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【本編書籍化】ゲーム世界転生〈ダン活〉EX番外編~ハンナちゃんストーリー~  作者: ニシキギ・カエデ
第二章 ピンチな〈生徒会〉への助力表明編

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#077 鳥の王国で打ち上げ花火を打ち上げたら。結果。




 そこは鳥の王国でした。


 空を埋め尽くすような大群。

 一面鳥の巣だらけの崖。

 少し歩けばバサバサと羽ばたいて逃げる鳥たち。


 どこを見ても鳥鳥鳥、でした。


「ここが〈岩鳥の巣窟ダンジョン〉。通称:〈鳥づくし〉ダンジョンだな!」


 ゼフィルス君が胸を張ってそう言います。

 鳥づくし……、獲りづくし?

 なんとなく食材の香りがするのは私だけでしょうか?


「ゼフィルス殿、今日はどこまで攻略するのかなど、予定を聞いてもよろしいでしょうか?」


 そう聞くのは〈エデン〉のメンバーの1人、エルフのシェリアさんです。

 一見真面目そうな知的なエルフさんに見えますが、ルルちゃんが絡むとちょっとアレなのを私は知っています。


「はいはい! ルルも聞きたいのです! 今日はどこまでお散歩をしに行くのですか?」


「はう! お散歩をしに行くと思い込んでいるルルが尊い――」


 シェリアさんの言葉の後、ルルちゃんも手を挙げて聞いたところでシェリアさんの顔が崩れました。

 口がむにゅむにゅして綻び、頬はややピンクに染めて、うっとりとした目でルルちゃんを見つめていました。

 シェリアさんは普段真面目でクールで頭も良いエルフさんなのですが、ルルちゃんが絡むと壊れるのが唯一の欠点です。そこだけ無ければと思いますが、完全無欠な人は居ないということかもしれませんね。


「たはは~。私も聞いてないよゼフィルス君? この私をどこに連れて行っちゃうのかな?」


 そう聞くのは兎人のミサトさんです。白い兎耳がとてもキュートで、つい撫でたくなります。性格はアクティブで少しイタズラ好き。仲の良いメルトさんをからかっている光景をよく見かけます。また、性格的に合うのか、ゼフィルス君が今回みたいな何か内緒の行動を取る時はミサトさんを巻き込んでいるイメージがあります。


 シェリアさんとルルちゃん、そしてミサトさんの質問にゼフィルス君は怪しく笑います。

 何か企むような笑い方です。楽しそうです。


「ふっふっふ、今日の目的は攻略じゃないんだ―――、鳥の乱獲、もとい、これの試し撃ちをする! じゃーん!」


 そう言ってゼフィルス君が〈空間収納鞄(アイテムバッグ)〉取りだしたのは〈筒砲〉。

 それは私が錬金で作った攻撃アイテムでした。


「〈筒砲:ガンガン〉?」


 それは小さな石を散弾にして撃つ〈筒砲:ガンガン〉でした。

 私のパーティ〈旅の道連れの錬金店〉では不採用になった商品で、攻撃範囲はそれなりに広いですが、近距離出ないと威力出ないという欠点を持ち、射程不足もあってお蔵入りした商品ですね。


 それよりも気になるのが、ゼフィルス君鳥の乱獲って言いました?


「もちろんこれだけじゃないぞ。〈火の杖〉や〈ファウム〉〈フリス〉〈ライザー〉などの爆弾も各種取りそろえてある!」


「えっと……これってどれも不採用商品なんだけど?」


 ゼフィルス君が〈空間収納鞄(アイテムバッグ)(容量:中)〉をひっくり返して取りだした物たちを見て私は思わず呟きました。

 これはほとんどが初級下位の攻撃アイテムです。つまり弱すぎて売れないアイテムで、倉庫の肥やしになっていたものです。

 ちなみにこれは私や、シレイアさん、アルストリアさんの職業(ジョブ)レベル上げや錬金の腕前を上げるために作りまくった練習作ばっかりでした。


 私の言葉に皆さん微妙な視線でゼフィルス君を見ます。


「ゼフィルス君、これをどうするの?」


「鳥を撃ち落とす。さらに爆破させる! きっと楽しいぞ!」


 は、話が通じない! ゼフィルス君の目はキラッキラでした。


「そうじゃなくて、なんでこのアイテムなの? いつも通りスキルや魔法で良くないかな? それにアイテムは弱いし初級下位アイテムで中級中位ダンジョンのモンスターに効くとは思えないんだけど」


