#037 魔石も足りません。ならば錬金です!
〈ハイポーション〉の作製に取り掛かった私たちですが、その作業は難航していました。
いえ、着実に1歩ずつ前進してはいます。ですが先はとっても長かったのです。
「ふぅぅ~、――『錬金』!」
シレイアさんが気合を入れて『錬金』スキルを発動しました。
すると寸胴鍋ほど大きな錬金釜の底に3本の〈ハイポーション〉が転がっていました。
「や、やりました! やっと3本いっぺんにできましたー!」
「おめでとうございますシレイアさん、『大量生産』! 『迅速調合』! 『簡略生産』~! よ~し、ペースト60葉分、できました~」
私はシレイアさんの成果を祝いますが、ちょっとタイミング悪く、作業の手を止められませんでした。そのまま一気に仕上げます。
「はふぅ……。シレイアさん改めておめでとうございます! これほど早く3個も量産できるようになるなんてシレイアさんは凄いです」
「は、ハンナ様には敵いましぇん!?」
どうしたのでしょう。やけに強い断言でした。私くらいなら練習すれば誰でもなれると思いますけど。
それは置いといて、シレイアさんの成長には目を見張るものがあります。
私の時はゼフィルス君に丁寧に教えてもらいながら錬金して上達しましたが、シレイアさんは拙い私の説明とお手本だけで、たった数回で〈ハイポーション〉が3本も作れるようになったのです。凄いです。
これ以上はLV40になったときに解放される三段階目ツリーのスキルがないと難しいかもしれませんが、今は十分だと思います。
「シレイアさんはその調子で3本ずつ作ってください」
「は、はい! 分かりました!」
どうしてシレイアさんは敬礼をしているのでしょうか? 私には皆目検討もつきません。
決して現実から目を背けているのではないのですよ?
「アルストリアさんはどうでしょう?」
「こちらは順調ですわ。これくらいの錬金は楽勝ですの。ただハンナさんの消費するスピードが速すぎて生産が追いつきませんわ」
あう。そうですよね。
明らかに私とシレイアさん、アルストリアさんの生産スピードが違います。
お二人ともまだ職業が三段階目ツリーに届いていません。
そのため三段階目ツリーになると解放される『大量生産』などのスキルは持っていないのです。
私は『大量生産』のスキルをLV10、カンストまで上げているのに加え、生産スピードを上げる『迅速調合LV5』『迅速錬金LV5』、そして『簡略生産LV5』を持ち、量産能力に特化しています。
ですが二人にはこれらのスキルはありません。
その差は歴然です。
すでに私のほうではポケット魔石500個を使いきり、アルストリアさんが作ってくださいました〈魔石(中)〉50個も使い切ってしまい、せっかくペースト状にした60葉分の〈上薬草〉がこれ以上先に進めない状態になっています。
〈魔石(中)〉が全然足りないのです。
もう私も〈魔石(中)〉の作製を手伝うしか手はなさそうです。
私はペーストした60葉分の薬液を〈抽出フラスコ〉に〈純化水〉と共に入れておきそのまま放置。
さっき積み上げた〈魔石(極小)〉の山から大量に持ってきて巨大錬金釜に入れます。
じゃらじゃらじゃら~。大体200個くらい入りましたか?
〈魔石(中)〉の作り方はとっても簡単です。
〈魔石(極小)〉から作る場合は踏むステップは2つ。
錬金釜に〈魔石(極小)〉を2つ入れ、まず『錬金』して〈魔石(小)〉を作ります。
そうしたら今度は錬金釜にこの〈魔石(小)〉を4つ入れて『錬金LV10』を発動します。
すると〈魔石(中)〉が完成します。とっても簡単です。
私は『大量生産』を持っているのでもっとまとめて『錬金』できます。
とりあえず何個か分かりませんがじゃらじゃら錬金釜へ投入します。
そのまま錬金棒で混ぜ混ぜして『錬金』を発動します。
「――『大量生産』! ――『錬金』!」
ピカーっと巨大錬金釜が光り、中には〈魔石(極小)〉のときより一回り大きいサイズの〈魔石(小)〉がたくさん入っていました。
数的には2分の1になってしまいましたが、大きさは倍になったので少なくなったという感じはありません。
そのままもう一度『錬金』を使います。
「――『大量生産』! ――『錬金』!」
またピカーっと光る巨大錬金釜。だいぶ見慣れた光景になってきました。
そして中を覗いて、そして少し悲しくなりました。
「〈魔石(中)〉は25個ですか。他は4の倍数にあぶれた〈魔石(小)〉が1つですね」
あんなにたくさんあった〈魔石〉たちが今ではたったの26個しかありません。
いえ、中級ポーションを作るには〈魔石(中)〉以上が必要ですし、むしろ〈魔石(極小)〉はほとんど使い道がないので、さっさと錬金して〈魔石(中)〉を作ったほうが良いのはわかるのですが、こんなに数が少なくなってしまうと、少し悲しくなります。
また後でたくさんスラリポしなければいけませんね。
私は決意を新たに決し、帰ったらスライムさんたちをたくさん叩こうと決めたのでした。
「それは置いといて、今はどんどん〈魔石(中)〉を作りましょう」
「了解ですわ」
巨大錬金釜にできるだけ多くの〈魔石〉をじゃらじゃら入れ、その後どんどん〈魔石(中)〉を生産していきました。
まだ〈魔石(極小)〉は20万個以上あります。
素材はあるのですからあとは根性です。
私は『錬金』で少なくなったMPを回復させるため〈MPハイポーション〉をくいっと飲み、作業に取り掛かったのでした。




