#023 商品価値を調べてみましょう。
「では、練習場で試し打ちしてみましょう」
「はい! サティナさんお願いします」
「します!」
今日は多目的練習場サティナさんとシレイアさんとやって来ました。
ここでシレイアさんが作った攻撃アイテムを次々使っていき、試し撃ちして商品価値を調べるのが目的です。
また、アイテムを補強し、強化してしまう専門職の【アイテム士】を持つサティナさんにも付いてきてもらいました。
使い手から見て、どれが売れそうなのかを知るのは必要なことですからね。
今日は残念ながらアルストリアさんとミーア先輩はいません。
お二方ともお忙しいですからね。
たまにはこんな日もあります。
「まずは〈手投げ〉系の〈爆弾〉からいきます」
そう言って数々の並べてあるアイテムの中からサティナさんが選んだのは、敵に投げつける投擲系のアイテム群でした。
これは種類が様々で、基本的に爆弾系ですが、硬さを追及した砲丸タイプの物もありますし、カルアさんやパメラさんが使う物のように刃がついた投擲物もあります。投擲にも色々ですね。
「えい」
あ、〈ファウム〉を投げました。
淡々と言葉を口にするのがサティナさんらしいです。
さすが『投擲』系のパッシブスキルが乗っているのでしょう、それなりの距離があったのにも関わらずしっかりと的に命中し、爆発しました。
威力が私たちのときより大きいです。これも【アイテム士】のスキルによるものでしょうか?
「その辺で拾う石より遥かに強いですね。五倍くらいのダメージでしょうか?」
「ちょっと加工しただけですけど、こ、これほど違うんですね」
シレイアさんがふわぁとした表情をしました。
その辺で拾った石を錬金するだけで威力が五倍。そう聞くと強そうに聞こえます。
実際はどちらもあまりダメージは……。所詮は初級下位級なので……。
「次、少しパワーアップした〈レ・ファウム〉を――」
「は、はい! こ、これですね。どうぞ」
〈レ・ファウム〉は〈ファウム〉の上位版ですね。全体的に性能が上がっています。
初級中位級の品ですね。これはなかなか強いですよ。
シレイアさんがたくさんのアイテムの中からサティナさんの要望の〈レ・ファウム〉を渡しました
「えい」
サティナさん、本当に淡々と投げますね。
的に見事命中。ドカンと爆発しました。
「威力、凄く大きい、ですね」
「ふ、普通の〈ファウム〉の三倍近い威力ですね!? も、もっと品質を上げられればダメージはさらに上がりそうです!」
投げた本人のサティナさんも目を見張る威力のようです。
シレイアさんも、こ、ここまでの威力とは、みたいなリアクションをして今の結果をメモに書き込んでいます。
私も書き込みます。メモメモ。
「次、〈レガ・ファウム〉」
「はい! 〈レガ・ファウム〉、どうぞ!」
次の品は〈レ・ファウム〉のさらに上位版の〈レガ・ファウム〉です。
これは初級上位級の品ですね。ちなみにこれは私が作りました。私は投げるのがちょっと苦手なので〈手投げ〉系はあまり使ったことがありません。なぜか相手まで届かないんですよね。
今回はせっかくですからということで、中級下位級の〈レガド・ファウム〉まで試してもらいましょう。
せっかくの機会ですから無駄にはしませんよ。
こうして色々試していきます。
「〈火爆弾〉系は全部終わりましたら今度は〈氷爆弾〉系と、その次は〈雷爆弾〉系もお願いします」
「任せてください。私はスキルを使って投げるだけですから、楽チンです」
サティナさんって楽チンとか言うんですね。ちょっと意外でした。
少し仲良くなれた気がしました。
ちなみにですが、基本の〈爆弾〉系と言われる〈ファウム〉は属性的には〈炎属性〉となります。
ここに一手間加えますと〈氷属姓〉の〈フリス〉や、〈雷属性〉の〈ライザー〉などの手投げ爆弾を作製することができます。
ダンジョンは位階が進むと、モンスターによっては属性によって弱点や耐性を持つものが現れますので、状況や相手によって属性の使い分けをすることで攻略をよりしやすくできます。
〈フリス〉を使うと爆発した瞬間その周りが青白く凍りつきますし、〈ライザー〉を使いますと爆発した瞬間ピカピカ光って電流が走りました。
とてもカッコイイのです。残念なのは投擲スキルが無いと上手く相手に当たらないのと、投げると速度が遅くて、簡単に避けられてしまう欠点ですね。
手投げ爆弾系はとりあえずここまでにしましょう。
「次は〈クナイ〉や〈投げナイフ〉ですね。こちらはダメージには期待はできません。ですが、牽制には使えます」
そう言ってサティナさんが両手を何度か振るうとそのたびに〈クナイ〉や〈投げナイフ〉が的に飛びました。す、すごいカッコイイです。両手で投げているのに一切外しません! サティナさんは両利きの使い手なのでしょうか!?
