#039 光明が見えました! 魔石1万個生産完了。
「ハンナちゃん、用意できたわ。やってみて」
「はい!」
今私の目の前には〈中級錬金セット〉の寸胴釜と巨大錬金釜が6つずつ置いてあります。
中には魔石がたくさん入っていて、これを私が集めたのだと思うとちょっと壮観です。
私は手を広げ、全ての錬金釜を意識するようにします。
「そうそう、全ての錬金釜を対象にする感覚よ。本当は2つから始めるんだけど、12個いっぺんにって大丈夫かな?」
はい。複数の錬金釜でスキルを使う。
確かにそれなら『錬金』1回分でたくさんの『錬金』を使ったのと同じ意味になります。
その分MPも多少消費するようですが、スピードアップは間違いありません。
私はミーア先輩に教えてもらった方法を早速試すことにしたのです。
ですがミーア先輩は少し心配なようです。
私も最初からこの錬金釜を全部できるなんて思っていませんが、こういう複数の作業をするのって結構得意なんですよ私。〈魔石〉をくっ付けるだけですしね。ポーション作りのような複雑な工程もないのですからなんとかなると思います。
多分3,4個の錬金釜は行けるはず。
うん。神経を集中して、よし、いける!
「いきます。集中して――『錬金』!」
目を開いて手からスキルを周りに広く使うイメージで使います。
「おお~! 一気に4つも! ハンナちゃん凄すぎー!」
ミーア先輩がパチパチ拍手してくれました。
光って『錬金』が発動したのは近くにあった4つの巨大錬金釜だけでした。
ですが、それでも結構凄いことだと言います。
普通は1つの錬金釜を成功させるだけで精一杯だからです。
これも『大量生産LV10』と高いDEXが仕事しているのだと思います。
「本当にこれだけの数が〈魔石(小)〉になっていますわ。これならいけますわよ!」
「さ、さすがハンナ様! ずっと付いていきます! 私たちは魔石の補充に回るです!」
「お願いします! アルストリアさん、シレイアさん!」
アルストリアさんとシレイアさんがサポートに回ることになりました。
スキルを発動したときのスピードが私と二人では全然違うので、それならMPポーションを使うのは私に絞ったほうが良いとのことで、二人は私の〈空間収納鞄〉から錬金釜へ〈魔石〉を注いだり、できた〈魔石(中)〉を収納する係りになり、役割分担をすることになりました。
これで私は『錬金』する作業に集中することができます。
「いきます、『錬金』!」
〈魔石(小)〉がたくさんあった錬金釜4つに絞り、さらに『錬金』をかけます。
ピカッと光ったかと思うと、次の瞬間には〈魔石(中)〉になっていました。
「私が取り出しますね!」
シレイアさんが大きなお玉のようなもので巨大錬金釜の底から魔石を掬い取り、分別します。
今回の『錬金』二回だけでなんと200個近くの〈魔石(中)〉が作れました。
ここからスピードアップです。
私は寸胴釜4つを対象に、クールタイムが終わったと同時に『錬金』をかけます。
少し慣れてきました。
集中する時間が短縮できたように感じます。これはミーア先輩の作ってきてくれた料理の効果でしょうか?
私が寸胴釜に集中している間に、空になった巨大錬金釜へアルストリアさんとミーア先輩が〈魔石(極小)〉を注いでいきます。
お玉で掬ってジャラジャラです。
しばらくしているとあのお玉で五杯分が今『錬金』できる限界値みたいだと分かりました。
本当はこの巨大錬金釜になみなみに入れたいのですが、そうすると全体にスキルがいきわたらなくて失敗するのです。物は小さいですが数があるので1個1個に与えるスキルの量を減らすとそういうことが起こるみたいですね。
「―――『錬金』! ―――『錬金』! ―――『錬金』!」
私は三人が整えてくれた錬金釜に『錬金』をかけ続ける作業に没頭しました。
集中し、『錬金』を発動。〈魔石(極小)〉に2回『錬金』をかければ〈魔石(中)〉ができます。
2回『錬金』をかけ終わったら次の錬金釜に向かいます。その間に完成した〈魔石(中)〉をシレイアさんとミーア先輩が回収し、アルストリアさんが〈魔石(極小)〉を入れる。その繰り返しですね。
MPが少なくなったら〈MPハイポーション〉を飲んで補給します。
そうして効率化を目指していくと、どんどん〈魔石(中)〉が出来ていきました。
さっきとは比べ物にならないスピードです。
「すごいですわ。あっという間、僅か1時間足らずで1万個の〈魔石(中)〉を作製してしまうなんて!」
「ハンナちゃん、終わったよ! とりあえず〈魔石(中)〉は確保できたよ!」
「おつかれさまハンナしゃま! 今汗をお拭きします!」
「そ、そこまでしなくてもいいですよ!?」
アルストリアさん、ミーア先輩、そしてシレイアさんの言葉で気がつきました。
いつの間にか目標を達成していたみたいです。
ちょっと驚きました。もうできちゃったの? です。
この〈錬金セット〉を複数使う方法、とても良いと思います。それにこれ、多分スラリポマラソンでも応用できそう。
帰ったら早速実践してみましょう!
とりあえず、私の首もとにタオルを当て始めたシレイアさんを宥めます。
「いえ、シレイアさん、大丈夫ですよ、自分でできますから!」
世話するのは好きですけど、いざお世話される側になるとなんだか落ち着きません。
なんだかぷくっとして不満そうなシレイアさんを引き剥がし、私は自分のタオルで汗をぬぐいます。
「これは、凄いわね。自分で言っておいてなんだけど。〈魔石(中)〉1万個を1時間足らずとかビックリしちゃったわ」
大きな普通の箱に入れられた〈魔石(中)〉1万個を覗き見てミーア先輩が目を丸くしていました。
私も今日中にできるとは思っていませんでした。しかも1時間足らずだなんて、予想外です。でも、良い意味での予想外でした。
これなら今日中に〈ハイポーション〉1万個の作製だってできるかもしれません。
「早速〈ハイポーション〉の作製に移りましょう!」
「え? もうやるの? 少し休んでからでもいいんじゃない? ハンナちゃんも疲れたでしょ?」
「全然疲れてないですよ! 今も〈ハイポーション〉が足りなくて困っている人がたくさんいるんです。私も頑張らないと!」
「は、ハンナ様が眩しいです!?」
「前から思っていましたが、ハンナさんってタフで根性ありますわよね? どうしてこれだけの数を作ってケロッとしていられるのでしょう?」
こうして私たちは、〈ハイポーション〉の作製に入りました。




