#171 攻めてきた敵、コテちゃん実戦初導入でボン!
シャロンさんの能力は圧巻でした。
僅か十数分で、本拠地の周りが要塞化されてしまったのです!
しかも本拠地の隣接マスまで全て城塞で囲み。小城を取らせなくしてしまったのです。
これでは敵さんは進入するどころか、本拠地の隣接を取ることも出来ません。
そして防壁の内側にはリーナさんとラナ殿下がいます。
遠くの敵さんを遠距離から一方的に攻撃できる上に、敵さんの居場所もリーナさんが発見してしまうという凶悪コンボです。
こ、これって本当に良いのでしょうか? あまりにも一方的じゃ?
そう唖然としていたところにシャロンさんと護衛のラクリッテちゃんが戻ってきます。
「ふぅ~。防壁の召喚、全部終わったよ~。何もなければ隠しちゃうけれど、大丈夫?」
どうやら要塞の建築(?)が終わったようです。
隠すとはなんでしょう?
「ええ。構いませんわ。シャロンさん、お願いしますわね」
「オッケー。行くよー『見た目の変わらないお城』!」
「え、えええええ!?」
「これで外からは要塞が建ってるって分からなくなったよ」
なんと驚きです。
ただでさえ「ここってどう攻めればいいんだろう?」というような要塞だったのに、さらに外側からは見えなくなってしまいました!? 幻術系の魔法みたいです。
これでは要塞が出来ているって分かりません!
ということは、まずはこの幻術を解かなければいけないってことですよね。
幻術を解いたら要塞がこんにちはするんですよね?
え? 近づいたらラナ殿下の宝剣が一方的に飛んでくるんですよね?
ゼフィルス君、これとんでもなさ過ぎだよ!?
そして思っていたことはそれからすぐに起こりました。
「総員、配置についてくださいませ! 東側から敵影接近ですわ!」
多分斥候です。
リーナさんの指示で東側の物見台に登ると、〈望遠鏡〉を使って確認します。
確かに、敵さんが2人迫ってきていました。
首を捻っているように見えます。
完全に幻術に騙されていますね。
あ、1人が接近してきました。私たちの方に来ます。
なんだか、ドキドキしてきました。
「落ち着いてくださいハンナさん。相手はたった1人です。それもまだこちらのことを把握していませんわ」
「は、はい!」
リーナさんに諭され、深呼吸して気持ちを落ち着けます。
そこへ、頼りになる味方がやってきました。
「やほーハンナちゃん守りに来たよー」
「ま、守りは私たちに任せてください!」
シャロンさんとラクリッテちゃんです。
2人が一緒に居てくれたら百人力ですよ!
「どうやら1人は遠くから様子見、もう1人は接近して偵察のようですわね。相手はおそらく斥候職、この隠された要塞に何かを感じたのかもしれませんわ」
「『見た目の変わらないお城』だって本職の人ならバッチリ見破ってくるもんね。シズさんとかカイリちゃんとか」
「ですが、相手はまだ見破ってはいませんわね。もし見破っていたら即引き返しているはずですもの」
「このお城の外見じゃそうだよね~。造った私が言うのもなんだけど」
はい。シャロンさんが造った要塞は、正直ここまでしちゃうんだというような見た目です。
私もこれを見たら2人で調査しようなんて思いません。
「とはいえもう2人とも射程内に入っているのよね。リーナ、私が狙うのは遠い方よね?」
「はい。宝剣で蹴散らしてくださいませ」
「任せなさい!」
どうやら相手側の2人はどちらもラナ殿下の攻撃範囲に入っているらしかったです。相変わらず凄いです。
そしてついにその時が来ます。
「む、来たわ」
「「はい!」」
二手に分かれたうち、威力偵察をしようとしていた1人が本拠地の手前に着いた段階で何かに気が付きました。
「気が付かれましたわね。合図をお待ちになってください」
どうやら相手はなにも見えていませんが、何か、防壁を感じ取ったようで拳を振りかぶり、そして壁を殴りつけたのです。
瞬間『見た目の変わらないお城』の効果が失われ、私たちも行動に移ります。
「しまっ!」
相手はステゴロの男子君でした。
「カモフラージュが解除されたわ! ラクリッテちゃん、行くよ! 『ディザイアランパート』!」
「ポン! 夢幻の一塔――『夢幻塔』!」
「『防壁エリア集中強化』!」
「―――!?」
それは早業でした。
シャロンさんとラクリッテちゃんの魔法により、ステゴロ男子君の四方が壁に囲まれたのです。
ほぼ同時にラナ殿下も遠くの敵に光の宝剣を放っていました。
作戦通り、私も行きますよ!
「このアイテム、初の実戦なのでドキドキしますね。行ってきて、〈コテちゃん〉!」
「―――!」
それは私が最近ずっと試行錯誤していたゴーレム型アイテム。コテちゃんでした。
丹精込めて作り上げたコテちゃんを導入です!
囲った空間の上から飛び降りるコテちゃん。相手に逃げ場はありません。
「なんじゃこりゃー!」
「―――!!」
敵さんの叫び声が聞こえてきました。
そうして鳴り響く悲鳴と「ドカン」「ボカン」「バキ」「ドキ」「パコーン」などの打撃音。
物見台からそーっと中を覗くとコテちゃんの勇姿が見えました。
「すっごく殴り合っています! コテちゃんがんばってー」
「す、すごいです! 結構動けるのですね」
ラクリッテちゃんも驚いていました。これが上級素材をふんだんに使って作ったコテちゃんの力です。
そうえっへんと胸を張りたいところですが、だんだんとステゴロ男子君が持ち直してきてコテちゃんが劣勢になってきました。
コテちゃんの動きはまだ単調なんです。
「あわわ! このままじゃコテちゃんが、なんとかしないと!?」
このままだとコテちゃんが負けてしまいます!?
援護しないと!
な、何か強力なアイテムは――あ、いいのがありました!
「え? ハンナちゃん、それ〈上級下位級・火爆弾〉じゃ」
「えーい!」
「「あ」」
私の最高傑作の爆弾、その1つを投げました。
四方が囲まれた空間に落ちていきます。そして。
―――ボンッ!!
「うわーお」
シャロンさんがおったまげたような声を出しました。
見れば効果は想像以上でした。
ステゴロ男子さんは壁に激突していてダウン。
そしてコテちゃんもダウンしていたんです。
「えっと、これやっちゃってもいいのです?」
「はわわ、コテちゃんまでやっちゃいました!?」
「ラクリッテちゃん、ハンナちゃん、勝負は非情だよ。攻めてきたのは向こうだもん、全力で撃っちゃおう!」
「わ、分かりました!」
「コテちゃんごめーん!」
コテちゃんまで一緒にフレンドリーファイアしてしまいました。
後でまた修理するから許して。
コテちゃんに謝りながらも手は止めません。
侵入者を撃破するため、物見台の大砲やバリスタを使って集中攻撃し、なんとかステゴロ男子さんを退場させることに成功したのです。
や、やりましたー。




