#206 エピローグ――新〈生徒会〉メンバー任命式。
本日3話目!
月日が過ぎるのは早いものであっという間に新〈生徒会〉メンバーの任命式の日がやって来ました。
「――以上とし、本日をもってハンナ君を〈生徒会〉生産隊長の役職へと任命する。ハンナ君、大変だろうががんばっての」
「は、はい! 精一杯務めさせていただきます!」
「うむ。では生徒会前代表者から挨拶を――」
〈生徒会〉のメンバーの入れ替わり。
壇上には来年度に〈生徒会〉を引っ張る役員、代表の私を含め5人が参列し、その向かいには今年度で〈生徒会〉を引退する、先輩方の姿が並んでいました。
なお、なぜかベルウィン先輩とヤークス先輩も向かい側にいるのですが、なぜでしょう?
あと今年度の〈生徒会〉代表のところにローダ先輩がいるのですが、それもなぜでしょう?
「ハンナ君、これからの〈生徒会〉を君に託す。これからも〈生徒会〉を、そして学園を引っ張って行ってほしい」
「はい! 承りました!」
前生産隊長からの意志を受け継ぐ大事な儀式、私も緊張しそうな声を奮い立たせ、大きな声で意思を受け継ぎました。
そして体育館に万雷の拍手が鳴り響いたのです。
最後に学園長から生産隊長への任命状と〈生徒会〉のエンブレムが彫られたバッジを貰い、任命式が無事終わりました。
「は~~~~〈生徒会〉任命式、やっと終わった~~」
「き、緊張しましたよ~~~」
〈生徒会室〉までキリッとした動作で歩いてきましたが、中にたどり着いたところでミーア先輩と私、2人ともダウンしました。
机の上に体を預けます。
「お疲れ様ですわミーア先輩、ハンナさん」
「お、おつかれさまでしゅ!」
「お疲れ様でしたハンナ様! さすがです! これ、冷たいジュースです。どうぞ召し上がってください!」
「ありがとうサトル君」
アルストリアさんとシレイアさんが労いの言葉を、サトル君がジュースを用意してくれたので体を起こして一口。するともの凄く美味しかったのです。これをグイッと飲むなんて勿体ないとちびちび味わいながら飲むことにしました。
「あれ? 私の分は?」
「あ、お茶入れますね」
「え? 私のジュースは!?」
「あれは頑張られた生産隊長様のご褒美みたいなものですので。ミーア副隊長はお茶で我慢してくださいね」
「これが、隊長と副隊長の格差なの!?」
「はいはい。ミーア先輩は今日ほとんど何もしていないのですから一緒にハンナさんを労ってくださいな」
「え~、だってアーちゃん、やっと長きにわたった〈生徒会選挙〉が終わったんだよ? この4ヶ月頑張って来たんだから私も労ってよー」
「えっと。よしよし?」
「はぁ。シレイアちゃんが癒しだわ~」
今日の任命式では主に私が代表でやり取りしましたからね。
ミーア先輩はほぼ立っていただけです。
任命状を受け取るときに学園長の前に立ちましたが、それはみんな同じですしね。
「はっはっは、ハンナ君、そんなところにいないでここに来たまえ」
「ローダ先輩」
任命式が終わったらローダ先輩たちは〈生徒会〉に来てはいけないなんて決まりはありません。
一緒に戻ってきたローダ先輩が、いつも自分が座っていた隊長席の椅子を引き、私に来い来いと誘いました。
そうでした。私、今日から生産隊長に正式に任命されたのでした。
いつも私が座っていた席から立ち上がり、ローダ先輩の下へ行くと、椅子を促されて座ります。
「今日からハンナ君がその席の主だ」
ローダ先輩はそう言いますが、〈生徒会〉の生産隊長席に座る自分がまだふわふわしていて実感が沸きませんでした。
なので正直に告げます。
「なんだか、まだ実感が沸きません」
「はは、また緊張が戻ってきてしまったかい? 壇上ではあんなに堂々と立っていたのに」
「あ、あれはギルドメンバーに緊張しない方法を教えてもらって」
「ほう? 興味深いね、どんな方法なんだい?」
私はチラッとシレイアさんを見て言いました。
「えっと、それは言えません」
「?」
シレイアさんが首を傾げていますが、シレイアさんにはそのままで居てほしいです。
緊張しない方法とは、私よりも緊張している人を見て冷静になる、というものでした。
ちなみにこれはギルド〈エデン〉のノエルさんから教わった方法です。
ノエルさんは緊張しがちなラクリッテちゃんを見ることでいつも冷静になれるんだって言っていました。
人間、自分より緊張している人を見ていると逆に冷静になるとのことです。
そして、シレイアさんは、ラクリッテちゃんにちょっと似てるんです。
いつも緊張しているところとか特に。
壇上に上がったときもシレイアさんのド緊張ぶりを感じているとなんだか冷静になれました。
というわけでこれはシレイアさんには言えません。
するとローダ先輩は肩をすくめ、「残念」と呟くと続いてミーア先輩、アルストリアさん、シレイアさん、サトル君の下へ次々と行っては席を移動してもらいました。
「これが、元生産隊長になったものの最初の仕事だね」
そう言うローダさんがやったのは――席替えでした。
今まで使っていた席からみんな移動し、それぞれが役員席に移り、着席します。
「みんな座ったね? これが新しい〈生徒会〉であり、役員の席だ。みんなよく覚えておいてくれ。そして、明日からは自分からそこへ座るんだよ?」
ローダ先輩にそう言われ、私の席から〈生徒会〉全体を見渡します。
横には副隊長のミーア先輩が座っていて、左の正面には会計のアルストリアさんと書記のシレイアさん。右の正面にはサトル君が座っていました。
そして、みんな私を見つめていました。あの、そんなに注目されると緊張しちゃうのですが?
