#016 ハンナの朝、日常の一ページ。
今日は私の日常をご紹介します。
やっと学園生活にも慣れてきた平日のことです。
私の朝は早いです。
朝5時半には起きます。
「ふみゅ~、ねむねみゅ~」
日が昇っている時間とは言えこの時間に起きるのは眠いです。
学園に来る前、私が住んでいた村では明かりがあまりなかったので早寝早起きが普通でした。
私もいつもこれくらいに目が覚めます。
他のみんなの起床時間を聞いたときは衝撃を受けましたが、習慣は今更変えられません。
寝ぼけながら顔を洗って歯磨きします。
これが終わるとだいぶ目が覚めるので続いて体の目を覚まさせます。
「今日も元気にスラリポマラソン、行くよ~」
私が学園に来てからの日課です。
朝のスラリポマラソンで軽く汗を流すのです。
スラリポとは、えっと『錬金』で大失敗すると起きる現象で、大失敗すると四匹のスライムが発生する現象のことです。
確かゼフィルス君が正式名称を教えてくれましたが、忘れてしまいました。
私はストックしている〈スライムゼリー〉を10個ずつ、並ぶ錬金釜にそれぞれ入れていき、そこに空間収納容器を使って〈泥水〉を注ぎます。
ちなみにこのポット、普通は水を収納するのですが、私は泥水を収納していることは内緒です。
「準備完了~『錬金』!」
錬金釜がピカッと光ったと思ったら中からスライムが這い出てきました。
私はスライムを持っていた両手メイス、名を〈メイちゃん三世〉で叩きます。
「ていていて~い! 『錬金』! ていていー、てーい!」
私のメイちゃんが振るわれる度にスライムがドロップを残して光に還ります。
これがスラリポマラソンです。
生み出しては叩く、生み出しては叩きます!
溢れるドロップの音がやめられません。
錬金釜を一周したら、もう一周です!
リズムとテンポが大事ですね!
体もだいぶ目を覚ましてきましたよ!
「ていてーい! 『錬金』! やー!」
そうして20分が経過。
そろそろ朝のマラソンを終えます。いい汗かきました。
ささっと後片付けをしながらドロップした〈魔石(極小)〉の数を数えます。
今日は1488個でした。
むふー。良い感じのドロップです。だいぶ早くなってきましたね。
「あっといけないいけない。準備しなくっちゃ」
朝の私には大切な役目があるんです。
軽くシャワーを浴びて制服に着替えると、朝食の準備をします。
昨日作っておいたハンバーグを〈空間収納鞄〉から取り出し、丸パンに切れ目を入れて中にマーガリンを塗ったら、レタスとハンバーグを挟んでケチャップをベースにしたソースを掛けて完成です。
お手軽ハンバーガーですね。ハンバーグはできたてを〈空間収納鞄〉に入れていたのでまだ熱いままです。
これとは別に3種類のサンドを作って少しだけ温め、また〈空間収納鞄〉に入れて、身だしなみを整えたら自分が住んでいる寮の部屋を出ます。
目指すは、お貴族様などが利用する寮の一つ、貴族舎です。
私が住んでいるのは普通の女子寮ですが、これから向かうのはお貴族様専用の寮ですね。
もう設備から調度品、セキュリティまで何もかもが違います。
あ、セキュリティに関しては女子寮も負けてはいませんね。
そんなところに一般人の私が何をしに行くかというと、実はここにゼフィルス君が住んでいるのです。
私はゼフィルス君に会いに来たのです。
実はゼフィルス君、私と同じ村出身にも関わらず伝説の職業【勇者】を発現したせいで入学式の時は大変だったのです。あの時行なわれたギルド勧誘合戦が原因でセキュリティの充実した貴族舎に引っ越しをしました。
おかげで、女子に制限がある男子寮に会いに行くよりも気軽に会いに行くことが出来るようになったので、私的には嬉しいことです。
貴族舎に入ったところでここの寮母さんと会いました。
「あ、寮母さん。おはようございます」
「あらハンナちゃん、今日も勇者君のところ?」
「はい!」
「ふふふ、頑張ってね~」
私は寮母さんに頼んでゼフィルス君のところを訪ねるときのみ貴族舎に入っても良いと許可をいただいています。
寮母さんにまたゼフィルス君のところに行くことを告げ、何か微笑ましいものを見るような視線に見送られて目的の部屋へと向かいます。
もう何度も見られた光景なので、最初は少し恥ずかしかったですけど慣れてしまいました。今では堂々と胸を張れるほどです。
部屋の前に着きました。
軽く手鏡で身だしなみをチェックして、ドアをノックします。
少しするとゼフィルス君が出迎えてくれました。
「ハンナ~、今日もおはよう~」
「おはようゼフィルス君。お邪魔するね~」
「いらっしゃーい」
私は大体平日の朝はゼフィルス君のところで一緒に朝食を取ります。
〈空間収納鞄〉からさっき作ったハンバーガーと他3品のサンドを出します。
できたてをバッグに入れたので、まだホカホカですよ。
「おお! 今日もすげぇ美味そう! いっただきまーす!」
ゼフィルス君はいつも美味しそうに食べてくれます。
これは私だけの特権で、ご褒美ですね。ギルドのみんなにも内緒です。
ほっこりします。
この瞬間、このゼフィルス君の表情があれば、私はみんなと別れての授業も頑張れます。
私も一緒に朝食を済ませると、学園に行く準備をします。
朝使うような生活用品は少しこっちにも持ち込んでいるので仕度に困ることはありません。
歯ブラシだって置いてあるんです。
でもゼフィルス君、欲を言えばこれを置きっぱなしにしている意味にもう少し気づいてほしいような、でもやっぱりまだ怖いような……。
うん。もう少し胃を捕まえてから、ですね。
まだ、その時では無いような気がします。
別に日和っているわけではありませんよ?
「じゃあ行くか」
「うん。鍵締めは任せてね」
「いつも悪いな」
一緒に出るとき鍵を閉めるのは私の仕事、これは譲れません。
鍵を閉めるのを側で待っていてくれたゼフィルス君と共に、貴族舎を出て、登校します。
これが私の日常、朝の1ページです。
少々仕事忙しで、今後は更新が午後になると思います。
なるべく18時までには投稿する予定です。
よろしくお願いします。




