#094 〈食ダン〉へ入ダン、アイテムボックス溢れそう
「人海戦術ってすごいですね」
「そうやねぇ~」
私たちはとある〈サンダージャベリン号〉の室内、その〈空間収納倉庫〉の前でそんな感想を呟いていました。
現在3日目。
1日目と2日目は移動に多くの時間を取られましたが、ようやく私たちのギルドメンバー全員は〈食材と畜産ダンジョン〉の最下層に到着していました。
泊まりがけのダンジョンって初めてだったのですが、不思議に満ちていました。
『テント』というスキルが込められた〈サンダージャベリン号〉の室内はとっても広く、8人が十分寝泊まりが可能で、私たちはここでお休みを取らせていただきました。
本当は詰めればもっと寝れるのですが、体力やHP、MPも回復してくれる『テント』が効力を十全に発揮するためには、人数に規定値があるみたいなんです。〈サンダージャベリン号〉は8人までは寝泊りすると翌日は元気いっぱいになります。不思議です。
テントは夜になると周囲にモンスターを寄せ付けず、もしモンスターが近寄ってきてもこちらから手を出さない限りモンスターは襲ってこない優れものです。
でも夜しか発動できませんし、発動後にテントを動かすと『テント』スキルの効果が切れてしまい、次の日没までクールタイムになってしまうというのが注意点ですね。
そんな『テント』スキルの付いた大きなテントをさらにいくつか持ち込んでのキャンプです。
1日目も2日目も女子たちは集まってのパジャマパーティで大盛り上がりでした。
男子は男子で何かゲームでもしていたみたいです。
とはいえ、覗きに行ったというサチさん、エミさん、ユウカさん、ニーコちゃんは微妙な反応で戻ってきました。理由を聞いてみると、ギルドバトルに勝つための戦術を、ボードゲームを介して話し合っていたそうです。
それは楽しいのでしょうか? 多分ゼフィルス君なら楽しいって言いそうですね。
夜はそんな感じに過ぎていきました。
話が脱線しましたね人海戦術の話です。
「3日目にしてこの量、やと? もしかしたら明日には全部の〈空間収納倉庫〉がいっぱいになっても不思議やあらへんよ?」
「私の見込みが甘かったようです。まさか〈エデン〉の素材収集能力がここまで高いなんて」
「ゼフィルス君とリーナさんが陣頭指揮を執っていますからね。どこで何が採れるのか採りやすいのか全部教えてくれますから、効率が段違いです」
そう、アルルちゃん、マリアさん、そして私の前にはすでに半分が埋まっている〈空間収納倉庫〉が鎮座していました。
1日目と2日目は移動と探検でそれほど素材の収集に熱を入れず、3日目にしてようやく本腰を入れての収集を開始してこの量です。
前回来た時より人数が増えているとはいえ、泊まりだと1日フルに使えますからこんなに量が増えるんですね。
マリアさんが「この量、いったいどうやって保管すれば。いっそ他の食べ物屋で出店する学生に卸すのもありでしょうか?」と悩んでいました。
ということでゼフィルス君に相談です。
「ゼフィルス君、このままだと素材が溢れそうだよ?」
「ビックリだよな~。仕方ない。ボス戦を集中的にこなして探検での採集班を減らすか」
ゼフィルス君もこの素材の収集速度は予想外だったみたいで、ボス戦をする事で採集のスピードを緩めることにしました。
「ボスからドロップする食材は最高級。これを常にローテーションを組んで狩る。狩って狩って狩り尽くす! あとボス戦の練習も込みだ」
「合宿なのにボス戦の練習がついでになってるよ!?」
一応これは合宿です。
ギルドメンバーの成長のための企画のはずですが、ゼフィルス君ですから仕方がありませんね。いつも楽しそうです。
これで量より質を優先した狩りを意識した素材収集に変わった事で、なんとか4日目まで〈空間収納倉庫〉の中が持ちそうです。
後は、貯めるばかりではいけません。食材は使わないとですよね。
「採れたて新鮮の野菜とお肉がてんこ盛りだよ~」
「これは豪勢やわ~」
「はい。腕が鳴りますね」
私たちの目的は夏祭りでの出店をする事で、要は屋台です。
ということで、私たちサポート班は出店の前に練習を含めて試作品などを作る絶好の機会を得ている訳ですね。
ギルドメンバーのお腹も満たせて意見も聞ける絶好の機会。
この機会は逃せません。
みんなで採れたての食材を広げ協議します。
集中して狩ってくる必要があるものもありますから、今ここでメニューを決めてしまいたいです。
すでに案は出ているので、コスパや時間、作れるメニューなども加味してどれが実現可能か話し合うのです。今の所参加者は3人ですからね。もっと人数が増えれば出来る事も増えるのですが、この人数で出来る事を考えます。
と、そこにマリアさんが2人ほど出店希望者を連れてきました。
「私と同じ〈助っ人〉のメリーナ先輩とカイリさんも手伝ってくれる事になりました」
「よろしくおねがいします」
「アルル、人数が足りなくて困ってるんだって? 私で良かったら手伝うよ?」
「メリーナ先輩にカイリはん。手伝ってくれるんか! おおきに~」
マリアさんが2人捕まえてきてくれたためこれで5人になりました!
とってもありがたいです。
「私もすこしなら料理も出来るしね。出店も興味あるしやってみたかったのよ」
「私は料理がそこそこできるよ。力になれるはずだ」
メリーナ先輩はお姉さんタイプの美人さんですが、お料理はあまりやったことがない様子です。ですが心配はありません。メリーナ先輩の受付でのテキパキ速度を知っている私からすれば売子だけでも即戦力です。
カイリさんはボーイッシュなその見た目に反してお料理が得意との事でした。料理部門の即戦力ゲットです!
これで出来る事が広がりますね。
その後もあれを出したい、これを出したいと案を修正していき、夕方になって試作品としてみんなに提供したところ、かなりの反響がありました。
その意見を参考にしてとうとうメニューが固まったのです。
4日目はそのメニューの食材を大量に手に入れなければなりませんね!




