#195 Aランク〈エデン店〉リニューアルオープン!
シエラさんがちょっと目を離した隙にゼフィルス君が学園のトップクラスギルド〈キングアブソリュート〉を始め、〈百鬼夜行〉、〈千剣フラカル〉、〈獣王ガルタイガ〉などなど、名だたる人たちとなんか合同攻略で未踏破のダンジョンを攻略しようぜと約束しちゃった日から一夜明け、私たちはゼフィルス君のことは置いといて自分たちのことを頑張ることにしました。
うん、シエラさん、頑張ってください。
いつもは朝ゼフィルス君のところに行って一緒に朝ご飯を食べますが、今日は〈エデン店〉のリニューアルオープンのため朝から〈エデン〉のギルドハウスへ来ています。
「これが、新しい〈エデン店〉なのですね」
「またよろしくお願いいたします。セラミロさん」
「こちらこそ。精一杯務めさせていただきます」
セラミロさんも朝から気合い十分ですね。
改装が終わった日の翌日にリニューアルオープンというのも急な話ですが、学園は早く〈エデン店〉に通常営業を再開してほしいみたいで、セラミロさん以外の従業員さんや品出しの従業員さんがたくさん来ていたりします。
「おはようございますハンナさん、ご指導よろしくお願いしますわ」
「おはようございますハンナ様! えっとえっと、がんばります!」
「アルストリアさんとシレイアさんもおはようございます。今日からまたこっちで頑張りましょうね」
「「はい!」」
2人は上級職になったばかりなのでモチベーションが凄いですね。
まずは店内を確認します。
ほとんどの品出しは学園がプロのインテリア系職業の方を呼んでやってくれたので、私たちはリストの見本がちゃんと出ているかをチェックするだけです。
〈エデン店〉は見本を見て番号を注文票に書き、レジで現物を出して売るというスタイルを取っているので品出しされているのは見本が数個だけですね。
もちろん見本と言ってもほとんどの商品が本物です。これと同じ物を売りますよという意味になりますから、イラストや模造品の見本を置いているところは少ないんです。そういう処置をするのは貴重な物だけですね。
そのためチェックはそれほど手間取らずに進みます。3人で手分けすれば余裕ですね。
「改めて明るいところで見ると、とんでもないお店になりましたわね」
「そうですね」
アルストリアさんが改めて店内を見て呟きました。
それに私も頷きます。
〈エデン店〉は売り場を大きく区分けし、レジと商品エリアを分断と言っていいくらい離しています。
商品エリアは私たちが居るところで、ちゃんと商品が並んでいます。ここは普通のエリアですね。
特殊なのがレジ。レジは人を並ばせるための長~いレーンが伸びています。これがレジエリアですね。下には案内と線が引かれ、手すりで遮られて割り込みが出来ないようにしているほか、2列から5列までレーンを稼働できるようになっています。
このレーンの先にレジがあり、レジは最高で10台完備しています。これが〈エデン店〉の秘策です。
ゼフィルス君はこのレーンを「某有名なアトラクションに並ぶ列みたいだ」と言っていましたが、どういう意味なのでしょう?
「チェック完了しましたです」
「こちらも終わりましたわ」
「私も終わりました。では、私たちは生産作業に入らせてもらいましょう」
「「はい」」
〈エデン店〉の従業員でチェックし、問題なしだったのでセラミロさんに報告して、私とアルストリアさんとシレイアさんは商品作りのために工房へ向かいました。
実はあの〈学園出世大戦〉で色々と注目を浴びる上級消耗品があったみたいで、マリアさんやメリーナ先輩から「爆発的に売れる可能性が大です。たくさん作っておいてください」とリストを貰っていました。
「ではまず〈オール耐性ポーション〉からですね。上級の属性耐性の方も作ってしまいます」
「私は〈エリクサー〉を作りますわ」
「わ、私は〈エリクシール〉を」
役割分担して作業開始です。
特に〈学園出世大戦〉で猛威を振るったとされるのが〈オール耐性ポーション〉と〈上級耐◯ポーション〉の各属性でした。
〈オール耐性ポーション〉は状態異常に対してとても強くなるもので、もう1つの方は属性に対して強くなるポーションです。〈上級耐火ポーション〉なら火属性に大きな耐性を得るポーションですね。
これ、両方とも上級ポーションなので恐ろしくお高いのですが、ギルド〈筋肉は最強だ〉がこれを使ったことで手に負えなくなり、一度はゼフィルス君すら退くことになったほど強力なポーションなんです。
おかげで学園では「あの〈エデン〉を一度でも退かせたポーション」と爆発的に人気が急上昇しているとのことでした。
大量生産にビルドを振っている私が最優先して作らなければいけません。
作製していると、お店の方が騒がしくなってきました。
リニューアルオープンが始まったようです。
「失礼します! ハンナさん、〈オール耐性ポーション〉と上級の各属性耐性ポーションは出来ていますか!? 在庫がピンチです!」
「もうですか!? まだリニューアルオープンしたばかりですよね!?」
マリアさんが勢いよく錬金工房に入ってきました。シレイアさんなんか跳び上がるほど驚いています。
「やはりと言いますか、爆買いする方が増えています。それで在庫は?」
「ええ……あれって1本6桁するポーションなのに……。えっと作った物はその〈空間収納鞄〉に入っています。バッグ1つで1000本ずつ分けてますね」
1本6桁のポーションが1000本売れると億になります。なんでもない〈空間収納鞄(容量・中)〉がなんだか高級キャリアケースに見えてきました。目を擦って幻惑を振り払います。
「助かりました。これは持っていきますね。ハンナさんはどんどん〈オール耐性ポーション〉と上級の各属性耐性ポーションを作り続けてください。素材はこの鞄の中にたくさん入っておりますわ。――これは高値で売れますよ。うふふ」
「は、はい! マリアさんも疲れたら休んでくださいね?」
「ありがとうハンナさん、では失礼いたします」
マリアさんは上機嫌で凄まじい速度で去って行きました。すごい、去って行くときの姿が霞んで見えましたよ。ゼフィルス君たちの速度に負けていないのではないでしょうか?
「あ、嵐のようでしたわね」
「マリアさん、あんな上機嫌なの初めて見ました」
「よ、よっぽど売れているみたいですね」
どうやらAランクギルドになった〈エデン店〉も、順調に滑り出したみたいです。
 




