#154 学園祭で仮装中! 私はハンナじゃありません!
ハンナ様\(^-^)/ばんざーい!
あのびっくりパレードが終わっても私の噂が収まることはありませんでした。
「さすがはハンナ様だ」
「ああ。学園どころか王族から頼りにされているなんてな」
「聞いたぜ、今貴族の方が必死にハンナ様のことを聞いて回ってるんだって、貴族自ら」
「何それやべぇ」
「ハンナ様がやべぇのは前からだぜ。俺たちはただ祝えば良い」
「ハンナ様にかんぱーい!」
「「「「わははははは」」」」
「学園の未来は明るいな~」
「そうか~もう少しで〈生徒会〉の選挙だもんな~」
私の名前がそこら中から聞こえる気がします。
気のせいではありませんよね?
そして今の私はとある仮面を被っていました。
「良い感じですわハンナさん。可愛くってよ」
「あ、ありがとうございますアルストリアさん」
そう、仮装です。
今は学園祭の真っ最中。
仮装なんてそこら中で見かけますので違和感はありません。
私に合わせ、アルストリアさんとシレイアさん、そしてミーア先輩も仮装していました。
テーマは不思議の国に迷い込んでしまった動物たち、だそうです。
仮面はそれぞれ動物の絵が描かれていて、私はピンク色の兎さんでした。
アルストリアさんが白い猫さん。シレイアさんがグレーの犬さん。ミーア先輩は可愛くデフォルメされた子グマさんです。
そして服も可愛らしい装備に変更しています。
ここの学生服に似ていますが、別物の学生服、という感じでしょうか?
どうも学園祭なので学生服をモチーフにしているみたいですね。
可愛い服です。
髪型も変えて、髪色も一時的に変えてしまうアイテムを使い、青系の髪をポニーテールにして纏めました。
アルストリアさんは三つ編み。シレイアさんはツインテール。ミーア先輩はおさげと、それぞれ髪型を変えています。これだけしているのですから私だってすぐには分からないでしょう。
ですが懸念がありました。
パレードの後は次のパレードまで学園を練り歩きながら所々で生徒会選挙運動をしようと考えていましたが、それが潰れてしまったのです。
「あの、ミーア先輩。ごめんなさい」
「もう、なんでハンナちゃんが謝るの?」
「だって、せっかくのアピールチャンスを潰してしまって」
「そんなの構わないに決まってるでしょ? それにパレードでアピール出来たんだから十分よ」
「でも、無理に付き合わなくても大丈夫です――あうっ」
「こーら」
怒られてしまいました。ちっちゃな拳をコツンと頭に当てられます。
「それ以上は言いっこなしよ。それに私が協力を頼んだんだし、迷惑になるからやっぱりやめてなんて言ったら私がすっごい悪者みたいじゃない。ハンナちゃんは私の大事な友達なんだから、そんなこと絶対言わないわよ」
「ミーア先輩」
少しウルッときました。
私はちょっと失礼なことを言ってしまったのかもしれません。
でもそれを謝るのもなんだか違う気がしたので私は何度も頷いて返しました。
「それにね、アレ見てみて」
「「「?」」」
ミーア先輩が指を向けた方向を3人で見ると、そこではベルウィン先輩が生徒会選挙運動をしていました。
ですが、人は集まっていません。
むしろ急ぎ足でどこかへ向かったり、他の人たちと話をしたりと誰もベルウィン先輩に見向きもしていなかったのです。
チラシ配りもしているようですが、うっとうしそうな顔をされていることもありました。
「あれを見ちゃうと生徒会選挙運動をしようなんて思わないわよね」
「確かに。なるほどですわ、今回の学園祭はかなり勝手が違うのですわね。むしろ顰蹙を買っているように見えますわ。空気が読めていませんわね」
「多分だけど、さっきの王太子殿下の演説が効いているのよ」
今回の学園祭は例年に比べ、規模も集客数も段違いらしいです。
お祭り一色という感じです。
そして先ほどのユーリ先輩の演説でさらにヒートアップしています。
そんな中、生徒会選挙運動の演説やらなにやらなんて聞きたくないのだとミーア先輩とアルストリアさんは分析しています。
「ハンナちゃんのおかげで顰蹙を買わなくて済んだわ。むしろ私がお礼を言いたいくらいよ。あはは」
むしろお礼を言われてしまいました。
こういう時どう返せば良いんでしょう?
その時です、ずっとここに留まってベルウィン先輩を指さしたりしていたからか、ベルウィン先輩やお付きの人たちが声を掛けてきたのです。
「ねえ君たち、僕は〈生徒会〉副隊長のベルウィンというんだ。僕は次の〈生徒会〉に立候補しているのだけど、良かったら僕ベルウィンに投票してもらえないかな」
どうやら私たちが誰か分からず話しかけてきたみたいです。
変装していますからね私たち。
あ、ミーア先輩が笑いを堪えています。
「? どうかしたのかい?」
私たちの困惑が伝わったのか、ベルウィン先輩が首を傾げていました。
あ、ミーア先輩が復活して前に出ました。
私たちは見守ることにします。
「ふーん、生徒会選挙運動してるんだ」
「ええ。僕が〈生徒会〉生産隊長になった暁には学園と交渉し、生産職にも多くの上級職をもたらすと約束しましょう」
ベルウィン先輩が自信満々に言っていますが、あの、それって本当に可能なんでしょうか?
ゼフィルス君たちがすでに色々計画的に動いている気がしますので、横から口を挟むのは良くない気がするのですが。
そう思っても口には出しません。ミーア先輩に任せるって決めましたから。
「へ~。それはすごいね。でもね、今ここで生徒会選挙運動するのはやめた方がいいと思うよ。みんなは迷惑と思っているみたいだしね」
「……な、なぜっ!? ―――っ!!」
あ、ミーア先輩がストレートに言いました!
さすがのベルウィン先輩も誰も演説を聴いてくれないこの状況に違和感があったのでしょう、ミーア先輩の言葉を理解したところで想像以上に大きな声を上げてしまい回りからいろんな目で見られていました。
「ま、それに答えてあげるほど私は優しくないんだよ。じゃ、私たちはもう行くね~」
み、ミーア先輩、火に油だけ注いで退散するみたいです!
私たちの背中を押して急かしてくるので、私たちは移動することにしました。
「ま、待ってくれ!」
ベルウィン先輩が声を掛けてきますが、ミーア先輩はそれに振り返らず、そのまま退散したのでした。
最後にチラッと見たベルウィン先輩はキョロキョロと辺りを見回して焦りの表情を浮かべていました。




