#068 シレイアさんの装備更新!
「悪いハンナ、遅くなったか?」
「んん。大丈夫だよゼフィルス君」
「そうか? なんか疲れているように見えたんだが?」
「……ちょっとだけね」
ちょっと三人から質問攻めに遭っただけです。
乙女心に甘い話は激薬なのです。私は見事に耐えきったと思います。ゼフィルス君に褒めて欲しいです。言えませんけど。
「それより、紹介するね。私が所属している〈旅の道連れの錬金店〉のパーティメンバーで、シレイアさん、アルストリアさん、そして二年生で〈生徒会〉メンバーでもあるミリアス先輩だよ」
「えとえと、お初にお目にかかり光栄、です! ハンナ様とはお友達な関係です!」
シレイアさん、普通お友達には様は使いませんよー。
私は心の中でツッコミました。
「初めまして。ハンナさんのクラスメイトでもあります、アルストリアですわ。お見知りおきくださると嬉しいです」
「私はちょこっと会ったことあるけど自己紹介は初めてね、〈生徒会〉会計のミリアスよ。気軽にミーア先輩と呼んでね」
シレイアさんに続き、アルストリアさん、ミーア先輩と続きます。
はて? なんだかみなさん緊張しているように見えます。
なぜでしょう?
ちなみにミーア先輩はギルド同士のつながりでゼフィルス君とは初対面ではなかったりします。
「初めまして。俺はハンナが所属するギルド〈エデン〉のギルドマスター、ゼフィルスだ。ハンナから話を聞いているよ。ハンナが世話になってる」
「い、いえいえいえ。私たちの方がいつも助けて貰っているのです! ハンナ様がいなかったら私なんてもっとダメダメだったのです!」
「わたくしも同じですわ。ハンナさんとは切磋琢磨する関係で、多くお世話になってきましたの」
「うんうん。〈生徒会〉の仕事もたくさん手伝ってくれたしね。もうハンナちゃん無しでは生きていけないかも」
「ほう、そんなにか」
「ちょっとみんな何言ってるのですか!? そ、そこまで世話焼きじゃないよですよ私!?」
「自覚がない、だと?」
なぜかゼフィルス君が驚愕した表情で私を見つめてきます。
え? 私ってそんなに世話焼きなのでしょうか? あまり自覚が無かったのですが。
「ハンナさんはそのままでいてくださいね」
「そうだね~。そんなハンナちゃんが私は大好きだよ」
「です!」
「ハンナはみんなから愛されてんだなぁ」
「もう、みんなからかわないでください! ゼフィルス君もだよ!」
まったく、みんなのお願いを聞いてここまで連れてきたのに、酷いことです。
私がツンっと拗ねた様子を見せると、視線でアイコンタクトした三人がペコリと謝ってきます。
「ハンナさん、ごめんなさいですわ」
「救世主様、からかってごめんよ~。どうか例のお話は穏便に~」
「です~」
「…………もう、よろしいです。――ゼフィルス君、今日は頼み事があってきたの。――ってどうしたの?」
「尊すぎてほっこりしてた。それでなんだって? 頼み事?」
振り向くと今のやり取りを見ていたゼフィルス君が目を庇っていました。
よく分からなかったのですが、大丈夫みたいなので先に進めます。ゼフィルス君が変な行動をするのは今更なのです。
私は例の説明をして、今装備を調えるのが値段的にも在庫的にも厳しい状態であり、シレイアさんとミーア先輩が助けを求めてきたことを説明します。
「それで、もし錬金装備と調理装備が余っていたら、通常のお値段で売ってあげてほしいの」
「なるほど、話は分かった。それならちょうど良いのがあるな」
「へ?」
思いのほかあっさりゼフィルス君が了承してくれました。
「い、いいの? だって通常のお値段にしかならないんだよ? 今売ればもっと高値が付くんだよ?」
「いいぞ。ハンナの友達だしな。それにすでにたっぷり儲けてあるんだ。ハンナの友達から割高で回収する必要なんてないさ」
ゼフィルス君が男前なことを言ってくれます。もう、相変わらずかっこいいですゼフィルス君。
その声に真っ先にミーア先輩が反応してお礼を言います。
「ありがとうゼフィルスさん。助かるわ」
「なに、持ちつ持たれつだよ。それに〈味とバフの深みを求めて〉にはいつも〈エデン〉は世話になっているしな。シレイアさんも、ハンナが困ったら助けてあげてほしい」
「た、助かりますです! 任せてください、です!」
ゼフィルス君が私を心配してくれる発言をするとシレイアさんは快く受け入れてくれました。
ちょ、ちょっとだけゼフィルス君の心配が心地良いです。
ちなみに〈味とバフの深みを求めて〉はミーア先輩が所属するギルドです。
実は私たちのギルド〈エデン〉は、何か打ち上げをするたびに〈味とバフの深みを求めて〉に祝賀会用の料理を注文する常連なのです。大体私を通してミーア先輩経由で注文をお願いしています。
それから場所を変えてラウンジへ行くことになりました。
ラウンジは個室があるので話しやすいのです。
私たちが先に向かい、ゼフィルス君は装備を取りに一旦ギルド部屋に戻りました。
そしてラウンジで再度集合します。
「お待たせ。持って来たぜ」
「待ってました!」
ゼフィルス君が来るとミーア先輩が勢いよく立ち上がります。
「いいテンションだ。じゃあ調理用からいくか?」
「あ、こほん。大丈夫よ、ここは先輩として抜かすことはできないわ。先にハンナさんにヘルプを掛けたのはシレイアさんだったものね」
ミーア先輩がハッとしてシレイアさんに先を譲り着席します。
シレイアさんは目をパチクリするだけでしたが、みんなから注目を浴びていることを理解すると、緊張で震えていました。
「ゼフィルス君あまりシレイアさんを見ないであげて、あがり症なの」
「そうなのか? 了解。じゃあ、早速装備を出そうか。錬金装備からな、元々ハンナが使うかと思って集めておいた物がある。アクセサリーだがな」
ゼフィルス君が取り出したのは、見たことがあります。私も腕に付けている〈錬金上手の腕輪〉でした。もう一つあったんですね。
他にもう3種類、どれもアクセサリー装備品です。
ゼフィルス君、こんなに私用に用意していたのですか?
「あ、鑑定用アイテム持ってるか?」
「ありましゅ!」
シレイアさんが普段見せないような高速で〈解るクン〉を取り出しました。
それぞれ4種類の装備品を『鑑定』していきます。
「あ、これ私が付けているのより弱い?」
「未強化だからな。ハンナに渡したやつは全部強化済みだっただろ?」
私も付けている〈錬金上手の腕輪〉ですが、ここに取りだした物は未強化でスキルはLV1でした。
それでもスキル二つ付きというだけでとても有用です。等級で言えば中級〈銀箱〉産クラスになります。とてもお高い物です。
シレイアさんはどれにするつもりでしょう? ゼフィルス君からお値段を聞いてにらめっこしています。
「決まりました! この〈調合上手の腕輪〉にします!」
シレイアさんが選んだのは私が装備している〈錬金上手の腕輪〉と同系統の、『調合』を強化する〈調合上手の腕輪〉でした。
私たちには不可欠なスキルを補助し、品質を高めるとともに作業速度を上げるものです。
シレイアさんは『調合』の工程を底上げすることにしたようでした。
さすがシレイアさん。錬金の腕はクラスでナンバーツーですからね。
自分には足りない部分を装備で補助しようという考えのようです。
無事、シレイアさんの装備が決まって良かったです。
次はミーア先輩の番ですね。