 ここはあの中級中位ダンジョン。モンスターも非常に強力です。初級下位アイテムなんてほとんど効きません。ダメージ1です。


「ま、百聞は一見に如かず。とりあえず俺についてきな」


「う、うん。でも大丈夫かな? 襲われない?」


「そしたら俺たちが返り討ちにするから心配するな。大丈夫だ」


「あい! ルルにお任せなのです!」


「ルルにだけやらせません。私も全力を尽くします」


「回復は私に任せてね」


「そっか~。私もアイテムでやっつけるよ!」


 みんなの答えに私は頷きます。

 私にとって初めての中級中位ダンジョン参加ですがゼフィルス君はいつもどおりでした。

 ゼフィルス君はこう見えて、かなりの慎重派です。

 そのため、ゼフィルス君が大丈夫と言えば大丈夫なのです。


 ゼフィルス君が向かったのはとある崖でした。

 そこには一面びっしりと鳥の巣があり、崖が穴だらけになっていました。


「ここのモンスターっていうのは弱点、というかシステム的にとある設定がされててな」


「設定?」


「ま、行動パターンみたいなものだ。そして、飛行型モンスターのうち、鳥型っていうのはほんの少しでも攻撃を食らえば打ち落とされやすい設定になってる。空を飛んでいるから当てるのが難しいが、だからといって難しすぎると難易度が上がりすぎるからな。その調整としてだとは思うが、要は当たると墜落するんだ、ここの鳥は」


 ゼフィルス君はたまによく分からない言葉を使う事があります。

 ですが、最後の一言でなんとなくゼフィルス君がしたいことが分かりました。


「こいつは〈鳥落とし祭り〉と呼ばれてた戦法でな。よく見ておけよ。面白いから。最初は〈ファウム〉を打ち上げる専用アイテム〈ファイヤワークス(だい)〉を使うぞ」


 ゼフィルス君が取りだしたのはまたまた非売品。

〈爆弾〉アイテム〈ファウム〉系を遠くに飛ばすだけのアイテム〈ファイヤワークス台〉でした。見た目は地面設置型のただの筒です。


 これは手投げ弾として使う〈ファウム〉をより遠くへ飛ばすことができるアイテムですが、欠点として地面に固定しなくてはいけませんし、攻撃されると簡単に壊されてしまいます。

 遠距離からフォールドボスなどに使うと真っ先に壊されますね。それに使い手も狙われてしまうのでアイテム使いにとってあまり使い勝手が良くありません、リスクが高いのです。


 しかしゼフィルス君はそれを10個ほど地面に取り付けると、練習用として作りに作りすぎた〈ファウム〉を山のように取り出しました。そして筒の中にぽいぽいっと入れていきます。


「さーて打ち上げの時間です。寝ている人は飛び起きてでも刮目せよ! たーまやー!」


 ドドドドドドッ!!


 私たちが見守る先で〈ファイヤワークス台〉が〈ファウム〉たちを真上に打ち上げました。

 そして爆発。


 バンバンバンバンバンッ!!


 ―――――ギャァァァギャァァァ!!

 ―――――ゲェェェィゲェェェィ!?


「うわぁ!」


 連続で上空で爆発する爆弾たちに巣に籠もっていた鳥型モンスターたちがパニックになって飛び出してきました。

 ミサトさんが思わず感嘆とした声を上げていました。そこで感心するのはあっているのでしょうか?


 さらにゼフィルス君はドンドン〈ファウム〉を打ち上げていきます。


 ドドドドドドッ!!

 ―――――ギャァァァギャァァァ!?


 飛んで来た鳥が爆発に巻き込まれます。

 遠くてよく見えませんが、やはりダメージはほとんど無いみたいです。

 しかし、予想外のことが起こります。


「わ! 降ってきたのです!?」


「バリア張るね! 『テラバリア』!」


 ルルちゃんが叫び、ミサトさんがドーム状のバリアを展開して防いでくれました。


 ダメージをほとんど食らっていなかったはずの鳥型モンスターが墜落してきたのです。


「ここの鳥ってダメージを受けるとどんな小さいダメージでも『たまに墜落』するんだよ。まるで攻撃してくださいとでも言うように。だから単発の魔法やスキルではなく、最弱アイテム系でドカンドカンした方がコスパが良いんだよな。これだけ頭上にいれば『たまに墜落』だろうとドンドン落ちてくるし」


「ええ!? でもゼフィルス君、これってゼフィルス君が狙われちゃわないの!?」


「それが大丈夫なんだなぁ。墜落した鳥型モンスターが6体以上の時は上から攻撃されない。エンカウントの関係で数が限定されるから飛び入りは不可なんだ。その墜落したモンスターを倒すか、新たに上に攻撃しないかぎり狙われることはない。じゃないとこの大群に一発何かを撃っただけで群がられてしまうからな、バランス調整を逆手に取った戦法だ」


 えっと?

 難しくてよく分からなかったのですが、つまり横やりは無い。ということかな?


「さーって。今日は贅沢にアイテムを使いまくるぞ~。〈鳥落とし祭り〉の始まりだ!」


「とりあえずあの鳥さんを攻撃すればいいんだね」


 墜落して、ダウン、もしくは〈気絶〉状態になっている鳥型モンスターを指します。


 あれ? これって攻撃し放題じゃないかな?

 中級中位ダンジョンがこんなに簡単で良いの?





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ゲーム世界転生〈ダン活〉1巻2022年3月10日発売!
― 新着の感想 ―
[一言] メタメタアターック!
[一言] メタいですゼフィルス先生
[一言] 本編でシエラから却下されたお祭りですね(笑) ゼフィルスはどういう感覚なんでしょうね。ゲームの世界だと思っているのか、良く似た現実世界だと思っているのか。特に気にしていない可能性もありますが…
感想一覧
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