#086 『奉納錬金』起動。〈炎爆地雷〉量産開始です!
コトコト、コトコト。
私の前にある巨大錬金釜からまるで沸騰しているような泡が出てきます。
私はその前に立ち、新しく使うようになった錬金棒、その名も〈猫の手の錬金棒〉を使って錬金釜をかき回します。
そんなことをして熱くはないのかって?
巨大錬金釜は沸騰しているわけではないので大丈夫です。
これはアイテム同士が結合しようとしている反応です。
私は一定のリズムでずれなく錬金棒をかき回していきます。
そうして5分くらいでしょうか。ついにその時を迎えます。
本当はもっと掛かるハズなのですが、ゼフィルス君がくれた錬金棒の能力は伊達ではありませんね。さすがレアボス〈金箱〉産です。
巨大錬金釜がピカーっと光を放ち、それが収まると。
中には時計のような形をした、私の手のひらにギリギリ収まるくらいの大きさのアイテム。
――〈炎爆地雷〉がそこにありました。
「ふう。完成~!」
私は中級中位級の〈爆弾〉アイテム、〈炎爆地雷〉の高品質を見て頷きます。
「うん、10個作って10個全部が高品質でできるようになったよ~。これも〈猫の手の錬金棒〉のおかげだね」
私はその出来に満足げに頷きます。
この〈炎爆地雷〉はゼフィルス君オススメのアイテムで、ギルドバトルにかなり使えるとのことで高品質の納品を頼まれていました。
なるべく多くとの事だったのでこれから量産に入ります。
私の腕もだいぶ上がり、〈金箱〉産の錬金棒まであるので、もうほとんど高品質でできますね。
今が狙いです。私はゼフィルス君に『奉納』に使えと渡された中級中位の〈銀箱〉産アイテムが置いてある所へ移動します。
「う~、これいくらするんだろ……。ゼフィルス君は相変わらず思い切りが良すぎるよ~」
ゼフィルス君の依頼は『奉納錬金』。
『奉納錬金』とはアイテムを量産する際、同等のアイテムを奉納する事でその完成品の数を増やす事が出来る【錬金術師】のユニークスキル『すべては奉納で決まる錬金術』のことです。
アイテムには等級というものがあります。
ここにあるのは全て〈炎爆地雷〉を量産するための品なので、全部中級中位級です。これ以下の等級の〈銀箱〉では〈炎爆地雷〉ではなく、別の〈爆弾〉アイテムに変化してしまいます。
だからこそ、ここに積まれているアイテムは売ればとんでもない値段で売れる物、という意味でもあります。
とはいえさすがに高額で取引される物はすでに弾いてあって、ここにあるのはさほどお金にならない物や、いらない物だけらしいのですが、それでもこれ一個で数万で売れる代物です。これを奉納で使って良いなんてゼフィルス君は太っ腹です。
私はちょっと躊躇するというのに。
私は考えないようにしながら目になるべく入らないように一つを抜き取ります。
でもこれなんだか長っ細いような?
「ってこれ短槍じゃない!? なんて物入れてるのゼフィルス君、武器は高いんだよ!?」
私は抜き取った物をすぐにリリースしました。
武器はお高いです。
それこそ頭から足までの防具5点と、同じ等級の大剣1点が同じ値段で取引されるほどお高いです。
今のは短槍なので大剣の半分くらいのお値段でしょうが、それでも防具2点分です。十分お高いです。
やっぱり見ないで取るのはダメです。私は自分の目で見て、自分の心臓を労りながら安そうな輪っかのアイテムを抜き取りました。
これでやっと『奉納錬金』ができます。
『奉納錬金』は出来上がったアイテムの数を増やすユニークスキルです。
何それ凄い、ですよね。こんなものがあればポーションも何も作り放題です。
ですが、そう上手い話ではありません。
先ほど言ったように、奉納するアイテムは等級が上がっていくほど高額になります。
そうなるとそう易々とポーションを増やすのに使いづらくなります。いえ、使えなくなります。
ポーション類は単価が安いですからね。
『奉納錬金』を使うのであればなるべく高い物を増やしたいと考えるのは当り前です。
もしくは作製難易度が高い、素材が確保しづらかったり、作製に時間が掛かったりして量産が難しいなどのアイテムを増やすためのユニークスキルですね。
そのため、私もポーション系を作る時はなるべく通常のスキルを使っています。
最近は通常のスキルを使い、超速での錬金ができるようになってきたと自負しています。
ちょっと自慢です。
話が逸れました。
今はこの〈炎爆地雷〉を量産することですね。
この〈炎爆地雷〉は素材が集めにくいタイプです。素材がモンスタードロップなんです。
基本的に素材は採集の方が集まりやすく、モンスタードロップは集まりにくいです。
どのくらい違うかというと、もう天と地の差としか言えません。そのくらい入手難易度が違います。
そのため、採集の方は量産向き、モンスタードロップの方は一点物向きなタイプとなります。
一点物向きのアイテムというのは量産がしづらいためか威力、効力が高めの物が多い傾向です。
これを量産できればとても力強いことは間違いないでしょう。
『奉納錬金』は素材を節約して生産量を増やせるというのが最大の利点なのです。その代わり、飛んでいくお金さんには目を瞑る必要がありますが。
ということで、私は覚悟を決めて、錬金します。
「錬金起動。調合開始」
残り少なくなってしまった素材を使い、高品質になるようしっかり錬金していきます。
『奉納錬金』は完全コピーなので高品質で完成品ができれば増えたアイテムも全部高品質になります。高品質じゃ無かった場合も以下同文なので気が抜けません。
「濃厚~凝縮~、混ざれ混ざれ~。っと、こんな物かな、このタイミングで、えいっ。――『すべては奉納で決まる錬金術』!」
私は覚悟を決めお高い〈銀箱〉級アイテムを巨大錬金釜へと投入しユニークスキルを発動しました。
巨大錬金釜がピカッと光り、そして光が消えます。これで〈銀箱〉級のアイテムは永遠に失われてしまいました。うう、勿体ない。でもゼフィルス君なら、「足りなければ採りに行こう」とか言うんだろうな~と思いながら〈猫の手の錬金棒〉でかき混ぜます。
混ぜる度に棒の先端にある肉球が触れて、ちょっと気持ちいいです。
そうして混ぜる事5分。
先ほどと同じ時間でピカーと光ると、そこには20個の〈炎爆地雷〉が入っていたのでした。
全部〈解るクン〉で即『鑑定』。
結果、高品質でした。やりました!
こうして私は〈炎爆地雷〉を200個になるまで作り続けたのでした。