「速度がありますので、相手がスキルのモーションなどをしていた場合邪魔することもできます。ですが小細工の範疇です、またスキル攻撃は【投擲士】系の職業持ちなら両手で扱うことができます」
「そうなのですね」
サティナさんの説明は勉強になりますね。
シレイアさんと一緒にメモを書き書きします。
他のもどんどん投げてもらい、あっという間に〈手投げ〉系は投げ終わりました。
〈手投げ〉系の感想。
「う、うーん、ちょっと微妙です?」
「はい。〈ファウム〉系は威力は良かったですが、私たちが投げるには飛距離も速度も足りませんね」
〈手投げ〉系のアイテムがあまり使われない理由ですね。
投げるという行為の難易度は意外に高いのです。避けられやすいですね。
「次行ってみましょう~です!」
シレイアさんもだいぶテンション上がってきていますね。気持ちは分かります。
私も、自分が作ったアイテムを使ってもらって感想をもらうの、凄く楽しいです!
「次はこれですね、私が愛用している〈筒砲〉と〈魔弾杖〉です!」
今度のアイテムは私がゼフィルス君にオススメされて良く使っているアイテムです。
〈筒砲〉、それに〈魔弾杖〉です。
〈筒砲〉は砲系のスキルが回数限定で使える攻撃アイテムですね。
私は錬金で作ったため〈錬金砲〉って呼んでいます。
〈魔弾杖〉は攻撃魔法系を回数限定で使えるアイテムです。ちなみに種類はあまり多くはないそうです。私は錬金で作ったので一応〈錬金杖〉とも呼んでいますね。杖は装備品にもありますから、ごっちゃにならないよう頭の中で分けています。
これも攻撃アイテム。カテゴリー的には〈爆弾〉系になるそうです。
私がこれを愛用しているのは、もちろん威力が高いというのもありますし、速度も速いですし取り回しもしやすいから、ですね。それになんと言っても回数というのが最大の長所です!
先ほどの〈手投げ〉系は投げて爆発したらそれで消えてしまいます。1回限定の使い捨てアイテムですね。
ですが、この〈筒砲〉と〈魔弾杖〉は何回も使えます。
もちろん最大回数がありますのでそれ以上は使えませんし、最後の1回を撃ち終わると自壊して消えてしまいますが。実は生産職の中には、この回数を回復してくれる職業があるのです。
つまり最後の1回を使い切らなければ、何度も回復させて使うことができるのです。
回数を何度回復させたって性能は落ちません。
つまり、強力な本体を作っておけば強力な攻撃が撃ち放題になります!
そのため、使いきりで消滅させてしまう〈手投げ〉アイテムよりかなり使い勝手が良いと言えるのです。……全部ゼフィルス君の受け売りですけど。
ちなみに以前サティナさんが購入していったアイテムも、回数系の攻撃アイテムでした。
ということで、本命の番ですね。




