#030 ダンジョン週間も過ぎ6月に突入しました。
〈採集無双〉の方々をキャリーすることになって、早いもので数日が経ちました。
5月は学園の授業が本格的に始まり何かと忙しかったですが、充実していたと思います。
流れで錬金術で作った品を商売することになった私たち。
とはいえ、将来私たち〈錬金術課〉の学生は錬金術店を持ち商売することになるのですから、これは勉強で有り経験で有り、予行練習でもあります。
そのため気合いを入れてやりますよ。
その甲斐あって〈採集無双〉の方々のキャリーも順調に進み、とうとう全員が初級中位へ進出することが出来たのです。
やりました!
これで採集の問題も解消します!
その翌日にはダンジョン週間に突入しました。
ダンジョン週間とは、ダンジョンに関わることをする自分磨きの期間です。
その週の授業が全て無くなり、土曜日から9日後の日曜日まで続きます。
5月ですと25日(土)から6月2日(日)までの9日間ですね。
このダンジョン週間はギルドで活動することがあるので、私は忙しくなります。
ゼフィルス君のテンションが上がっているのです。また何か計画していますね。
そう言うわけなので、〈採集無双〉さんの初級中位進出がダンジョン週間突入前に間に合ってよかったです。
これでダンジョン週間中はモナ君たち、採集し放題稼ぎ放題です。
ダンジョン週間明けに集まった素材の山を見るのが楽しみですね。
ですが楽しみばかりではありません。ダンジョン週間は授業が無いのでミーア先輩やアルストリアさん、シレイアさんともしばらくお別れなのです。
「では、またダンジョン週間明けに~」
「はい。ミーア先輩また~」
「ハンナさんはくれぐれもお気を付けてくださいですわ。ダンジョンは危険な所なのですから」
「わ、分かっていますよアルストリアさん。それに私はギルドのみなさんが守ってくれますから」
「羨ましいですわね……、でも中級ダンジョンはわたくしには無理ですわ……」
「シレイアさんも〈錬金〉のしすぎで身体を壊さないよう気をつけてくださいね」
「も、もちろんでしゅ! 私、気をつけるでしゅ!」
「噛み噛みで声が震えていますよ?」
こうしてパーティ〈旅の道連れの錬金店〉から離れ、私はギルド〈エデン〉でダンジョン週間を過ごしました。
今回はギルドが受けました〈学園長クエスト〉をクリアするため初級上位ダンジョンのレアボスを周回してガンガン倒していきました。
うん、錬金で作った〈攻撃〉アイテムの性能を試すのにちょうど良かったです。
これでいっそうアイテムの理解が深まったと思います。
さらにギルドで日帰りでエクストラダンジョンの一つ〈食材と畜産ダンジョン〉というところにも行きました。
ダンジョンとは思えないほどの場所で、日帰り旅行と言っても過言ではなかったです。
それでこれが、すっっっごく楽しかったのです!
食材もすっごくたくさん手に入りました! 〈空間収納鞄〉や〈空間収納倉庫〉に入りきらないくらい大量にゲットして戻ってきましたよ。
しかもです、これが高級食材ばっかりだったのです。
久しぶりに大はしゃぎしてしまいました。
これでゼフィルス君に作ってあげられる料理のレパートリーが増えます!
らんららんらら~ん♪
もちろんダンジョン週間中でも朝は毎日ゼフィルス君のお部屋へ朝食を届けました。
新鮮で美味しい食材をたくさんゲットしたおかげでゼフィルス君の食べているときの顔がいつもの五割マシに蕩けているように見えます。えへへ、なんだかその顔を見ているだけで嬉しさがこみ上げてくるようです。
ギルドでのダンジョン週間のスケジュールはこうして順調に進んでいきました。
依頼されていた〈学園長クエスト〉も無事クリアできましたし、おかげで大量のQPが手に入ったとサブマスターのシエラさんたちが喜んでいました。
また、ゼフィルス君は中級下位をガンガン攻略していました。
ギルドの新しいメンバーのルルさんたちもだいぶ強くなりましたし、とても楽しいダンジョン週間でした。
私もレベルが60に迫りましたよ!
そうして楽しすぎてあっと言う間に時間は過ぎていき、6月1日。
今日から夏服に衣替え、なのですが、それよりも重要なことがあります。
例のSランクギルド、〈キングアブソリュート〉さんが上級下位ダンジョンへ挑戦に向かう日でもあります。
これは本当に凄いことで、ここまで本格的な挑戦は20年以上行なわれていないとのことでした。
大きなパレードのような催し物が開催され、多くの人が〈キングアブソリュート〉の偉業への挑戦を見送りに駆けつけたと聞きました。
私はゼフィルス君に止められましたけど。
聞いた話では、あまりに混雑しすぎたためにほとんど姿が見えなかったという人がいたほど大混雑したようです。
シレイアさんに聞きました。
どうもシレイアさんはその大混雑解消のため交通規制の緊急クエストを受けたみたいでヘロヘロになったそうです。お疲れ様です。
〈キングアブソリュート〉さんはこれから卒業までという長い時間を掛けてなんどもダンジョンアタックを繰り返し、攻略を目指すという話でした。
すごい壮大なスケジュールです。
ほとんど攻略者のいない、未踏の広がる上級下位ダンジョンですからそれも当然かもしれないです。
地図などもありませんし、戦闘不能になれば救助もままならないということで、50人規模の大所帯でダンジョンに挑んだそうですよ。
しかもそこに学園からの援助もあって、〈救護委員会〉、〈秩序風紀委員会〉、そして私のよく知る〈生徒会〉の三大組織まで共に向かったそうです。
すごいですよね。
と、私は他人事のようにその話を聞いたときは思っていました。
その翌日、ミーア先輩からこう言われるまでは。
「お願いハンナちゃん! 私をこの激務から逃がして!」




