#047 新たな〈生徒会〉の仲間と、夜の校舎体験。
「は、ハンナ様に頼られてやってきました! 〈錬金術課1年1組〉シレイア、でしゅ! 〈生徒会〉からお声いただだだいて、光栄、ででしゅ!」
「同じく、ハンナさんとシレイアさんと同じ〈錬金術課1年1組〉在籍のアルストリアですわ。ハンナさんに助っ人を頼まれましたの」
〈生徒会室〉でそう挨拶してくださるのは私のクラスメイトでお友達のシレイアさんとアルストリアさんです。
シレイアさんは相変わらずテンパっている様子で噛み噛み癖が直りません。そんなシレイアさんを見ると、なんだか逆に安心するのです。
アルストリアさんはさすがの優雅さです。私も見習いたいです。
今回お2人がこちらに来たのは、今言われたとおり私が頼んだからです。
正直、あの書類の量を2、3人でこなそうなんて無茶です。チエ先輩に2人にも頼んでいいか聞いたところ、一つ悩んでからオーケーをいただいたので、こうして来ていただきました。なにやら「実績もある一年生だし、〈見習い〉候補にしてもいいわね」と聞こえた気がしましたが、私も友達と一緒にやるのは賛成なのでチエ先輩を支持します!
〈生徒会室〉でお仕事をするときは基本〈生徒会見習い〉になる必要があり、〈生徒会〉に入るには優秀で模範的な学生であり、実力と実績を兼ね備えていなければなりません。ですが、シレイアさんとアルストリアさんなら優秀ですし、〈総商会〉の時は私を手伝ってくれた実績もあります。条件はばっちし満たしていると思うです。
「正直、助かります。シレイアさん、アルストリアさん。悪いのだけどよろしくお願いしますね」
「2人ともほんとありがとうー。助かるよー!」
チエ先輩が立ち上がって深々と頭を下げ、ミーア先輩はうるうるした視線で2人にお礼を言います。泣くほどうれしかったんですね。あの書類の山を見れば納得です。
それから〈生徒会〉は5人となり稼動しましたが、やはりなれていない1年生組は仕事もまだ覚えていませんし、書類はなかなか減りません。
それでも頑張って少しずつ書類を片付けていきました。
「こ、これは、思ったより大変ですね」
「ですわね。ハンナさんが応援を呼んだ時点で手に負えない案件というのを予想しておくべきでしたわ」
わ、私ってそんな信用のされかたをしているの?
思わずアルストリアさんを見ましたが、アルストリアさんは目の前の書類の処理で忙しく気がつきません。少し複雑な気分になりながら私も作業に戻ります。
そして西日が強くなってきた夕方、一つの書類が出てきました。
「これは……、『三年生の錬金工房で夜な夜な怪しい作業をする学生がいる』?」
「え、どれですか?」
シレイアさんが読み上げたのは陳情書のようでした。
その内容に思わず、シレイアさんの書類を見てしまいます。
どうやら最近になり、学生の大半が帰った時間から3年生の錬金工房で怪しい人物が怪しい何かを作っているらしいです。怪談、ではないようです。
少し怖いですね。シレイアさんもどう処理していいのか分からず、チエ先輩を頼りました。
「チエ先輩、これ、どうすれば……」
シレイアさんがチエ先輩に例の書類を渡すと、
「〈秩序風紀委員会〉に回して起きましょう」
そう言ってあっさり処理しました。
さすがチエ先輩です。
その堂々としたやり方に、少しビビッていたシレイアさんも緊張が解けた様子です。
「ありがとうございました!」
シレイアさんもホッと一息吐いてお礼をいいます。
でも3年生の錬金工房で夜な夜な、なんだか少し気になります。
しかし、私たちが解決する問題ではないので気持ちを切り替えます。
それから少し休憩を挟みつつ、夜も近づいてきたため本日はここまでになりました。
「みなさん、お疲れ様です。どうでしょう、これから一緒に食事はどうですか?」