シレイアさん、見つめさせてもらってもいいですか?
こほん、いえ、せっかく生産隊長になったのですから、頑張らないと。
みなさんが席に着いたことで、ようやく実感が沸いてきたような気がしました。
私、本当に〈生徒会〉の生産隊長になったんですね。
「ハンナ君、普通ならここで隊長から抱負や何かを語るものだよ」
「え、ええ!? そんなのありませんよ!?」
「っはっははは! そうか! ああ、そういえばハンナ君は推薦だったもんね! あはははは!」
「あーあ。ローダのツボに入っちゃった。これ長いのよねぇ」
「ひっあははははは! ごめ、面白くてさ。あははははは!」
しばらくしてようやく笑いが収まったローダ先輩。
ローダ先輩ってこんなに笑う人だったんですね。闇っ気が強い装備で笑っていたので結構不気味でしたが。
「いや、すまない。普通なら生産隊長とは立候補者が就くものだから、うっかり意表を突かれたよ」
「まあ、この場で〈生徒会〉の方針とか話すのが普通よね。でもあたしもないわよ?」
「くっ、ミーアもか! くははははは!」
ローダ先輩が、立候補者の中ではトップだったミーア先輩にも抱負は無いと知ってまた笑い始めました。
すると、なんだか私たちも可笑しくなって笑ってしまいます。
「ふふふ、でも、せっかく生産隊長になったのですから、1つだけ」
「あはは、なんでもいいわよハンナちゃん」
「ええ。どんなことでもサポートしますわ」
「わ、私だってハンナしゃまを手伝います!」
「もちろん俺だってな!」
「みんなありがとう。えっと私からの抱負です――学園を、物が豊富にある、学生が笑顔になる市場にしましょう」
「笑顔、ですの?」
「はい。これから学生がたくさん増えます。でも市場を品不足にはしません。いつも品が充足している市場作り。そしていつも学生の皆さんが笑顔で補充しに来れる。そんな学園市場を目指しましょう」
6月のポーション不足の時は、暴動に近いことが起こりました。ですが、消耗品を切らさなくなってからはそんなことは起こっていません。むしろみなさんが品がちゃんとあることに感謝していました。ありがたがっていました。
私たちはそれを続けるだけ。その当たり前のことを続けられる〈生徒会〉にしたいです。
「いいわね! その話乗ったわ!」
「凄まじく高難度なことを平気で望みますねハンナ様は! そこに痺れる憧れます!」
「ですが、出来ないことはありませんわ」
「はい! むしろやって見せます! ハンナ様と一緒なら出来ないはずがありません!」
ミーア先輩、サトル君、アルストリアさんにシレイアさんが立ち上がって私の話に賛同してくれました。
ローダ先輩がパチリとウインクしてきます。ここでさらに士気を上げる言葉を言えって言っているみたいです。
えと、えっと、ゼフィルス君ならこういう時。そうだ!
「みんな一緒に〈生徒会〉と市場を盛り上げてください! 行きますよ! えいえいおー!」
「「「「おおー!」」」」
「「「「「あははははははは!」」」」」
みんなで声を上げると、再びみんなで笑い出してしまいました。
うん。私の気持ちはみんなに伝わったと思います。
まだ生産隊長なんてちゃんと出来るか分からないけれど。私は、私の出来る範囲で頑張りたいと思います。
みんなと一緒に。
第四章 ―完―
後書き失礼いたします。
ゲーム世界転生〈ダン活〉番外編EX――ハンナちゃんストーリーをご愛読くださいまして誠にありがとうございました!
ハンナちゃんストーリーですが、ここで完結とさせていただきました。
今後作者も忙しくなってしまうため、ここで終わらさせていただければと思います。
気が付けば連載して丸2年。
50万字を超え、200話を超える大作になってしまいましたね。
ここまで読んでくださった方々、本当にありがとうございました。
よろしければ、作者の大好きなお★様もいただけると嬉しいです。
本編はまだまだ続きますので、そちらは今後もともよろしくお願いいたします。
ニシキギ・カエデ