#026 第二回、〈採集無双〉さんと探索&攻略!
今日は第二回、〈採集無双〉さんと私たち四人で初級下位の探索&攻略をします。
先日、私が〈採集無双〉さんたちを初級中位までキャリーする代わりに、〈採集無双〉さんが私たちに優先的に素材を卸すと契約を交わしたのです。
アルストリアさんが言うには投資だそうで、商売では未来ありそうな有能な方に投資し、専属にするのは割りとありふれたやり方だそうです。
私たちはまだ1年生ですし、お金も何もありませんから投資という考えに行き着かなかったとアルストリアさんは言っていました。
私の使う〈爆弾〉アイテムは中級でも活躍出来るほどの物なので、初級のモンスターでは相手になりません。
初級中位までキャリーするくらいなら私でもできるので投資が成立した形です。
さすがゼフィルス君です。
これから二回に分けて〈採集無双〉さんに〈攻略者の証〉を手に入れてもらいます。
分けるのは、ボスに挑戦できるのは一回に五人までと決まっているからですね。
〈採集無双〉さんは五人なので、私を入れてしまうと人数オーバーしてしまうためです。
また、ゼフィルス君がやっている周回のやり方は教えられないのですが、一つボスを復活させる裏技的な方法がありまして、そっちを試す予定です。やり方は単純で、ボスが復活するのは地上への転移陣が使われたタイミングなので、私以外の攻略者さんに使ってもらって、私は残ればいいんです。そうすればボスは復活するので二回目のボス戦が可能です。
ですがこの方法、本当はしてはいけません。禁止されているというわけではありませんが扱いはトレインと同じですね。〈ダンジョンの奥地に取り残され現象〉が発生する可能性があるため、危険行為という括りです。
一人ポツンと取り残されるととても危険だからですね。
やるときは複数のパーティで攻略している時に限ります。
そして、今回は一回だけやろうという話になりました。もちろん私は連続でボス戦です!
「それでは〈採集無双〉さん、今日はよろしくお願いします」
「いや、ぼく達の方こそよろしくお願いしますですよ。こんな良い話にぼく達〈採集無双〉を選んでいただいて、本当にありがとうございます!」
私が代表で挨拶すると、〈採集無双〉のリーダー、モナ君が慌てたように恐縮し、礼を取りました。
後でアルストリアさんから教えてもらったのですが、〈採集課〉は上位のダンジョンに上がるのが難しいらしく、初級中位ダンジョンに上がるには普通どこかの〈戦闘課〉に頼まなければいけません。当然依頼料が取られます。
〈攻略者の証〉を手に入れるために不利な条件を飲まなければいけないこともあるそうです。
〈採集課〉は戦闘能力が低く、ボスが倒せないため自力でダンジョンの上位を目指すことが難しいですし、初級下位素材は安いですからね。〈採集課1年〉さんの懐具合はあまりよくないと聞きます。
今は1年生がみんな初級下位にいるので素材が溢れてデフレ状態だと聞きますし。今はボス素材くらいしか儲からないようです。そのためモナ君たちもお金を貯めたら〈戦闘課〉の方に上位ダンジョンまでキャリーを頼み初級下位から脱却するつもりだったみたいですね。
そんなところに私たちの提案はまさに福音で、これはミーア先輩が言っていましたが、〈採集課〉のクラスでも下から数えたほうが早いモナ君たちのパーティが、キャリーまでしてもらい、さらに素材を適正価格で優先的に買い取ってもらえるというのは向こうからすれば〈金箱〉を五連続で当てたくらい凄いことらしいです。
とりあえず関係は良好ということですね。
「今日は初級下位一つ、〈熱帯の森林ダンジョン〉へ行きますが、よろしいでしょうか?」
「はい。まったく問題ありません。みんな採取系のアイテムを揃えてきましたから」
「ボスも問題無いです」
