#064 ダンジョン用アクセサリー装備、強いよ~。
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・アクセサリー装備 〈風壁の指輪〉
〈防御力20、魔防力0〉
〈『防御風LV5』『風域LV5』〉
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・アクセサリー装備 〈安全の子守り〉
〈防御力25、魔防力0〉
〈『HP+200』〉
〈装備条件――『基本HPが100未満』。
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ゼフィルス君がダンジョン用と言って持って来てくれた装備を鑑定した結果がこちらです。
二つともとても高い能力を持っています。
特に二つ目〈安全の子守り〉は基本HPが30しかない私にはぴったりで、とてもありがたいものでした。
ダンジョンで最大のネックだったのが私のHPの低さだったので、これで多少攻撃を受けても耐えられるようになります!
「ゼフィルス君、これすっごいね!」
「おうよ、ハンナのために厳選したからな。本当は強化もしてやりたいんだが、ハンナは錬金じゃない方にまでギルド予算を割くのは難しいから、素の性能で悪いんだが」
「いやいや、いいよ別に!? これで十分だよ!」
ゼフィルス君はたまに私に激甘なところがあります。さすがに前線で活躍する〈戦闘課〉の皆さんを差し置いて私の戦闘力を強化するのはダメです。錬金なら、私は〈エデン〉の生産担当なので問題ないですが。
「それで、この〈風壁の指輪〉ってどういう効果なの?」
装備の『鑑定』が出来る〈解るクン〉のスキルLVが低いと、スキルの効力まではわかりません。なので何でも知っているゼフィルス君に尋ねます。
スキルについてはほとんど解明されていますから、名前だけわかれば〈大図書館〉で調べられますが。
でも私たちにはゼフィルス君がいますから聞いちゃった方が早いです。ゼフィルス君は物知りを通り越した何かですから答えられない事なんてありません。
なんで無いんでしょう?
「スキルは『防御風LV5』と『風域LV5』だな。これがかなり強くってな。『防御風』は遠距離攻撃に対して自動発動し、MPを20消費する代わりに発動中はダメージを20%~35%減少させる。MP消費はデカイがアイテム使いのハンナなら有用だろう?」
それはとても魅力的なスキルでした。
ゼフィルス君の言うとおり、私はアイテムを使って遠距離攻撃することで中級ダンジョンでも攻撃役に参加できます。そのためMPはほとんど使いません。
普通なら自分の〈スキル〉〈魔法〉を使うときはMPを消費します。
そのため戦闘職の人がこれを身に着けると、MP消費が非常に嵩んで所謂MP切れを起こしやすくなります。
効果は有用ですが、消費20MPという数字は最前線にいる人たちにとってもバカにできない数値なのです。
ですが、私ならむしろ使いたい放題まであります。
防御に不安のある私にとって、MPをガンガン消費するとしてもこれはありがたいものでした。
「続いて『風域』だな。これも有用だ、パッシブスキルで、ハンナを中心とした円の範囲内に入った遠距離攻撃が数%の確率で避けてくれるスキルだ。自動回避系だな」
「ほへぇ」
その効果にも驚きました。
私を中心にして風が吹き、遠距離攻撃が逸れることがある。という効果みたいです。
自動防御の『防御風』と組み合わせが抜群です。
「ほ、本当にこれ、貰ってもいいの?」
「あくまでギルドの貸与品だけどな。とは言っても、二つとも効果が限定的過ぎてハンナしか使える人がいないから、実質ハンナ専用装備だな。これで防御に対するハンナの不安はある程度軽減できると思うぞ」
「うん。うん! ありがとうゼフィルス君!」
「お礼を言うのは早いぞ。それだけでも有用だが、やっぱり〈アーリクイーン(黒)〉は換装すべきだろう」
「うん。そうだよね」
私は自分の装備を思い浮かべます。
〈アーリクイーン(黒)〉、これはまだゼフィルス君と2人でパーティを組んで活動していた時、ゼフィルス君がプレゼントしてくれた思い出の装備です。
思い出の装備を手放したくなくて今まで過ごして来ましたが、やっぱり換装しなければいけません。ちょっと憂鬱です。
いえ、でも必要なことです。
頑張れ私、負けるな私。
「後は普通の防具だが、もうすぐ〈バトルウルフ〉狩りツアーに行ってくるからその素材を使うといいぞ。マリー先輩ならいい感じに仕上げてくれるだろうさ」
「あ、うん! ありがとうゼフィルス君!」
そういえば、ゼフィルス君たちはこの前のダンジョン週間で攻略した中級中位ダンジョンの一つ、〈猛獣の集会ダンジョン〉で、今週末に〈バトルウルフ〉狩りをするって言っていましたっけ。
ギルドに納められた装備の素材は基本的に申請すればギルドメンバーが自由に利用してもいいことになっています。
もちろんその分の代金なども発生するのですが、激安で売ってくれるので懐はあまり痛みません。ギルドの福利厚生みたいなものですね。素材を自前で用意できるぶん、作製費も安く済ませることが出来ます。
「ハンナはどの部位を頼むつもりなんだ?」
「えっと、足装備以外全部かな。足装備は〈猫ダン〉で貰った〈猫球の足袋〉があるし」
「そうか、ちょっと口を出させてもらうと、ハンナはHPを上げた方がいいから、マリー先輩にもそう言って作ってもらうんだぞ? HPと防御力さえ解決すれば、ハンナだってダンジョンに参加できるから」
「うん。了解だよ。ゼフィルス君、相談に乗ってくれてありがとうね。それにアクセサリー装備も私に合う物を見つけてきてくれて嬉しかったよ」
「いいってことよ。ハンナがパワーアップするのは〈エデン〉にとってもありがたいことだからな。その代わり、錬金は頼むぜ。ハンナに抜けられたら〈エデン〉は崩壊の危機を迎えちゃうから」
「もう、大げさ言って~。それに抜けなんてしないよ~」
「いや、むちゃくちゃ大げさじゃないんだが」
私は重ね重ねゼフィルス君にお礼を言って、その日は帰りました。
夜なので、ちゃんとゼフィルス君は福女子寮まで送ってくれました。
ゼフィルス君の応援に応えるためにも、私ももっと頑張らないと、ですね。




