#202 〈ギルバドヨッシャー〉戦でハンナ出撃!
日曜日なので本日3話投稿!
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それはセルマさん教室で絶叫騒動があった日の放課後のことでした。
えっと……?
なんで私、ギルドバトルでは右に出る者はいないとも言われているSランクギルド、〈ギルバドヨッシャー〉とギルドバトルしているのでしょう?
なんでどうして?
それに答えてくれるはずのゼフィルス君はとっても楽しそうでした。
現在第三アリーナの会場に居ます。
そして私は本拠地でアルルちゃんにギルドバトルのノウハウを色々と教えているところでした。
「それでハンナはん、別働隊が回り込んで北を取られた場合はどないするんや?」
「基本的にシャロンさんとリーナさんが対処してくださいますから私たちの出番はありませんね。人が居たらとりあえず撃ちます」
「とりあえず撃つんか!」
「はい。罠に掛ける場合は待つのも大事ですが、相手のペースを惑わして近づけさせないことも大事ですから」
「は~、なぁハンナはん、聞いてもええか?」
「はい?」
「ハンナはんって本当に生産職なんか?」
「どっからどう見ても生産職ですが!?」
アルルちゃんからなぜか疑惑の目を向けられました。
おかしいです。アルルちゃんは私が【アルケミーマイスター】だって知っているはずなのに!?
しかもですよ。私が生産職だって思ってないのはアルルちゃんだけではないんです。
ゼフィルス君ったらこのギルドバトルに参加するとき、初参加のアルルちゃんにこう言ったんです。
「初めてでも大丈夫だ。ハンナに教えてもらうといい。ハンナはこう見えて、ギルドバトルの経験が豊富だ!」
「ハンナはんは生産職やったよね!?」
頼りにされているのは嬉しいです。ですが、どう考えても戦力としてカウントされているみたいなんですよ。
おかしいですよね?
私は少し遠い目をして空中に浮かぶ巨大スクリーンを見ました。
このアリーナの至る所を中継してくれているこの巨大スクリーンには、今まさに〈ギルバドヨッシャー〉を追い詰め、そしてその拠点を陥落させるところだったのです。
「ほんまかいな……。あの〈ギルバドヨッシャー〉の拠点を落としてもうたで!」
同じくスクリーンを見ていたアルルちゃんが度肝を抜かれたと言うように叫んでいました。
あ、その感じマリー先輩に似ています。そんなどうでも良いことが頭を過ぎりました。
なぜ私たちが〈ギルバドヨッシャー〉とギルドバトルをすることになったのかは、ちょっとよく分かりませんが、ゼフィルス君がオーケーしたのが原因だというのは分かります。
〈ギルバドヨッシャー〉とはいつかギルドバトルしようぜ、という約束をしていたそうなのですが、それは当り前ですが戦闘職同士でのこと。でもいつの間にか〈エデン〉はフル参加の総力戦をすることになっていたんです。それが生産職である私や初参加であるアルルちゃんが参加している理由でした。
やっぱりよくわかりませんね。
「あ、みんな帰って来ます」
気が付けば周囲に転移陣。
相手の拠点を落としたことで仕切り直し、全員が一度自陣拠点に戻された形ですね。
「〈ギルバドヨッシャー〉の拠点、落としてきたよー!」
「よくやってくれたな!」
ミサトさんの掛け声にゼフィルス君が返します。
点数は〈エデン〉の大幅有利でした。
これもゼフィルス君が練った作戦がぶっ刺さったからだそうです。
これ、私たちが戦わなくてもいいのでは? と思いましたがせっかく参加したのですからちょっとはゼフィルス君の役に立ちたいというのが乙女心です。
そしてその場面は、決戦でやって来ました。
なんと〈ギルバドヨッシャー〉が〈エデン〉の防衛網を縫うように突破してきたんです。
それはもう、〈エデン〉の弱点が分かりきっているかのような見事な突破だったみたいなんです。
そこでそれを止めるために向かったのが――ゼフィルス君でした。
「俺が止める。あとは頼んだぜリーナ」
「ご武運を、ゼフィルスさん」
「『英勇転移』!」
そう言って転移していったゼフィルス君はかっこよかったです。
直接言われたリーナさんなんてたっぷり3秒はゼフィルス君が消えた位置を見つめていましたもん。
そしてゼフィルス君は見事に有言実行し、敵中において相手の速度の要だった2人と、〈ギルバドヨッシャー〉のギルドマスターを倒したのでした。
これには私もアルルちゃんも、いつの間にか来ていたニーコちゃんも大はしゃぎ。
抱き合って飛び跳ねました。
やっぱりゼフィルス君はかっこいい!