今日の予定を言うとモナ君とサティナさんから返事が届きました。
では出発しましょう。
私たちはそのままダンジョン門を潜り、〈熱帯の森林ダンジョン〉へ入ダンしました。
そのまま下層へとまっすぐ降りていきます。モンスターとの戦闘はなるべくしません。
割に合わないですから。
「地図があると楽だよね~」
「地図アイテムってお高いですけどね」
「それはしかた有りませんわ。地図が安価なら1年生が挙って手に入れてしまいますもの。ダンジョンの勉強になりませんわ」
「学園って、結構スパルタでひゅ」
ミーア先輩が私の手の中にある地図を見つめ、私がお値段について溜め息を吐くとアルストリアさんが首を振って説明してくれます。シレイアさんも学園のやり方に溜め息を吐いていますね。
「でもこの地図ってある意味凄いわよね。最短距離しか書かれていないし」
ミーア先輩の言うとおり、私が持っている地図は次の階層の入口までのルートしか書かれていない最短距離専用の地図でした。
ちなみにこれを作ったのはゼフィルス君で、部屋で鼻歌を歌いながら描いていたことは秘密です。
なのでミーア先輩、そんな「どこで手に入れたの?」みたいな視線を向けられてもお答えできないんです。
「さて、あっと言う間に8層ね。この辺から採集を開始しましょう」
「です。では〈採集無双〉の方々、よろしくお願いします」
「了解です。さぁみなさん〈採集無双〉の出番です。あんまり遠くへ行かず、モンスターに十分気をつけて作業しましょう!」
「「「おー!」」」
モナ君の号令に【コリマー】のアンベルさん、【炭鉱夫】のソドガガさん、【フィッシャー】のタイチさんが答え、そのまま辺りに散らばりました。
もう一人の護衛役、【アイテム士】のサティナさんだけが〈筒砲〉を手に辺りを警戒しています。
手際が以前より上がっている感じがします。
「さて、その間私たちはパーティ名を決めちゃいましょうか?」
「パ、パーティ名、ですか!?」
いきなりのミーア先輩の提案にシレイアさんが思わずと言った感じに復唱します。
「そうよ、パーティ名が無いと不便でしょ。〈採集無双〉の人たちもこっちを呼びにくそうにしていたじゃない。私たち四人でダンジョンに来る機会も多いんだし、そろそろ名前を決めちゃわないとね。――ね、ハンナちゃん?」
「そうですね。って、ミーア先輩も入っているのですか!?」
「なによ~、私だけ除け者にする気~?」
「いいえ、なんと言いますか、ミーア先輩って忙しい身なのではなかったのですか?」
私はビックリ慌てて確認を取ります。
ミーア先輩は、最近私たちと行動を共にすることが多いですが、ご自分のギルドと〈生徒会〉を兼任していますし、すごく忙しいと思うのですが。
「大丈夫よ~。自分で言うのもなんだけど、私って〈生徒会〉に入るくらいには学業では優秀な成績を修めているし、〈生徒会〉の業務もハンナちゃんの見守りが主な仕事なところもあるし? 自分のギルドの方だって土日は活動しているしね」
確かにミーア先輩はアイス先生から頼まれた形で私の補佐に付きましたが、もう期限切れではないでしょうか?
それと、ミーア先輩のギルドは基本的に土日が活動日で、ミーア先輩は土日にはそちらに顔を出しているとのことです。
私は知りませんでしたが、そういう土日だけ活動するギルドも多いみたいです。
これ以上言うとミーア先輩が拗ねてしまうかもしれないので、いいのかな~と内心思いつつも受け入れることにしました。
「それなら安心、ですね?」
「そうよ~。これからもどんどん頼ってね、ハンナちゃん!」
「むぎゅ……」
ミーア先輩に抱きしめられました。
むう、なんとなくミーア先輩からは子ども扱いを受けている感じがするのです。
でも、なぜかそれは心地よい感じがしました。




