#152 パレード開始! たくさんの人にアピールです!
とうとう私たちの車両が車庫の中から出ました。
瞬間いろんな音楽が聞こえて来ました。パレードの行進曲です。
そしてその音楽をかき消すように、私たちを見て歓声が聞こえてきました。
「おお! 今度は〈生徒会〉の車両だぞ!」
「あれ? 〈生徒会〉の車両はさっきも無かったか?」
「あっちはベル……ベル……ベルなんとか副隊長の車両だろ? こっちはハンナ様の車両だ」
「ハンナ様ハンナ様!」
「パンフレットにはミリアス会計の馬車と書かれているんだがそれは?」
「ハンナ様――!!」
あ、あれ? おかしいです。なぜか私を見る人たちが大勢居ます。
車両の上にいるミーア先輩を見てください。私は車両の横を歩いているただのサポートですよ!?
「さすがはハンナさんですわ。すごい人気ですわね」
「むむむー! 分かっていたけどハンナちゃんの人気がすごい。負けてらんないわね」
パレードを見てくださる観客さんに聞こえないよう小声で会話する私たちです。
ちなみにシレイアさんは横でガッチガチに緊張して右手と右足を同時にだしながら歩いています。そういえばシレイアさんってあがり症でした。忘れていました。これだけ注目の多い状況、シレイアさんには厳しかったようです。
ですがまずは私よりミーア先輩に注目を集めさせないとです。
「ミーア先輩、振り付け通りにお願いしますよ」
「分かってるわ」
私がミーア先輩に言うと、ミーア先輩が踊り出します。
クルクル回るあのダンスではなく、スカートの裾を持ってその場でリズムに乗るように体を動かすだけのシンプルなものです。
スカートを持った右手を前に出し、次に交代で左手を前に出す。
正式名称は分かりませんが、服をアピールするための軽い躍りですね。
「おお、あのドレス可愛いな」
「わぁ綺麗~」
「私もあれを着て踊りたいわ~」
「なになに? Cランクギルド〈ワッペンシールステッカー〉製作?」
「ほう?」
踊り始めるとミーア先輩に視線を集めることに成功します。
ミーア先輩が着ているのは〈ワッペンシールステッカー〉で製作したキラッキラのドレスです。学園祭開始のファーストインパクトがとても大事とのことで、最初から大手ギルドが製作したドレスを身に纏ってもらっていました。ミーア先輩も最後は諦めたのか自分から進んで着るようになっていましたよ。
それでサポートの私たちはそれがどこで製作したものなのかをアピールする役目です。
私とアルストリアさんでプラカードを持ちながら車両の両側を歩いてお客さんに見せます。プラカードには〈ワッペンシールステッカー〉作品、〈大海原の月ドレス〉と書かれていました。
シレイアさんは〈ワッペンシールステッカー〉のギルドエンブレムの旗を掲げていますね。
しばらく進むと十分と判断し、次のギルドの作品をアピールします。
青のドレスを着たミーア先輩が今度は大きなフラスコビンを両手で一つずつ持ってアピールしています。
あれはポーションです。
普通ポーション系というのは手のひらで握れるくらい小さなビンなのですが、それだと目立たないのでああして大きいフラスコを持ってアピールしているわけですね。
私たちも少し説明が書かれたプラカードを持ってアピールします。
〈ワッペンシールステッカー〉の時はプラカードに書かれていたのはギルド名と作品名だけだったのですが、これは元々各ギルドに何を書くか任せていて、私たちはそれを掲げているだけなので何が書かれていても自由な感じです。その代わり私たちは責任持ちません。
細かい説明を書いても、そもそも遠くて細かい文字とか読めないんじゃないかな? プラカード動くし。
続いてはとある金属武器を扱う生産ギルドの品。
剣や槍などをミーア先輩が持ってアピールして行きます。
とはいえミーア先輩は生産職。料理人なのでSTRは育成していますし、金属装備も短剣などは装備出来ますが、さすがに剣と槍には適性が無く、振り回したりなんかは危なくて出来ません。
なのでこれも持ってアピールするだけですね。
私たちもさっきより細かな字でびっしり書かれたプラカードを掲げます。
でもこれ、字が細かすぎてどこのギルドが手がけた作品なのかすら分からないんじゃ? と思いましたが私たちが口を出す問題ではありませんでしたね。
私たちはプラカードを掲げるだけです。シレイアさんがギルドエンブレムを掲げていますから大丈夫でしょう。多分。
パレードは無事に進行。今回12のギルドの作品を紹介させていただきました。
かなり注目してくれた手応えがありました。
こういった様々な生産品のお披露目などはあまりやられたことは無かったようで、それなりの注目を集めたようです。
私たちの作戦は結構成功したんじゃないかと思います。
私もなぜか注目されていましたが、ミーア先輩の名前も車両にデカデカと書かれているので覚えてもらえたかと思います。
逆にベルウィン副隊長はそういうことをしていなかったのか、名前は覚えてもらえていなかったり、間違って覚えている人の声も聞こえてきたくらいです。
「いいことね~。きっとあいつ、自分は上級ダンジョン攻略組に入れているから名前なんて売らなくてもみんな分かっているんだ、とか自惚れているに違いないんだから」
ミーア先輩は相変わらずベルウィン副隊長に塩な対応です。
こうして私たちはお昼近くまで学園中を歩き、最後にこの都市の中心地、〈ダンジョン公爵城〉の前に到着した時でした。
この学園に大きな影響を与える事が発表されたのです。




