#188 〈学園出世大戦〉Sランク戦を観戦。
土曜日なので本日3話投稿!
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ミーティングはAランク戦の話がメインなので、参加しない私は錬金部屋に戻って生産作業に移ることにしました。
大量に無くなったのでストックをたくさん作っておかなければなりません。
魔石がずいぶん減った気がしましたが、まだたくさんありますね。ドロップさせすぎたでしょうか?
いいえ、これからもどんどん減っていく気がしますしもっとたくさん集めないと。山になるくらいに、はやり過ぎかもしれませんね。ほどほどにたくさんとしておきます。
〈真・コテちゃん〉の最終調整が終わった辺りでゼフィルス君から声を掛けられました。
「そろそろSランク戦だ。ハンナも見に行くか?」
「うん! 一緒に行く!」
Sランク戦と言えば現在のAランクギルド、〈千剣フラカル〉、〈獣王ガルタイガ〉、〈ミーティア〉、〈カオスアビス〉が戦う〈拠点落とし〉です。
大物同士のぶつかり合い……なんだかとても緊張しますね。
「観戦席の予約は取ってあるわ」
「さすがはシエラだ」
シエラさんからチケットを渡されてそのまま付いていき、自分の席に座ります。
あ、ゼフィルス君と離れてしまいました。
隣の席はアルルちゃんとカイリさんでした。アルルちゃんは前のめり過ぎるほど目を爛々と輝かせています。
「うちの装備をどう扱うのか、よーく見させてもらうで!」
アルルちゃんは他の上位ギルドにも武器や防具を販売しています。
ですが実際自分が作った武器を使ったバトルシーンというのはあんまり見たことが無いらしいのです。そのためか、アルルちゃんの興味が尽きることを知りません。
「〈獣王ガルタイガ〉は隠密や索敵、罠を多く使うって聞くから楽しみだよ」
カイリさんの注目は〈獣王ガルタイガ〉の動きみたいです。カイリさんもギルドバトルを始め隠密、索敵、罠と様々なサポートをしていますからね。色々学ぼうとしているみたいです。
と思っていたら試合開始みたいです。
ブザーが鳴ると、観客席は大歓声に包まれたんです。すっごい熱気!
優勝候補は〈千剣フラカル〉だとゼフィルス君が言っていましたので、そちらを見ることにします。
凄い風格ですね。リカさんのお姉さん。
Sランク戦というとても大きな試合で堂々と拠点の前に立って待ち構えていました。
最初の戦いは〈カオスアビス〉対〈獣王ガルタイガ〉でした。
〈カオスアビス〉が〈獣王ガルタイガ〉に仕掛けたのです。
「ああ! そっちは罠だ!」
カイリさんが叫びますが試合会場には私たちの声は届きません。
観客席の声はただの歓声や雑音にしか聞こえないのです。
〈カオスアビス〉はそのまま止まらずに進み、そして〈獣王ガルタイガ〉の罠に引っかかりました。
罠による大打撃に追い打ちを掛けるように〈獣王ガルタイガ〉の部隊が攻めに出ます。
その一連の動作がとても練度が高く見えました。
そこでもうほぼほぼ決着が付いてしまうくらいに。
「ほほう。あれはあんな感じに使うんやな。メモメモ」
「すごい。ああやって走りながら罠に嵌めて、そしたら攻撃部隊が飛び込む。メモメモ」
アルルちゃんはどうやら〈獣王ガルタイガ〉の戦闘にとても満足しながらメモを書いています。
カイリさんも同じくメモを取る手が止まらない様子です。
気が付けば〈カオスアビス〉は追い詰められ、最後の手段、なのでしょうか。ギルドマスター同士の一騎打ちが始まっていました。
「うわ、すごい!」
「あ、あの変な攻撃全部弾いちゃうんだ!」
思わずといった感じに私とカイリさんから声が漏れました。
〈獣王ガルタイガ〉のギルドマスター、ガルゼ先輩が、〈カオスアビス〉のギルドマスター、ロデン先輩の縦横無尽の攻撃を、全部弾き返しながら前に進んで行くからです。
あれだけの猛攻を全部防ぐって凄い。私じゃ絶対できないよ。
「あ!」
「決着だ!」
そしてやはりといいますか、ガルゼ先輩によってロデン先輩が倒され、その勢いに乗った〈獣王ガルタイガ〉が〈カオスアビス〉を落として決着しました。
続いて動いたギルドは――〈ミーティア〉です。
〈獣王ガルタイガ〉の大活躍の余韻がようやく冷めた頃に〈千剣フラカル〉に仕掛けたのです。
「わ、わ!」
「ほわああああ!?」
「すっご!」
ぶつかり合いはもうとんでもありませんでした。
〈ミーティア〉の〈ジャストタイムアタック〉。とんでもないでっかい威力の塊。そしてそれを防いだ〈千剣フラカル〉。
開いた口が塞がらないとはこのことです。
武器や防具の性能が見たかったと言っていたアルルちゃんや、〈獣王ガルタイガ〉が気になると言っていたはずのカイリさんも今では〈ミーティア〉対〈千剣フラカル〉の試合に夢中です。
当り前です。こんなの、こんなとんでもない威力のぶつかり合い――これが、Sランク戦!?
あれ? でもあれくらいなら〈エデン〉では割と見かけるような? いえ、きっと気のせいのはずです!
私は頭に過ぎったことをその辺に放り投げて試合に集中しました。
あ、反撃です! 〈千剣フラカル〉から2人の侍さんが飛び出して――結界を斬りました!?
「「「「「わあああああああ!!」」」」」
するともう大歓声です。
そこからの試合は一方的でした。
優勝候補の〈千剣フラカル〉が遠距離戦が得意な〈ミーティア〉の懐に潜り込んで撃破、潰走したところを追撃して拠点まで落としてしまったのです。
一連の動作に無駄の無い、見事な拠点落としでした。
手に汗握る展開です。さすがはSランク戦です。大迫力です。
残りは〈千剣フラカル〉と〈獣王ガルタイガ〉。
どちらもとても強いギルドです。
どっちが勝ってもおかしくありません。
気が付けば私も、アルルちゃんも、カイリさんも手に汗握って次の展開を見守っていました。ですが、予想外の出来事が発生。
〈獣王ガルタイガ〉が棄権したのです。
どうやら〈獣王ガルタイガ〉はSランク戦をギルドメンバーに体験させたいためにSランク戦に参加したようで、最初から優勝には興味なかったとのことです。
ここで〈千剣フラカル〉と戦い、〈獣王ガルタイガ〉が優勢で棄権すれば、Sランクになった〈千剣フラカル〉の立つ瀬がなくなってしまうため、このタイミングで棄権したみたいです。
「ん~、なんや、最後は少し肩すかしやったけど、結果は順当やったな」
「〈千剣フラカル〉がSランクの仲間入りですかぁ。ゼフィルス君の言ったとおりでしたね」
「は~。すっごく熱かった~」
アルルちゃんが頷き、カイリさんは伸びをしながらも感嘆の溜め息をついていました。
最後にSランク戦勝者の授賞式をする〈千剣フラカル〉を見て、Aランクギルドの席が1つ空いたのだと実感します。
次はいよいよ、〈エデン〉のAランク戦ですね。




