#066 テスト期間に突入! テストに使う装備品。
6月も終わり7月、学園では来週に控えた期末試験のための試験期間に突入しました。
この試験期間はテストが終わるまでの約2週間、ダンジョンへの入ダンが禁止になるほか、ギルドの活動も縮小し、勉強を頑張ろう期間となります。
成績が悪いと補習で夏休みが潰れるのでみんな必死に勉強します。
ギルド〈エデン〉での活動は、ダンジョンが禁止になったこともありますが、何より夏休みの補習を絶対に回避しようをスローガンにして、ゼフィルス君が全力でメンバーの勉強のサポートをしています。
昨日まで〈バトルウルフ〉狩りをしていて十分英気を養ったみたいで、ゼフィルス君のやる気度はマックスを突破しています。
私も頑張りますよ。
私だけはみんなとは違い、〈ダンジョン生産専攻〉なので勉強する課目が違うのですが、共通する授業もあるので、そちらはゼフィルス君から教わりました。
数字がちょっと苦手なんです。
この期間中、放課後は任意参加となっているギルド〈エデン〉の勉強会に参加しました。
〈生徒会〉の活動も大幅に縮小中です。
庶務のチエ先輩、書記のミーア先輩しかおらずパンクしていた業務も、新しく加わったローダ先輩とフラーラ先輩、そして見習いの私、アルストリアさん、シレイアさん、あとサトル君のおかげで無事試験期間までに溜まった仕事は全て片付きました。
試験期間中は上級ダンジョンへ突入している〈生徒会〉メンバー5人も戻ってくるとのことで、私たちは勉強に集中するよう言われています。
そんな試験期間中のある日、教室でシレイアさんから相談を受けました。
「実技で使う装備を整えたいのですが、どこにも在庫が無くて困っているのです」
「装備ですか……」
実技。
この〈迷宮学園・本校〉では5日間の試験期間中、最初の3日が座学、最後の2日間が実技となっています。
座学は普通のペーパーテストですが、実技は職業をどれだけ使いこなせているのか、その成果が試されます。
これは将来に響きます。
何しろ私たちは生産職。腕が良いと評判になればたくさん食べていけますが、逆の評価を得れば食べていくのが厳しくなります。私のお父さんのように。
貧乏は厳しいです。学業で良い評価が得られればそれだけ社会に出たときも通用します。
そして、優良な装備品を集められるかも評価に直結します。
優秀な装備を身に着ければそれだけ補正が掛かりますし。腕だけで伸し上がるでもいいですが、基本的に良い装備を身に着けることが推奨されています。
「シレイアさん、お困りですの?」
私たちの話が聞こえたのでしょう、アルストリアさんも話しに加わります。
「はいです。実はアイテムの販売でお金が溜まったので装備を整えたかったのですが。――試験期間のため実技で使えそうな装備は競争率が高くてどこも品薄で買えなかったのです」
「なるほど……」
シレイアさんが悩みを打ち明けます。
私はそれを聞いて頷きました。
シレイアさんは〈旅の道連れの錬金店〉で稼いだお金で装備を買おうとしたらしいのですが、間が悪くどこも売ってなかったみたいです。
特に実技は能力が足りない分を装備で補う事が出来ますから、一年生にとって装備を整えるのはとても重要です。
そんな背景もあって試験期間に突入した今ではどこも他の人に買われ、ろくな品が無い状態だそうです。
ですが、シレイアさんを知っている私からすれば装備は必要ないと思います。
「シレイアさんなら素の実力だけで大丈夫なのではないでしょうか?」
「わたくしもそう思いますわ。シレイアさんは〈錬金術課1年〉でナンバーツー。今まで装備に頼らず売れる商品を作ってきたのですから問題ないと思いますわ」
シレイアさんは一年生でも飛びぬけて錬金が上手いです。
心配は不要だと思います。
「そう、ですか? でもハンナ様もアルストリアさんも良い装備着けてますし……」
シレイアさんの視線の先を追うと、私の右手にある〈錬金上手の腕輪〉にたどり着きます。
続いてアルストリアさんが右手に着けている〈錬金補助ブレスレット〉も見ます。
どうやらシレイアさんは私たちが錬金用の装備を身につけたことで焦ってしまったみたいでした。私はゼフィルス君からの贈り物ですし、アルストリアさんも実家から送られた品のようでしたが、シレイアさんからは、私たちが実技の準備をしているみたいに思われてしまったみたいです。
「そうですわね。まったく意味が無い物ではないので、確かにあると便利ですが……。シレイアさんの言うとおり、すでにどこも品薄だと思いますわよ」
「どこかに余ってないですか?」
「うーん。ローダ先輩には聞いてみた?」
ローダ先輩は【闇錬金術師】。ひょっとしたら昔使っていたものが余っているかと思ったのですが。
「真っ先に聞いてみたのですが、『使い終わったものは我が血肉と錬金の礎となり闇に帰った』と言われたのです」
「よく分かりませんが、すでに持っていないということですわね?」
「はいです。もう伝手もないのです。ハンナ様とアルストリアさんが最後の希望なのです!」
「う、うーん。そこまで期待されると叶えてあげたくなってしまいますが。でもあるか分かりませんよ?」
シレイアさんは孤独になりそうだった私に〈錬金術課〉のクラスで最初に話しかけてくれました。できるなら力になって上げたいです。
「探してくれるですか!? ハンナ様、ありがとうございましゅ!」
そういうことでシレイアさんを連れてゼフィルス君を訪ねることになりました。
しかしそこに、ミーア先輩が来訪してきたのです。
「ハンナちゃん! 実技で使う装備が無いの! 助けて!」
ってミーア先輩もですか!?




