#201 教室のセルマ。ゼフィルス君と混浴って本当?
楽しかった温泉旅行もあっという間に過ぎてしまい、帰還することになりました。
「いいか~帰るまでが旅行だぞ? というわけでこれからボスを撃破しに行こう!」
「「「「おおー!」」」」
たっぷり楽しんでさあ帰還、となりましたが少し寄り道してボスを屠ってから帰りました。
これが〈エデン〉の日常です。
翌朝。
今日から冬休みが明け、学園再開です。
昨日は部屋に帰った後あまりに静かすぎてしまってなんだか寂しくなってしまいましたが、学園が再開してまた騒がしくなってきましたのでそれもどこかへ吹っ飛びましたよ。
「う~ん。久しぶりの校舎ですね」
「ハンナさんおはようございますわ」
「あ、アルストリアさん。おはようございます。昨日ぶりですね」
校舎を前になんだか深呼吸したくなって少し懐かしい気分を味わっていたら後ろからアルストリアさんがやってきました。今日は珍しくシレイアさんは一緒ではないみたいです。
「今日はシレイアさんは一緒じゃないんですか?」
「ええ。昨日の夜、なんだか寂しくて眠れないとメッセージがありましたの。私は寝てしまっていたので今日気が付いたのですが。どうやら寝付けなかったみたいですわ」
どうやら寂しくなってしまったのは私だけではなかったみたいです。
あれ? ということはシレイアさんは遅刻では?
「一応部屋をノックして起こしておきましたから大丈夫ですわ。いえ、間に合わないかもしれませんけど」
「ほへぇ」
まだ時間に余裕はあるとはいえ女の子にとって朝の時間はとても貴重なんです。
シレイアさんが慌てて駆け込んできた時用にブラシと朝ご飯のパンくらいは用意しておいた方がいいかもしれませんね。
そのまま珍しく2人で教室に入ると突然「ガタッ」と音がしました。何事でしょう?
「は、ハンナさん、アルストリアさん。お、おはよう」
「あ、セルマさん。おはようございます」
「おはようございます。セルマさん、どうかなさったんですの?」
音の正体はセルマさんでした。
なんとなく目の焦点が定まっていないような、ふらふらしたような姿で少し心配になります。
そのままふらふらと私――ではなくアルストリアさんの方へ向かうとその両肩をガシリと掴んだのです。
「アルストリアさん、聞いてもよろしいかしら?」
「な、なんですの? セルマさん、凄い迫力ですわよ?」
「ねぇ、なんだか噂で聞いたのだけど、ゼフィルス君と旅行に行ってあまつさえ混浴したって本当? 嘘よね?」
「あ、ああ、そのことですのね。それでしたら本当で――」
「みゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
アルストリアさんの答えを聞いたセルマさんが突然絶叫しました。
「セルマさん、落ち着いてください!」
「そんな、あの噂が事実だったって言うの!?」
私たちの言葉が聞こえていないのか、セルマさんはクラッとして教室の壁に寄りかかると、まるで儚いお嬢様のようにショックを受けた表情をしました。
そこへシレイアさんが教室に入ってきます。
「ま、間に合いまひたか~?」
「安心してくださいなシレイアさん、もう少し時間がありますわ」
「セーフですシレイアさん」
「よ、よかったでしゅ~」
私たちが温かく迎えます。シレイアさん、どうやら遅刻しそうだからって走りながらパンを食べてきたみたいです。わ、ワイルドですね。
でも誰ともぶつからなかったようで良かったです(?)。
そこへふらっと近づくセルマさん。
「シレイアさん、お、おはよう」
「はぁ、ふぅ。あ、セルマさん、おはようございます」
「ええ。それでね――」
「ふえ?」
またもセルマさんの手がシレイアさんの両肩に!
「真偽を確かめたいの。シレイアさん。私はあなたを信じているわ。ゼフィルス君と一緒に混浴なんてしてないわよね?」
「あ、聞いてくださいセルマさん。私、冬休みに〈エデン〉と一緒に旅行へ行くことになりまして、みんなで温泉に入ってきたんです! びっくりなことに外は混浴でした!」
「う、嘘よぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!? ハンナさん!?」
「は、はい!?」
「今の話は本当なの!?」
「は、はいそうです!」
なんだか重要なことを伝え忘れている気がしたのですが、セルマさんのもの凄い剣幕に私は質問に対して簡潔に答えました。
「な、な、なあああああああああ!?」
またふらりとよろめいたかと思うと、朝の教室にセルマさんの絶叫が轟いたのでした。
その後、ゼフィルス君と混浴したのは水着を着用してのことだと改めて説明して納得を―――得られませんでした。
「私もゼフィルス君と一緒に旅行に行って温泉に入りたーい!」
また、どんなことをしてきたのかと私たち3人に根掘り葉掘り聞いたセルマさんでしたが、その後何やらダメージを受けて机に突っ伏して動かなくなってしまったのでした。




