#080 採取中に叫び声、ハンナちゃん無双は済んでます
「ということなのですが、どなたか〈助っ人〉で経理などをお願い出来る人はいないでしょうか?」
〈採集無双〉の方々とダンジョンへ潜っている途中、私はセレスタンさんに任された〈助っ人〉のお願いをみんなにしてみました。
ですが、返ってきた反応はあまり芳しくありません。
「うーん。……僕たちのことを〈エデン〉が頼ってくれたのはとても嬉しいですし、もちろん力になりたい気持ちもありますが……、現状では難しいですね……。そもそも経理ができません」
「それに、時間もあまりないしな。〈採集無双〉は今じゃ多くの同級生から依頼が舞い込むそれなりのパーティという地位を確立している。ようやく軌道に乗ってきたし、ここで休みを入れるのは得策じゃない」
「ハンナさん、お力になりたいのですが、申し訳ありません」
モナ君が問題点を継げ、アンベルさんも同意します、そしてサティナさんはいつもの無表情が口惜しそうにしていました。
「い、いえいえ、ダメ元だったので、そんな誤らなくても大丈夫ですよ」
〈採集無双〉はアンベルさんが言ったようにようやく仕事が認められてきて、今では〈採集課一年生〉の中でもかなりの上位グループとなっているそうです。
私も少しお手伝いしましたが、ほとんどは〈採集無双〉の努力の賜物です。それをこちらの都合で邪魔するのは不本意でした。
私は手を振って今の話を終わらせ、別の方法を聞きます。
「それなら、他に誰か得意そうな方に心当たりはありませんか?」
「……うーん、そうだね……。あの〈エデン〉の経理を任せられるに値する人物ですと……、やはり生半可な人物とはいかないですし……」
モナ君がブツブツ呟きながら検討していました、ちょっと大げさ過ぎないでしょうか?
「みんなはどうでしょうか?」
「私はいないね。さすがに〈エデン〉を任せられる人物となるとね……。そんなに有能ならどこかしらで行動を起こしているはずさ」
「私もそう思いますね。少なくとも同級生には空いている人はいないかもしれませんよ?」
アンベルさん、サティナさんも首を振るばかりです。
確かに、同級生さんは今誰もが忙しいはずですから。
ということなら上級生さんなら?
上級生さん、あまり知り合いはいないのですが。
「力になれなくてすみませんハンナさん」
「いえそんな。全然大丈夫ですよモナ君」
モナ君たちも心当たりはいないようでした。
なら、この話はここまでですね。
今は〈ディフェリタンD〉の素材ゲットに集中しましょう。
そのまま他愛無い話をしながら進み、目的の場所に到着します。
「この辺りで良いと思います。それでは〈採集無双〉のみなさん、よろしくお願いいたします」
「任せてください!」
「「「「おぅーー!!」
ここからは〈採集無双〉さんとは別行動です。
私も採集しますので、固まっているよりある程度バラけた方が良いだろうという判断です。というより〈採集無双〉さんたちもバラバラに行動していますね。サティナさんが少し大変そうにしています。
私も一人別行動で採集活動をしました。私は自衛が出来るので、〈採集無双〉さんたちより少し離れて採集します。
近くで採集しているとお互いの採集場所が被って効率が悪いですからね。
それに、〈採集無双〉さんたちは、少し見ない間にパーティ名に恥じない効率的な動きでガンガン採集していってます。レベルもかなり上がっているようで、速く、効率的に、そして大量に入手していきます。
私が近くにいると邪魔になりそうだったというのもあります。
そうして少し離れて採集していた時のことです。
「のわぁぁぁぁぁ、助けてくれーーー!!」
人の叫び声が聞こえてきたのでした。
そこから先のことを簡単に言います。
叫び声を上げていた人たち3人が大勢のゴブリンをトレインしてきたのです。
しかも、私のいる場所に向かって来ました。
私はこのままでは巻き込まれるのと、人助けのために応戦。
ゴブリン、22体を全部討ち取ったのでした。
これが〈筒砲〉の威力です!
そうして現在、肩で息をする3人が私の近くで地面に項垂れています。
「ぜぇ……ぜぇ……つ、疲れた」
「はぁ……はぁ……でもとりあえず、助かったわ」
「ふぅ……ふぅ……ありがとうございます。ハンナ様!」
「ハンナ様じゃありませんよサトル君。それに安心するのは早いと思います」
ゴブリンをトレインしてきてしまった3人、そのうち1人は私も知っている人でした。
というかサトル君です。
何をしていたのでしょう?
それと、安心しているところ申し訳ないのですが、多分お咎めがあると思います。
トレインで他の人に迷惑を掛けた場合、結構重いペナルティが課せられます。
今回私に被害はなかったでしたが、これが私ではなく〈採集無双〉の方々など、他の学生の場合なら大変なことになっていたでしょう。
確実にこの3人は何かしらのペナルティが付きます。
それが分かっているのでしょう。3人はとりあえず助かった喜びを覚えながらも、表情は沈んでいます。
「それで、どうしたのですかサトル君」
「はいハンナ様、実は難しい問題がかくかくしかじか……」
「フラーラ先輩に言ってもいい?」
「ごめんなさい! すぐに説明します!」
さっきから私の事を様付けしたり、口をもごもごさせていたので少しお灸をすえます。
危険なことをしたという反省が足りません。
それから素直になったサトル君が色々話してくれました。
いわく、初級下位をようやくクリアした3人、軽い気持ちで初級中位突入。
本当は〈戦闘課〉の人がほかに2人いたとのことですが、逸れたらしかったです。
それでこの3人は〈ダンジョン生産専攻〉や〈ダンジョン支援専攻〉などの非戦闘員で、現在〈戦闘課〉に依頼してキャリーを頼んでいたらしかったのですが、ゴブリンが2組、ダブルエンカウントしてしまったらしいです。
〈戦闘課〉のお二人だけじゃこれを抑えきれず、守られる立場だったサトル君たちまで狙われてしまい逃げ出して、気が付けば次々トレインしてしまって今に至る。とのこと。
サトル君は正座したまま頭を深く下げるポーズ、土下座で誤ってきます。
「申し訳ありません! ハンナ様!」
どうやら反省は足りないみたいです。フラーラ先輩には連絡しておきましょう。




