#150 学園祭初日! ミーア先輩に元気を補給します!
「ハッピー学園フェスティバール!!」
「い、イエーイゼフィルス君!」
学園祭初日である今日も私は変わらずゼフィルス君の部屋へ朝食を持って行ったのですが、そこでやたらテンションの高いゼフィルス君に出迎えられました。
「ハンナ、タッチタッチ!」
「はいはい、ハイタッチね」
両手でタッチタッチ。二回タッチしました。
私もいつものゼフィルス君で慣れているのですぐに落ち着いてハイタッチを交します。
もう、ゼフィルス君ったら子どもみたいです。
「それで、今日の朝ごはんはどうする? いつもと同じ? 軽くする?」
「軽めでいこうか! フェスが始まれば色々とおいしいものが売り出されるはずだ!」
「楽しみだね!」
「おう!」
学園祭はいろんな出店なんかも出るのでそっちも食べたいですからね。
ここでがっつり食べるのは悪手です。
ヘルシーに軽めでいきましょう。
私は〈空間収納鞄〉で保存している朝食のうち、フレンチトーストを取り出しました。これはゼフィルス君の分です。
私はサラダセット。軽くドレッシングを掛けて完成です。
今日の朝食はこれだけです。後は出店で食べようと思います。
ふんわり蕩けそうな表情のゼフィルス君を見て、私は今日も満足したのでした。
その後はお別れです。
それぞれ別にやるべきことがありますから。
ゼフィルス君たち〈戦闘課1組〉は学園祭の警邏の仕事をするみたいです。
どうも駐在する兵士の方や〈秩序風紀委員会〉のメンバーだけでは人手が足らず、学生が500人以上も臨時で手伝うことになったみたいです。
何かあった時のため実力の高いクラスばかりが選ばれたみたいですね。
ゼフィルス君たち、頑張ってください。
私はもちろん〈生徒会〉へ向かいます。
〈錬金術課〉は作品の展示なので人手は要りません。
私たちも〈生徒会〉の仕事に専念できます。
「おはようございます。ミーア先輩、今日は頑張りましょう」
「ありがとうハンナちゃん。うん、私頑張る。超頑張るよ~」
「わっぷ!?」
〈生徒会〉に着いてミーア先輩に朝の挨拶へ行ったら抱きつかれました。
「は~、癒し! ハンナちゃんは癒しだな~もう」
「もうミーア先輩、ちょ、ちょっと苦しいです」
ミーア先輩の全力ハグです。これは色々不安とか溜まっているみたいですね。
仕方ないのでしばらく私の身体を好きにさせてあげました。
と言っても1分くらいでアルストリアさんとシレイアさんも来たので、そこで終了しました。
「ああ~ハンナちゃん成分の補給がまだ終わってないのに~」
「何を言っているんですのミーア先輩は」
「緊張してます?」
「ああ~アーちゃん、シレイアちゃーん!」
「「きゃあ!?」」
「ああ、今度は2人いっぺんに行きましたね」
今度は横並びになっていたアルストリアさんとシレイアさんに抱きつき、2人いっぺんに味わい始めたミーア先輩。贅沢です。
ですが、ミーア先輩は今日から3日間、学園祭期間中はとても忙しいと思うのでサービスしてあげました。
「あ~、ずっとこうしていたい~」
「ほら、下級生に抱きついてないでしっかりなさい」
そこに登場したのがチエ先輩です。
だらけモードに入りかけていたミーア先輩の首根っこを掴まえるとそのまま2人からミーア先輩を引き離しました。
「殺生! 殺生だよチエちゃん!」
「チエちゃんではありません。先輩を付けなさい」
いつものやり取りに少しだけホッとしました。
あまり時間にも余裕は無いので準備を進めたいと思います。
「ローダ先輩やフラーラ先輩はもう現場ですか?」
「そうですね。ムファサ隊長やベルウィン副隊長も今日はやるべきことが多いですから」
どうやら今日ここにいるのはチエ先輩だけみたいです。
役職のある方々はみんな別の仕事があるみたいです。
それからチエ先輩は改めてミーア先輩に向きなおりました。
「ミーア、応援してるから頑張りなさい」
「うっ。分かった。分かってる。ハンナちゃんたちにもたくさん手伝ってもらってるから。私も今日は精一杯頑張る」
「その意気よ」
チエ先輩の励ましでした。
ミーア先輩は照れくさそうに頬をかいています。目をあわせられないみたいでちょっと可愛いです。アルストリアさんとシレイアさんとその様子を密かに見守りました。
「じゃ、行ってきなさい」
「「「「行ってきまーす」」」」
チエ先輩の激励を受けて〈生徒会〉を出た私たちが向かったのは、車庫と呼ばれるとある巨大な建物の中でした。そこには、
「ふわー。これ全部車両なのですか?」
「すごい、大きいです!」
「ここまでの規模だと圧倒されますわね」
「今年は特に多いかもしれないね」
シレイアさんと私が田舎者丸出しで驚き、アルストリアさんは感動したように目を輝かせ、ミーア先輩は緊張を滲ませた表情をしていました。
そこにはパレードで使われる車両が大量に並んでいたのです。
とってもカラフルで様々な車両があって、それにたくさんの人がいます。
みんなパレードの関係者ですね。
「私たちの車両はこっちね」
「えっと、39番、39番、あ、あれでしょうか?」
「す、すっごいです!?」
「これが完成品ですの……」
ミーア先輩の指す方向に向かい、探していると、私たちの車両を見つけました。
ミーア先輩が色々と生産ギルドの生産品を見せるための車両です。
少し前にCランクギルド〈彫金ノ技工士〉という生産ギルドに作製をお願いしていたのでこれも作品です。
見た目は大きな、それはそれは大きな馬車。中級のモンスターが引く馬車で、私たちのギルド〈エデン〉が持つレシピ〈からくり馬車〉をベースにして作られています。なお、これは装備ではなく普通のモニュメントですね。
様々なギルドの作品を飾るスペースがあり、見栄え重視で考えられたその馬車は一種のモニュメントみたいです。どうやら三日月をイメージして作られているのだと分かります。
ミーア先輩はこの馬車の屋根に乗り、衣装を着てダンスを踊ったり、生産ギルドの作った作品を見せたりしてアピールします。
私たちはアシスタントとして馬車の近くを同じく衣装を着て歩く予定です。
パレードが始まるまで、後2時間くらい。
これから最後の飾り付けを行ないます。
「みんな、飾り付けがんばろう!」
「「「おおー!」」」




