#159 〈迷宮防衛大戦〉〈ヘカトンケイル〉戦観戦!
日曜日なので本日3話投稿!
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「さあ今年もやってきました! 学園祭3日目の大イベント、〈迷宮防衛大戦〉のお時間だーー!! 襲い来る最強のボスから君たちは学園を守ることが出来るのかーー!?」
「わあああああ!!」
大迫力の歓声が辺り一帯に響きます。司会の人のノリの良い発言が熱気を生んでいました。
「わ、わわ。錚々たるメンバーでしゅ!?」
「圧巻ですわね」
シレイアさんが噛み噛みになりアルストリアさんも圧倒されています。
それもそのはず、ここ第一アリーナには〈迷宮防衛大戦〉の出場者が、内外合わせて5000人も出場しているからです。
「あ、勇者君がいるじゃない。ほらあそこ」
「あ、はい。みんなここに出場するって言っていましたから」
「〈エデン〉のみなひゃんが揃ってましゅ!」
「まったく違和感が無いのが恐ろしいですわ」
ミーア先輩の指さす場所には私の所属するギルド、〈エデン〉のメンバーたちもいました。
ほぼ全員、32人もの人数が揃っています。
私? ほら、私は生産職ですから。それにアルルちゃんも出場していません。
生産職以外のメンバーは全員出場していますけど、不思議と〈エデン〉のみなさんは周りに居る人たちと比べて違和感がないのです。さすが過ぎます。
ここはアリーナの中でも最強のレイドボスが登場するという第一アリーナです。
アリーナはここを含めて7箇所ありまして、第一アリーナが一番大きくて、第七アリーナに近いほど小さくなります。
「ルールは簡単! これから登場するのはこのアリーナで最強の防衛モンスターの一体〈ヘカトンケイル〉! そしてモンスター側に寝返った悪の構成メンバーが100人! これを選手全員が協力して倒す! ただそれだけです! ここに集まる5000人の選手たちは果たして襲い来る〈ヘカトンケイル〉たちを倒すことが出来るのか!? これから細かいルールを説明していきます!」
司会のお姉さんの言った通り、ここで最強のボスを倒すのです。
ですが油断は出来ません。なにしろ、出場者は5000人です。つまりは5000人がぶつかって倒さなければならないくらい強いボスということです。
さらに恐ろしいのは今回登場する〈ヘカトンケイル〉への勝率は1割を切るらしいです。
5000人も居て1割? とんでもないボスです。
でもその代わり、倒せれば最大の栄誉を持って称えられます。
もちろんこの第一アリーナだけではなく第七アリーナまで7箇所で行なわれていますが、この第一アリーナのボスが一番強いらしいです。
そのため、腕に覚えがある強者がこの第一アリーナに来るそうです。
そんな中、学園で最年少の1年生ギルドがその中に混じっているのに違和感が無いのがすごいです。もちろん〈エデン〉のことです。
司会のお姉さんがルールの説明を行ない、いよいよ試合開始が近づいてきました。
超大型のボスが登場します。
「では、〈ヘカトンケイル〉の召喚です! 先生、お願いします!」
無言の先生が頷くと、とある装置を使って〈ヘカトンケイル〉を召喚しました。
一言で言えば、巨大。
手が無数に付いている巨人みたいなモンスターでした。高さは観客席を軽く超えています。司会のお姉さんの話では40メートルもあるそうです。
「お、大きい!」
「ひゃあ!」
私とシレイアさんは思わずお互いを抱きしめました。
あんなのダメです。相手にしてはひとたまりもありませんよ!?
