#174 テスト期間突入。私だけ研究員さん3人付き!?
テスト期間が過ぎるのは早いものです。
期間中、私はゼフィルス君に助けを求めました。
「いつも美味しい朝食や夕食を用意してくれるハンナが困っている。なら、それを助けるのは俺の使命だ!」
ゼフィルス君は強い味方です。頼りになります。
でもあまり気合い入れなくてもいいよ? 手加減してね?
ゼフィルス君の指導はハードでした。
でも分かりやすいです。
本当、一般教科から〈錬金術課〉の専門教科まで、ゼフィルス君はなぜこんなに知っているのでしょう? 私より知っているって……うん、ゼフィルス君だもん、仕方ないよね(思考放棄)。
学園が終わればそのままギルドで勉強会、それが終わればゼフィルス君の部屋で勉強して、そんな1日中勉強づくしのテスト期間でしたが、なんとか乗り切りました。
座学はとても頑張りましたから、きっと良い点数が取れていると思います。
でも私の頭からは湯気が出ていると思います。
「プシュー」
横を見ればシレイアさんも机に突っ伏して煙を出していました。
毎回見る光景です。
「シレイアさん、大丈夫ですか?」
「あ、アルストリアしゃん。水を……」
「はい、お水ですね。こぼさないよう気をつけてくださいまし」
「ふぁい……」
頭が熱くなったら冷たい水を飲んでクールダウンするべし。
頭が熱くなると思考に靄が掛かるんだそうです。
そうゼフィルス君が言っていましたので私も常に冷たい水を携帯しています。
ごくごく。
シレイアさんと一緒に水を補給すると、次第に煙は収まっていきました。
「た、助かりました~」
「生き返りますね~」
無事、復活です。
「お疲れ様ですわハンナさん、シレイアさん」
「アルストリアさんもお疲れ様です」
「です~」
「シレイアさんは相変わらず溶けかけですわね」
「今冷たい水を飲んだので次のテストには復活していますよ。アルストリアさんはどんな感じですか?」
もちろんテストの話です。
「もちろん好調ですわ。ハンナさんは? その様子ですとかなり自信があるのではなくて?」
「そうなんです! 今回はバッチリ勉強してきました!」
ゼフィルス君との勉強のおかげで、今回は絶好調です。多分、全教科90点前後は取れるんじゃないかと自画自賛しています。
それでもアルストリアさんには全然勝てないと思いますけど。
アルストリアさん、平気で90点台後半を連発してきますからね。
ううん。それなら実技の方で挽回すれば良いんです!
アルストリアさんもシレイアさんも実力がかなり高くなってきていますが、まだ下級職。
私は上級職なので負けることは出来ません。気合いを入れないと。
「ようし」
がんばるよー。
そしてチャイムが鳴り、最後のペーパーテストが始まりました。
明日からは実技です。頑張ります。
翌日、教室に入るとそこには大きな錬金セットが11個おいてありました。
ここら辺は前の時と同じですね。11個なのは〈錬金術課〉の学生が31人に増えたからです。セルマ先輩が編入してきましたから。
そしてまた3人グループで分けるのでしょう。
チャイムが鳴るとアイス先生と13人の白衣を着た研究員の方が入ってきます。
13人?
「ではハンナさんはこの錬金セットを使ってください。他の方は3人1組のグループで1つの錬金セットを使ってくださいね」
ちょ!? アイス先生、私だけ1人なの!?
私に与えられたのは、なぜか1つだけ異彩を放っている巨大錬金釜でした。さらに研究員の方が3人います。
他のところは1人なのに、なんで私のところは3人!?
「気にしないでほしいハンナ氏。私はラミィエラス、ラミィ研究員と呼んでくれ。この研究員たちのリーダーを務めている」
「は、はぁ」
「早速だがハンナ氏には『上級錬金』を使ってもらいたい。レシピはたくさん持って来たぞ。安心してほしい」
えっと、なにを安心すればいいのでしょう?
どうやら私だけ別のグループ、えっとグループじゃないよね。個人でやることになったのは私だけ上級職だからみたいでした。
確か、【アルケミーマイスター】って私だけって聞いたことがあります。
その能力を見逃さないための配置なのだそうです。
「さあハンナ氏、どうぞ、好きなようにやってみてくれ。そうだな、まずはこれなんかどうだろう?」
好きなようにやってみてくれとは?
その言葉をすぐに覆したラミィ研究員が1枚のレシピを差し出してきました。
あれ? これってテストだよね? う、ううん。大丈夫かなぁ。
チラッとアルストリアさんたちのグループを見ると、そこにはアルストリアさん、シレイアさん、セルマさんの3人グループが順番にテストを受けていました。ちゃんと自分でレシピを選んでいるように見えます。
アイス先生は、いろんなグループのところに顔を出している最中でした。
「さあ、ハンナ氏。どうぞ」
「は、はぁ」
止める人が居ないから暴走しているとかじゃないよね? 微妙に目が血走っていて怖いですよ?
レシピを見てみると、そんなに難しくないものだったのでちゃちゃっと仕上げてしまいます。
「出来ました」
「はっ、早っ!!」
出来た物を渡すとラミィ研究員がとても驚いていました。
2人の研究員は肉眼では見えないほどのペン速でレポート用紙にメモを取っています。
えっと、これで終わりでしょうか? でも物足りないような。
うーん、もう1つくらいやってもいいよね?
「次は、えーと、これにしますね」
「つ、次!?」
「? はい。あ、大丈夫ですよMPには自信がありますから」
「いや、そういう意味じゃなくてね?」
「じゃあ始めちゃいますね」
そう言って私は作業に入りました。するとラミィ研究員も含めた3人が一生懸命メモを走らせています。
それに構わず私は自分のペースでちゃちゃっと作りました。
錬金はリズムが大事なところがありますからね。ペースを乱しちゃダメなんです。
「も、もうできてしまったのかい!? し、しかもこの数は!」
「はい。ちょっと余裕があったので、一気に20個ほど作らせてもらいました」
ギルドで錬金している難易度に比べたら大したことはありません。
一度にこの10倍作る時もありますから。
でもラミィ研究員も他の2人もなぜか驚愕しています。
そんなに難しくないですよ?
「で、ではこれを頼めないかい?」
「これですか? 出来ますよ?」
「で、では頼む。もちろん上手く出来れば点数を加算しよう」
点数を加算しよう。
なら、頑張るしかないですね!
それから、完成する度にラミィ研究員からレシピを渡され、結局ラミィ研究員が用意したレシピを全部作ってしまいました。
ラミィ研究員と他の2人の研究員さんが顎が外れたような顔をしていたのが印象的でした。