でも優勢も束の間。
相手はギルドバトルで学園一とも言われたギルドです。
なんとすぐに持ち直し、敵中に孤立したゼフィルス君を追い詰め始めたのでした。
「あ、あわわわ! ゼフィルス君が大変! 助けに行かなくちゃ!」
「は、ハンナはん、ちょ、無謀や!?」
「ちょ、この手は何!? なんでハンナ君はぼくの手を掴んで引っ張ってるの!?」
「アルルちゃん、ニーコちゃん来て! 一緒にゼフィルス君を助けるよ!」
「無謀やで!?」
「ぼくなんて一瞬でやられてしまうよ!?」
これにはアルルちゃんもニーコちゃんも反対の声を上げました。ですがただ1人、リーナさんだけは反対の声を上げなかったのです。
「ハンナさんに任せますわ! 急いで現場に急行してくださいまし!」
「はい!」
「うそやん!?」
「まじやん!?」
むしろ出撃を命じてきました。これが信頼というものです。
でもやっぱり、みなさん私のことを戦力と見てないかな? とちょっとだけ思いました。
走って現場に急行している最中に私はアルルちゃんとニーコちゃんに大量の爆弾を渡します。
「これを投げてください。容赦しないで、いくらでもありますから!」
「これが、ハンナはんの秘密兵器か!」
「え? これって勇者君まで吹き飛ばしてしまうのでは?」
あ、ゼフィルス君は狙わないよう言っておかないと!
そうして慌てて向かったのですが、結局の所取り越し苦労でした。
私たちが到着したときには他のメンバーがほぼ到着していて〈ギルバドヨッシャー〉を囲っていたからです。
あれ? これって勝負が付くやつでは?
「楽しかったぜ〈ギルバドヨッシャー〉これで王手だ――総攻撃!」
ゼフィルス君がそう言った瞬間、〈エデン〉の総攻撃が始まったのでした。
「やむを得ない。撤退だ!」
「てったーい! てったーい!」
あ、相手は撤退を選択するみたいです。
出来る限り倒さないと。
「アルルちゃん、ニーコちゃん、最後の場面だよ! いっぱい投げ込んで!」
「わかったで! そりゃあ!」
「ぼくは投げるのが苦手だから全部アルル君が使ってくれたまえ。ぼくは普通に銃で撃ってるよ」
「わかりました!」
「わ、生産チームがいる! って狙われてるよ!? 『ミラークロスバリア』!」
「ありがとうございますミサトさん! アルルちゃん、ニーコちゃん、このバリアの後ろから」
「了解や!」
「ターンターンターン!」
ミサトさんが私たち紙装甲組に気付いてフォローしてくれました。
ミサトさんが張ったバリアの後ろに回ってどんどん爆弾を投げたり銃撃したりします。
「いいぞ! 次はあのハンマー使いを狙うんだ! あれは攻城破壊武器だ!」
ゼフィルス君の言葉に対象をさがします。
あ、居ました! しかもちょうど私が狙える位置です。ゼフィルス君の役に立つチャンスです! 全力攻撃です!!
「えい! えい! えーい! ――“錬金砲”発射!」
「ちょ、まっ――あびゃるばー!?」
「やったよー!」
やりました! 1人だけですが、倒せましたよ!
「なんであれ狩れるんや? ハンナはんはいったいどうなってんねん」
「相手はギルドバトル最強、Sランクギルドのメンバーなんだけどね? なんで生産職が倒してるんだろうね」
アルルちゃんとニーコちゃんが小声でこそこそ喋っていましたが追撃を仕掛ける私には聞こえませんでした。
そしてついにブザーの音が響きます。
結果は当然――〈エデン〉の勝ちでした!