しかし、さすがは名だたる出場者の方々です。臆する人は誰もおらず、試合開始と共に一気に挑んでいきました。
そして〈ヘカトンケイル〉がその大量の腕でなぎ払うと、一気にやられていきます。
「とんでもないですわ!?」
「こんなのどうやって勝つの!?」
アルストリアさんやミーア先輩が悲鳴を上げました。
普段ダンジョンに潜らない方々には刺激が強すぎたみたいでそこら中から同様の声が聞こえます。
正直、本当にこんなのどうやって勝つのだろうって思います。
でも、私は今までいくつものダンジョンのボスを経験してきて知っています。
あんな化け物みたいなボスでも、ちゃんと倒せるんだって。倒せる人がいるんだって。
「あれは、〈エデン〉!」
「〈エデン〉が馬車を4台使って行ったーー!! 流れが変わったぞ!?」
もちろんそれは私の仲間、〈エデン〉のメンバーたちです。
なんとゼフィルス君たちはいつもダンジョンで使っているダンジョン馬車を4台使い爆走。寝返った悪の100人へ攻撃。
出場者に有利な状況を作り出し、一気に流れを持って行ったのです。
寝返った悪の100人は全て狩られ、これによって出場者側が徐々に〈ヘカトンケイル〉へダメージを蓄積させていきました。
「す、凄まじいですわ〈エデン〉は。これが〈エデン〉の戦っている姿なんですわね」
「か、かっこいいです」
初めて見る〈エデン〉の戦っている姿にアルストリアさんとシレイアさんが目をキラキラさせていました。
「あ、〈ヘカトンケイル〉の動きが止まりました!」
「第二形態ってのになるみたいよ」
HPがある程度減ると形態が変化するようで、ミーア先輩がパンフを片手に教えてくれました。
〈ヘカトンケイル〉の第二形態というのは、なんというか、暴走馬車を何倍も怖いものにした姿でした。
「な、なんですのあれは!?」
「せっかく落ち着いてきた退場者が、急激に増えたでしゅ!」
〈ヘカトンケイル〉はその大量の腕を使い、うつ伏せになって地面を大量パンチしながら進み始めたのです。進行方向にいる人たちは全て退場してしまうほど圧倒的な進行でした。
再びこんなの止められる人がいるのかという空気になりましたが、ここで登場するのはまたも〈エデン〉です。
なんと〈エデン〉は高速で走る〈ヘカトンケイル〉の後ろに馬車を使って回り込むと足を攻撃して動きを封じ、背中に登って大量の腕を切断し始めたのです。
「な! な! なあ!?」
「ふえええええ!?」
「何あれすごい!?」
「み、みんな頑張れー!」
アルストリアさん、シレイアさん、ミーア先輩が言葉も出ないくらいの衝撃を受けていましたが、私は慣れていたので被害は軽微。声援を送りました。
大量の腕を切り落とされた〈ヘカトンケイル〉はその後脅威度はグッと低くなり、ほかの出場者からボコボコにされて再び形態変化しました。
「だ、第三形態! 最近はここまで行くこともほとんど無いらしいってパンフにあるけれど」
ミーア先輩の解説。
最終形態みたいで、第二形態でかなりのダメージを負うとこうなるみたいです。
うつ伏せだった〈ヘカトンケイル〉が起き上がりますと、膝立ちになり全身の装備が外れていきました。
何をする気かと思っていると、その鎧は無数の腕の形になって変形し、次の瞬間にはフィールド全体に飛んでいったのです。全体攻撃です!
「ひゃあああ!?」
「こ、こないと分かっていてもビックリしますわ!?」
こっちにも義手が飛んできましたが、観客席に張ってある強力なバリアにより防がれました。
でも防いでくれると分かっていてもビックリするものはビックリします。本当に驚きました!
どうやらこの攻撃は食らうと一発で退場してしまうような強力な攻撃だったらしく、今の攻撃だけで1000人以上の人が退場していました。
びっくりです。
そしてもっとビックリしたのが、今の攻撃を耐えた人たちがいたことです。
もちろん〈エデン〉もその一角です。
多分アレはラクリッテちゃんの塔盾スキルですね。それにシャロンちゃんがバフを掛けたみたいです。
すごい防御力です。全部受け止めたみたいです!
しかも塔盾の後方には塔盾に守られようと飛んできた人たちがいっぱいいました。
圧巻です。これ、あのラクリッテちゃんとシャロンさんで防いだのですか!?
そこから出場者最後の攻勢が始まりました。
さすがに厳選され、ここまで生き残った出場者さんの実力は伊達ではなく、とうとう〈ヘカトンケイル〉を倒すことに成功したのです!
「か、勝ちましたわ!!」
「す、すごいです!?」
「やば! なにこれすごい感動なんだけど! やば!」
「ゼフィルス君、みなさん、すっごいです!」
思わず4人で抱き合ってしまうほどの衝撃的試合内容でした。
余韻ももの凄く、学園祭は大いに盛り上がったそうです。
ちなみにゼフィルス君は〈迷宮防衛大戦〉の貢献度ランキングで1位を取っていました。
さ、さすがはゼフィルス君です。