チエ先輩が少し身体を解しながら聞いてきます。
嬉しいお誘いです。私もチエ先輩とももっと仲良くなりたいですから。
「いいですね」
「私もいいよー」
「は、はい! 私も、です!」
「わたくしも大丈夫ですわ」
みんないいみたいなので、そのまま食堂へ向かいます。
そのまま、みんなで談笑しながら夕食を楽しみました。
みなさんヘルシーな夕食です。
あれだけ頭脳労働したのに足りるのかと思うでしょう? でも女の子はこれで足りるように出来ているのです。だから大丈夫です。
でもデザートは別腹です。
おしゃべりしていたらあっという間に夜9時に迫る時間になっていました。
今日はこれで解散ですね。
まずチエ先輩とさよならしました。
私たち4人は福女子寮で同じですが、チエ先輩は普通の女子寮だからです。
そうして4人で福女子寮へ向かおうをしたとき、シレイアさんがあることに気がつきました。
「あう。〈学生手帳〉を忘れました」
どうやら教室に〈学生手帳〉を忘れてしまったみたいです。
食堂での朝夕の食事では学生無料なので気が付かなかったみたいです。支給された学生服を着ていれば身分を確認する〈学生手帳〉は必要ないですから。
〈学生手帳〉はキャッシュレスといってミールのやり取りが出来る機能がついているため財布と変わりありません。
もし失くしたとしても、本人以外はミールを使うことは出来ませんが、再発行にペナルティーが掛かると聞きます。
「私、取りに行ってきます。みなさんは先に帰っていてください」
「え? 今から戻るのですか?」
シレイアさんの言葉にアルストリアさんがビックリします。
時間はもうすぐ夜の9時。外は当然ながら真っ暗です。
こんな時間に校舎に戻るのは、その、少し怖いです。
「は、はい。今日は調べたいことがありますので」
〈学生手帳〉は情報媒体? という側面があるってゼフィルス君が言っていました。
学園内のニュースやインフォメーションが見られる他、クエストの受注やチャット、簡単なものを調べることまで出来ます。とても便利です。
確かに、今では無いと少し困るときがありますね。
「危険ではありませんの? 校内は暗いですわよ?」
「ハンナ様と作ったこの灯りのアイテムがあれば、大丈夫、です」
シレイアさんが取り出したのは〈懐中光灯〉というアイテムです。棒の向けた先を照らしてくれます。
「ですが……」
それでもアルストリアさんの心配は尽きない様子です。
その気持ちも分かります。シレイアさん、とても小柄ですから。つい心配になるんです。
「なら私が付き合うよ。それなら大丈夫でしょ? ここは先輩に任せなさい、仕事手伝ってもらったからね」
そこで手を挙げたのはミーア先輩でした。
さすがは先輩、と言いたいですが、よく見れば足が震えています。
どう見ても強がりでした。
それを見て私も決心します。
「私が付いていきます。ミーア先輩はその、アルストリアさんを送っていってください」
私は幽霊やオバケ、それに暗闇なんかにそれなりに強いです。
昔はそうでもなく普通に怖かったのですが、ゼフィルス君と会って濃い体験をしてからでしょうか、なぜか幽霊やオバケが怖くなくなったのです。シエラさんには「度胸が付いたのよ」と言われました。私は密かに根性も付いたと思っています。
ミーア先輩は、ただお帰りくださいと言うのも違うので、アルストリアさんを送るという名目を作って帰りやすくします。
これで一安心のはずです。
と思っていましたが、そこでアルストリアさんが前に出ました。
「いいえ。元々はわたくしが心配で引き止めたのですもの。私も責任を持ってお送りいたしますわ。それに、4人揃っていれば怖くないですわよ、きっと」
なんということでしょう。
アルストリアさんの機転によって、急遽4人での夜の校舎体験が始まることになりました。




